カエデの要
病室に入ってきた看護師からリハビリの案内をさ病室れて、無事終えた。今は昼食をとって、自分の病室に戻ってきたところだ。
久々に体を動かしたから攣りまくった。明日には筋肉痛が私の体を襲ってくると考えるととても恐ろしい。
でも、俯瞰して自分を眺めてみると体の反応が面白くも感じる。私自身でなく、他人ならなお興味深いと思うのだが。
「疲れたぁ……」
ベッドに寝転び、右手の人差し指を見た。包帯が巻かれている。
私は要を胸の中から取り出し、見開く。
――今度こそ邪魔が入らないよね。
しかし、邪魔は入った。またもノック音に邪魔された。私は起き上がり、答える。
「はいはーい…どうぞ」
扉が開かれるとそこにはカナデの姿があった。
「失礼します。昨日ぶりですね」
「カナデさん!?」
――連絡先を渡されたから、まさか今日会うとは。
昨日とは違い警備服である。刀があるし、かっこいい。クールな雰囲気がさらに増した感じだ。
カナデは肩まである黒髪をかきあげながら椅子に座り、マデイラシトリンみたいな色の瞳を向ける。
「リハビリの調子はどうですか?」
「ん……のびのびですかね」
「そうですか。それなら良かったです」
彼女は持っていたビニール袋から花とりんごを取り出す。
「今日はお見舞いに来たわけではなく……お話をしに来たんです」
りんごを剥きながら言っているのだから全然説得力がない。
「お話ですか?」
「昨日考えたんです。トキさんでも手伝える方法を。それで思いついたのが」
「思いついたのが…?」
「トキさんが夢を見た日は夢遊空間で合流して一緒に探索する」
――うん。それなら私も参加できそう。
「賛成です! ただ、私が夢を見たかどうかなんて分かるんですか?」
「そこは私の…新しいパートナーに見張ってもらいます」
「そうですか! だったら作戦を実行できそうですね!」
微笑む私にカナデがウサギの形をしたりんごを渡してくれる。
「ありがとうございます」
りんごを頬張り、彼女の顔色を伺うと何処か緊張しているような迷っているような表情をしていた。
私はりんごを飲み込んでから尋ねた。
「どうしましたか?」
「その……他にも用事があるんです。実は今日はトキさんにカエデの要を見せに来たんです」
「カエデさん…? それってカナデさんのパートナーの?」
彼女は頷き、鞄から要を取り出した。そして、視線を要に向けた。
「これはカエデのお母様から譲り受けました。カエデは貴方の夢を守りきれなかった。だからその責任としてトキさんに見せたくて」
人の要を見れる機会なんてそうそうない。私は自分の要と何が違うのか見比べてみたいと思っていた。だから断る理由なんてない。
「ぜひ見せてください」
私は要に手を伸ばし、受け取ろうとした。が、力が強すぎて、受け取れない。
「ごめんなさい。少し迷っていて」
そう言うとカナデは力を緩め、私に手渡してくれた。
ページをめくる。
私のとは段違いに空白のページが少ない。
――えっと、死因は……
「ハンマーによる他殺…」
酷い殺され方だ。思わず口を塞いでしまう。
「そうです。昨日遺体を見ましたが、酷い有様でした。本当に許せません」
カナデは唇を噛み、血を流す。
「あの……この要、少しの間だけ預かってもいいですか?」
「……何故?」
「この要を……カエデさんの事をしっかり知りたくて」
「分かりました。少しの間、お貸しします。丁重に扱ってくださいね?」
「はい! 分かりました!」
彼女は椅子から立ち上がる。
「では、私は行きますね」
「仕事にですか?」
服装から推測しただけだけど。
「はい」
そう言い残し、カナデは出て行った。
私は自然と口角が上がる。
――やっと確かめられる。それに自分に実験しなくて済む。
指の包帯を解き、『カエデ』の要を手に取る。
「えーと……何書こうかな…」
最期が書かれているページを開き、私は考える。
「……そうだ!」
『火葬炉で焼かれたが無傷だった。なぜなら、その日の火葬炉の炎は生き返せる効果があったから。私は意味が分からず、困惑したが、とりあえず火葬炉から出た』
「これでよし」
――さーて効果が出るかな…?
私は再び寝転ぶ。すると気持ちが冷めてきた。
――はあ…何やってるんだろ私。カナデさんに怒られちゃうじゃん。




