アイン Ain
生命の樹というものがある。
旧約聖書では楽園の中央に知恵の樹とともに植えられていたとされ、カバラにおける宇宙と人体を象徴する思想。
生命の樹は、10の球体と22の経で示される、クリスチャン・カバラで最も重点を置かれる象徴。その中で最も上には王冠を意味するケテルの球体が描かれる。
その更に上には全ての根源であるアインが存在する。
アインは「無」と示されることが多いが、それは人の言葉で表せるものでも概念で理解できるものでもない。すなわち神そのものを意味するとも言われている。
そのアインがケテルに近付くにつれ、人に理解しやすい存在となっていく。
アインのすぐ外側に、アイン・ソフ。その更に外側には最も、人の知性で捕らえやすい、アイン・ソフ・オウルがある。
生命の樹を登る人が、ケテルを越えアインに近付こうとした時に、最初に触れるのがそれだろう。
ある女は、それのことを「神の片鱗」と呼んだ。
触れれば全てのものが自然と一体になる超常能力、ウィッチクラフトに目覚めると言った。
無垢な彼女は信じた。
全てのものが神の力に目覚めることが本来あるべき姿なのだと。自然と一体になりアインに帰ることこそが本来の姿なのだと。
その思想が何を生み出すのかを考えず、ただ理想だけを追い求めていた。
そして、全ては彼女から始まった。