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アトラシア戦記~あるファイターの手記より~  作者: チャラン
第2章 エルディア奪還
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第7話 中央盆地の死闘

 アトラシア軍は、回り込んで平地を進むナイト以外、山越えを敢行するため全兵種が現在南進している。山岳地帯を越えるとエルディア中央盆地にたどり着くが、その地域にある空城と、周辺の町の支配権を賭け、キングの軍とルシファーの魔軍は間違いなく激戦を繰り広げることになる。


 中央盆地において、両軍の鉢合わせが予想されるわけだが、幸いなことに、地理条件は南進するアトラシア軍側にとって、幾らか有利なものとなっている。その有利点は端的に言えば、距離的なものだ。


 キングは軍と共にエルディアの地へ入るとすぐ、放棄された小城を占領し、第一拠点を構築した。その第一拠点を出て、キングは全部隊と同様、南進中なのであるが、戦略上非常に重要なエルディア中央盆地までは、ルシファーの居城からより、アトラシア軍が占領した小城からの方が明らかに近い。


「ここまでは、ひとっ飛びだったね。予想通り、まだルシファーの軍は来てないみたいだけど、油断は全然できないね。邪悪な気配がするよ」


 仲間のハーピー部隊と共に飛来したシェリーが、周りにそう話しかけ注意を促しているように、山越えを翼でショートカットできる飛兵にとって、小城からこの中央盆地までは、目と鼻の先くらいの距離と言ってよい。偵察経験を重ねたことにより得た鋭敏な知覚で、シェリーは盆地に飛来するなり、魔軍の邪悪な気配を感じ取っているものの、まだ若干の時間的猶予はあるようだ。


 その貴重な時間を利用し、シェリーは第二拠点構築を成功させるため、所属のハーピー部隊と連携して動いている。白い翼の飛兵たちは、偵察任務を続行すると同時に、山岳地帯を越えて来た、比較的足の早いゴブリンとエルフ部隊を誘導し、小型妖精族部隊による防衛線を、できるだけ迅速に張った。




 シェリーが嗅ぎ取った邪悪な気配通り、防衛線構築後、程なくして、ルシファー軍のダークハーピー部隊が来襲した。前線に展開中のゴブリン部隊に目をつけ、ダークハーピーたちは上空から鋭い槍を構え、突貫してくる! 兵種の相性からすると、先制を受ければゴブリン部隊の大損害は不可避だが、


「そうはさせん! 一斉発射!」


 側にいたエルフ部隊が隊長クロードの号令により弓を引き絞り、無数の矢を一斉に射ち放つ! 不意を突かれたダークハーピー部隊は正確に急所を射抜かれ、命の抜け殻となった屍を、次々と野に晒し始めた。


 アトラシア軍の小型妖精族部隊が、三すくみとなっている兵種の攻撃相性を用いつつ、最前線で防衛戦を展開し、時間を稼いでいると、キングとサイラス所属のファイター部隊が山を越え、エルディア中央盆地に到着した。


「ようやく山岳地帯を越えたか。ここからが本格的な仕事だな」


 サイラスは最寄りの部隊と情報共有し、最前線の戦況を把握すると、山越え後の一息も入れることなく、仲間のファイター部隊と連携して、周辺の町の開放と占領を次々と行っていく。同じく無事に山を越えた、キングと親衛隊で構成される部隊は、中央盆地の空城へいち早く入城し、補給線を繋げることで第二拠点の構築に成功した。


 アトラシア軍は、先にエルディア中央盆地の支配権を獲得し、第一段階の戦略目標を達成したのだ。


 しかしながら、第一戦略目標を達成し、戦う形が整ってきたとはいえ、ここまででかなりの時間が経過した。こちらが構築する防衛線の突破を何度も試み、第二拠点の城に入ったキングを討ち取ろうとする、ルシファー軍の攻撃は、次第に苛烈化している。


「このままでは防衛線の維持が危うい。いつまで保つか……」


 最前線で必死にエルフ部隊を指揮し、ルシファー軍の波状攻撃を持ちこたえているクロードが、そう呟いたその時!


「すまない、遅れた! ここからは私たちが何とかしよう!」


 颯爽と現れたリサ所属のナイト部隊が、ルシファー軍の小型妖精族部隊に騎馬突撃をかけた! それとほぼ同時に、山岳地帯をようやく越えて来たジャイアント部隊がのそりと前線に現れ、巨体の剛腕から大棍棒を振り下ろし、敵軍を蹴散らしている!


 頼もしい新戦力の登場により戦況は好転し、アトラシア軍の南下作戦は、徐々に功を結び始めた。


 (いくさ)はアトラシア軍の優勢に傾きつつある。だが、エルディア南端に居座るルシファー打倒まで、全く予断は許されない。

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