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colorS  作者: オレンジタイフーン


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#10

「#10」


港区にある都内が一望出来る超高層ビル『ラブ・リーフタワー』の最上階にある会長室…


そこには鬼気迫る顔付きで向かい合う親子がいた。


誠太郎は誠一郎に怪訝な表情で投げかけた。


「青山から良くない噂を聞いた…

誠二に唆されて、ちょっとお遊びが過ぎたらしいな。」


誠一郎は、その言葉を掻き消すような口調で、すぐさまに返した。


「遊びなどではありません!」


誠太郎は狼狽える。


「嘘だよな、父さんにも…そんな時期はあった…あったぞ。

男なら一度は通る道だ、馬鹿みたいな事を言うのはよせ…

お前は、この愛澤の長男で後継なのだぞ…」



誠一郎は意思の強さを感じとれるはっきりとしてはいるが、何処か穏やかやささえ感じさせる声で切り出した。


「その…まずは謝罪と頼み事があります。」


「何を…だ…何の話だ…」


「まずは父さんにも大変なご迷惑をおかけしました事、誠に申し訳ありません…そして何よりも稲村会長や雪乃さんには何と罵られようとも誠心誠意の謝罪以外に私に出来る事などありません…

父さん、私を愛澤の戸籍から外して下さい。」


誠太郎は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で返した。


「馬鹿も休み休み言え、その風俗嬢の戸籍に入るのか?

雪乃さんは…どうなる…可哀想だとは思わんのか…確かに少しばかり歳は離れているかもしれないが申し分の無い大和撫子を絵に描いたようなお嬢様だぞ。」


誠一郎は怯まない。


「オゾングループの件については申し訳ありません。」


誠太郎は激怒した。


「そんなレベルで済む話と思うのか、オゾングループは日本のインフラだ、我が愛澤グループもだ、雪乃さんの父親の勲男(いさお)さんは、もうじき総理大臣だ、今は大事な総裁選の真っ只中だ、こんなスキャンダル…マスコミが逃すものか、大喜びさせるだけだぞ。」


誠一郎は怯まない。


「どのような言葉でも償えない事は承知の上で此処へ来ました。」


その言葉が言い終わる前に誠太郎の平手が空を切る。


パンッ!と乾いた音が誠一郎の右の頬から鳴った。


誠一郎は怯まない。


「どうぞ、気の済むまで打って下さい。」


即座に左頬がパンッ!と揺れた。


「ふざけるな‼︎」


次は、また右頬がパンッ!と鳴る。


「気は確かか‼︎」


何度も何度も往復する平手打ち。


その度に誠太郎の心は酷く痛む。


誠一郎は怯まない。


両頬は赤く腫れ上がり、鼻からは血が流れていた、それでも誠一郎は怯まない。


瞬きひとつせずに、それをじっと耐えていた。


誠一郎の瞳に宿る光は誠太郎が今までに見た事の無い程、希望に満ち溢れた輝かしい光を放っていた。


喪失感とでも呼ぶべき感情が誠太郎を激しく襲う。


「あぁ、何があろうとも私の大切な息子だ、これ以上は…これ以上は…出来ない、出来ないぞ…誠一郎よ。」


平手打ちしていた両拳を情け無く握りしめる事しか出来ない誠太郎。


誠一郎は怯まない。


「妻の弟を助ける為に1億円かかります、その援助をお願い出来ないでしょうか?」


誠太郎は次から次へと飛び出す言葉について行くのが、やっとと言う表情だった。


「次は金の無心か、少し頭を冷やす時間が必要か…わかった、それくらいなのか、言いたい事は済んだのか?」


誠一郎は土下座していた、額が擦り切れるくらいの誠心誠意の謝罪であった。


誠太郎は誠一郎に近付いて肩を抱いて引き寄せた。


「もう良い、もう良い、私はいつか必ず戻って来ると信じている、それまでは…」


誠一郎の覚悟を決めた態度に気押された誠太郎。


その夜は、ちょうど新月であった。


誠一郎の新たな旅立ちの日の夜であった。








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