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アトラシア戦記~あるファイターの手記より~  作者: チャラン
終章 決戦の地・ケイオス

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第14話 最後の出陣

 キングはトラス平野を奪還し、ルシファーを最終決戦の地に追い詰めた。おぞましさすら感じられる暗雲が漂う中、勇猛果敢な光の軍は、魔王の本拠地ケイオスまで、その駒を進めている。


「国王陛下、申し上げます。周辺地帯を偵察し、一つの城を発見致しました。ですが、城周囲は暗黒の霧で覆われており、それ以上のことは分かっておりません。情報は不完全ですが、ご判断を賜りたく存じます」


 キングは、斥候として飛ばしていたハーピー部隊からの報告を聞き、少しの間、黙考していたが、


「その城へ向かおう。敵勢力が現存する場合、打ち倒して入城するのだ」


 (はら)をくくって全軍にそう下知した。


 周囲に漂う暗黒の霧を、プリースト部隊の清浄な魔力で打ち払いながら、少しの間、南進したアトラシア軍は、ハーピー部隊の報告にあった城にたどり着いた。


「見る限り空城のようだが……。やはりここはケイオスだ。邪悪な気配がプンプンと漂っているな」


 プリースト部隊所属のハンはそう呟くと、軍から一歩進み出て、古びた城門にまとわりついているツタ状の植物を、手で取り払い始めた。城門を這うように伸びていた全てのツタが取り除かれると、周囲の邪悪な空気は幾分弱まり、何処(いずこ)からか発生していた暗黒の霧も、徐々に薄まってきた。魔力の清浄性を有するプリーストの手により、城門の封印が解かれたことで、辺りに充満していた邪気も払い清められたのだろう。


「これで城を巣食っていた、邪悪な脅威はなくなりました。国王陛下、入城しましょう」

「うむ。よくやってくれた。全軍入城!」


 キングの号令を受け、気勢を上げて城へ進み入ったアトラシア軍は、一時の休息を取った(のち)、ケイオス攻略の足がかりとなる第一拠点を構築するため、簡素な改修工事に取り掛かった。


 入城したアトラシア軍の聖なる活力を受け、上空を覆う暗雲はかすれ始めている。


(俺たちは、戦いの女神に祝福されている。必ず勝とう!)


 サイラスは城の広場から空を見上げ、今から臨む最後の戦いに、僅かな光を見出していた。




 トラス平野奪還を賭けた先の戦いに、ハーピーのシェリーは参加しておらず、エルディアでダークグリフォンから受けた傷を完全に癒やすため、彼女は(いくさ)の最中、ずっと療養に専念していた。その甲斐あって、シェリーの心身はすっかり回復し、ケイオスでの最後の戦いに向けて、再び戦列に並ぶことが叶っている。


 また、ここまでの戦いで十分な戦功を上げ、比類ない実戦経験を積んだサイラスとリサは、ファイター部隊の隊長、シルバーナイト部隊の隊長に、それぞれ昇進している。アトラシア軍の中で勇名を馳せてきた2人には、最後の決戦においても活躍が期待されるところだ。


 ケイオスに入ったキングは、この最終決戦の地へ来るまでに、キングウィル、エルディア、トラス平野の、3地方に君臨していたルシファーの分身を打ち倒し、広大な国土を奪還した。各地方の民心を安んじたことにより、アトラシアの国力は全盛期に近いほど回復してきている。


 キングは十分な国力回復により増加した税収を、大型竜族と共に暮らす部族の支援に回した。賢王が行った誠実な援助が功を奏し、アトラシア国は、部族の民及び、部族長との信頼関係構築に成功している。強固な信頼と協力関係が部族から得られた結果、サーペント、ワイバーン、ドラゴンの、大型竜族の召集と雇い入れが、このルシファーの本拠、ケイオスにおいて可能となった。


 大型竜族は破壊神とも崇められる、凄まじい戦力である。神とも称される彼らを召集するためには、莫大な国家予算が必要となる。それゆえ、開戦を明日に控えた現時点では召集不能であり、破壊神たちの協力を、この先得ようとするならば、また税収を蓄えなければならない。先立つものは金といったところだ。




 戦支度は済み、翌日の朝が来た。いよいよ最後の出陣である。


「ルシファーとの決着をつける時が来た。これよりケイオス攻略作戦を敢行していく。各人、覚悟を持って(いくさ)に臨んで欲しい」

『はっ!!!』


 城の広大な練兵場に全軍を集めたキングは、これから出陣する各部隊を前に、まず激励の挨拶を行った。その結果がどうなろうとも、恐らくこれが最後の戦いになる。指導者として間違いのない指揮で、アトラシア軍を導きたいところだ。


「それでは、作戦内容の説明に移る。ルシファーの本拠ケイオスでは、今いる我らの居城から見て、南西と南東方向の二箇所に空城の存在が確認できている。それらの空城を占領し、第二拠点、第三拠点を構築することを戦略目標とするが、兵力を1対1の比で分割し、そのまま二方向に動かすのは得策と言えない。私はそう考えている」


 キングは一旦言葉を切り、アトラシアが誇る精鋭たちの顔を、壇上から見回した(のち)、説明を続けた。


「全軍を10として考え、戦力は7対3の比に分割する。3割の兵の主な任務は、南東地域に進軍してくる魔勢の牽制だ。残り7割の兵は、第二拠点を構築するため、私と共に南西の空城へ向けて進軍せよ。空城と周辺の町々を占領した(のち)、余力をもって第二拠点から見て東にあたる、空城の攻略に移る」


 つまるところ、トラス平野奪還戦と同様、軍をスピーディーに動かすことが肝要になる。作戦内容の概略を全軍に向けて伝え終えたキングは、自身も出陣の身支度を整えるため、城内へ一旦戻って行った。各部隊への詳細な任務伝達は、あとを引き取った側近の参謀が行っていく。


 サイラス率いるファイター部隊には、出陣後、第一拠点の城周りの町を安んじた(のち)、南西の空城へ向けて進軍せよ、という任務が伝達された。国庫に入る税収を少しでも増やし、継戦能力を蓄えるのがその狙いだ。


 シェリー所属のハーピー部隊とカイ率いるグリフォン部隊には、南西と南東、2方向にある城へ向けて最高速度で飛行し、偵察と防衛線構築を実行せよ、という重要任務が課せられた。事の成否次第で序盤の戦況が全く変わってくるため、2兵種で構成される統合飛兵部隊の、果たすべき責任は大きいと言えよう。


 残りの他部隊にも、戦場で果たすべき任務が滞りなく伝達され、決戦の幕は上げられた!


 ルシファーに、もう後はないが、ここで勝たねばアトラシアの未来はない。キングと皆は、決死の覚悟で、戦場への第一歩を踏み出していく。

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