表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アトラシア戦記~あるファイターの手記より~  作者: チャラン
第2章 エルディア奪還
6/17

第6話 女騎士リサ

 そうして一通りの(いくさ)支度が整った翌日。補給物資を持ってサイラスが城外の広場を歩いていたところ、軽装ながら、その身を包む鎧姿が艶やかに映えるほど、整った容姿を持つ緑髪の女性と出会い、目が合った。サイラスは、ある意味鎧とミスマッチですらある、緑髪ロングヘアをなびかせるスレンダーな女性の優美さに、思わず目を奪われている。緑髪の女性は、そんなサイラスの様子を見て微笑みながら、


「あなたはファイター部隊に所属されている方ですね。私は新規にアトラシア軍へ参入した、ナイト部隊のリサと言います。よろしくお願いします」


 当たりの良い人柄が感じ取られる丁寧な挨拶と共に、まず自己紹介をした。リサの気さくで友好的な言葉遣いを聞いたサイラスは、初対面の緊張が幾分取れたらしく、


「ああ、ナイト部隊が新たに加わったと聞いていましたが、あなたがそうでしたか。俺はサイラスと言います。おっしゃる通り、所属はファイター部隊です。これからよろしくお願いします」


 このようにできるだけ丁寧な態度で、所属と名前を答えている。


 小城の広場というものは、2人の男女の出会いの場としては、やや無骨な場所かもしれない。しかしながら、武の心得が十分なサイラスとリサにとって、ここは大変似つかわしい所であり、明日から臨む戦いの中で、どう連携して動いていくか、そうした戦術談義に両人は花を咲かせていた。


「私は見ての通り騎兵だ。山や森には足を取られるが、平地なら馬で駆けつけられる。頼りにしてもらいたい」


 リサは話が砕けてくると、次第に男勝りな言葉遣いに変わっていき、サイラスはその変化を楽しみながら、会話を進めていた。言葉をかわす中で時折見せるリサの可憐な笑顔は、サイラスに好感を与えており、リサの方も、正直に考えたことを話すサイラスの態度に、とても良い印象を受けていた。


 このように2人の相性は良さそうだが、話が弾むにつれ、段々と親密になってきている戦士と女騎士の様子を、


「なんであんなに楽しそうなのよ……。あの女なんなのよ!」


 ブツブツと小声でそうつぶやきながら物陰に隠れ、面白くない顔で見ている女の子ハーピーがいた。


 堂々と出ていき、2人の会話に加わっても一向に構わないのだが、嫉妬心に駆られた今のシェリーには、それができないようだ。




 新規兵との新たな出会いがあった翌日の早朝。小城での簡素な結団式後、エレンディア奪還の使命を帯びたアトラシア軍は、士気衝天の高まりをもって全部隊出陣した。それぞれ部隊の特性や個性は違うが、思いは一つだ。


 失地後、時間が経っており、多少、土地や構造物の変化があるとはいえ、ルシファーが逃げ込んだエルディアの地も、元々はアトラシアの国土である。それゆえ、中央の山岳地帯を越えたあたりの盆地に町が栄えており、その地域には空城が一つあることが、地理情報として事前につかめている。戦略的に重要な地域に住み、ルシファーの支配に怯える盆地の民たちは、キングの帰還を待ち望んでいるはずだ。


 こうした戦略情報を総合的に勘案すると、一刻も早く山岳地帯を越え、第二拠点と防衛線を構築しなければならないという結論に至る。そうした情報から導き出された侵攻作戦の内容を、事前にアトラシア軍と十分共有したキングは、全部隊の出陣を見届けた(のち)、自身も親衛隊と共に南方へ向かい、山越えを開始した。


 新規兵であるリサ所属のナイト部隊は馬で移動しているため、山を回り込んだ平地を進まなければならない。同じく大型妖精族の新規兵であるジャイアントも移動速度が遅く、山越えに時間がかかる。戦場で大きな戦力を発揮する新兵種が、後詰めの形になるのは致し方ないところだ。


 戦いの幕は切って落とされた。魔王の支配からエルディアを開放するため、キングとアトラシア軍は、数多(あまた)の血と汗を流さなければならない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ