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アトラシア戦記~あるファイターの手記より~  作者: チャラン
終章 決戦の地・ケイオス

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第15話 ドッグファイト

「全速力で飛んで来たが、俺たちの方が早かったようだな」

「そうね。でも今は、後から来てくれる援軍を待つような暇はないみたい。辺りの邪悪な気配が強いわ。もうすぐ敵が来るよ」


 第一拠点から補給線を伸ばし、堅固な防衛線を構築するため、カイ率いるグリフォン部隊と、シェリー所属のハーピー部隊は、南西と南東方向に戦力を分割した(のち)、できる限りの速い飛行で移動を開始した。その結果、ルシファーの魔軍より一手早く、飛兵部隊は戦略目標地域に到達できたのだが、シェリーがカイに注意を促している通り、後続を待つ時間的猶予はほとんど残されていない。南西地域、南東地域ともに、まもなく戦端が開かれる。


 邪悪を嗅ぎ当てるシェリーの鋭敏な知覚に狂いはなかった。一手だけ早く、目標地点に到達したことで得られた僅かな時間を利用し、ハーピーとグリフォン部隊は迅速に防衛線を構築したのだが、程なくしてルシファーの魔軍も、飛兵の先遣部隊を、南西南東の両地域まで飛ばしてきた。飛兵対飛兵による空中戦が勃発する。


「敵が来たようだな。シェリー! ぬかるなよ!」

「分かってる! カイさんの方こそトチらないでよ!」


 戦いは始まった。ハーピーとグリフォンの2兵種で構成される統合飛兵部隊は、部隊間同士、互いに連携を取りながら、魔軍の飛兵集団との応戦を繰り返し、損害をできるだけ抑えている。飛兵総長であるカイの的確な指示を受け、シェリーや他の仲間たちが機転を利かせ、しばらく防衛線を守っていると、


「頑張ってるな! ここからは私たちに任せろ!」


 リサを総長とする、シルバーナイト、メイジ、プリーストの統合部隊が、最前線に駆けつけた! アトラシア軍の主力が防衛線に加わったことで、戦況は五分以上、こちらの優勢に傾きつつあるが、更なる援軍として、クロード率いるエルフたちやリザードマンなど、小型妖精族や竜族で構成される混成部隊も、続々と到着する!


 だが、魔王の側も手をこまねいてはおらず、後詰めの魔勢を次々と最前線に送ってきている。魔軍の増援により、再び五分に戻りかけている戦況を打開せんと、ヴィオラ所属のメイジ部隊は攻撃魔法バルを、ハン所属のプリースト部隊は回復魔法ユンクを駆使し、戦場の仲間たちを支援し続けていた。


「それにしてもキリがないわね……!? えっ!? あれは!?」

「ダークワイバーンだと!?」


 ヴィオラとハンの活躍により、アトラシア軍は魔勢の大軍を打ち払い、再び戦いの主導権を取り返しつつあったが、本拠地ケイオスで、強力な支配力を発揮するルシファーは、先に切り札を切ってきた! 暗黒の飛竜、ダークワイバーンたちを、魔王の居城から見て北東の最前線にけしかけてくる!


「グオオオォォオオンンッッ!!」


 大翼を羽ばたかせ飛来したダークワイバーン部隊は、ハーピー部隊とシェリーにギョロリと眼光を向け、狙いを付けると、空中から高熱のブレスを吐いてきた! だがそこへ、一手早く、カイ率いるグリフォン部隊が割って入り、ダークワイバーンたちを鋼鉄の如き鉤爪で攻撃する!


「グオッ!?」


 突然の襲撃にダークワイバーンたちはブレスの狙いを外し、一瞬怯むが、グリフォンの爪撃を受けたにもかかわらず、損害は軽微である。暗黒の飛竜たちは、すぐに体勢を立て直すと怒りの眼光を向け、グリフォン部隊とカイを焼き払わんと、激しいブレスを吐きつけてきた!


「ウオオオォォッッッ!?」


 高熱のブレスをかわしきれないグリフォン部隊は大損害を受け、カイも全く無事では済まず、相当な火傷を負ってしまった。カイとグリフォン部隊は今、飛行能力をほとんど失っている。このままでは、地上にかろうじて降り立つ前に、ダークワイバーンの追撃を受け、皆殺しにされてしまう!


「いかん! この弓矢がどこまで通じるか分からんが……。一斉発射!」

「カイ! 今、助けるから!」


 大切な戦友たちを、みすみす殺させるわけにはいかない! カイとグリフォン部隊を捕食しようと狙いをつけたダークワイバーンたちに、クロード率いるエルフ部隊とヴィオラが所属するメイジ部隊が総攻撃をかける! 比較的苦手な矢の一斉発射と、メイジの対空魔法攻撃を受けたダークワイバーン部隊は、相当な損害を被り、グリフォンたちの捕食を諦め、一旦南に退いて行った。



 未曾有(みぞう)の脅威は一時的に去った。嵐が過ぎた後のように一定程度の余裕ができたため、ハン所属のプリースト部隊は、高熱ブレスにより大損害を受けたグリフォンたちに、応急治療を施せている。


「ハハハッ……。シェリー、お前の言う通り、俺はトチったようだな……」

「トチったんじゃないよ! 私のせいだよ! ハーピー部隊の私たちをかばってそうなったんだから!」


 地上に弱々しく降り立ったカイは、自分を責めているシェリーに優しい眼差しを向け、


(そうじゃないんだ)


 と、首を振り、思いに出せない心情を表わすともなく表している。


「よし! 今できる治療はここまでだ。どうだ? 少しは楽になったか?」

「少しだけどな。それでも大分マシになった。これなら拠点の町まで何とか飛べるだろう」


 ハンの回復魔法による応急治療は終わり、多少、体力と火傷が回復したカイは、


「じゃあな、ハン。俺は先に上がるぞ。シェリーとこの(いくさ)のことは任せた。頑張れよ」


 そう彼らしいプライドとユーモアを乗せた、さり気ないエールを送ると、戦場を離れるため、ゆっくりと飛び立って行った。


「カイさん……」


 見送る白翼の乙女の心中は、自責の念でかき乱れていたが、カイの思いに報いるため、シェリーは自分を取り戻さなければならない。

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