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アトラシア戦記~あるファイターの手記より~  作者: チャラン
第3章 トラス平野を越えて

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第13話 残された地

 石化攻撃に苦しめられながらも部隊間同士で協力し、アトラシア軍は何とかコカトリスを打ち倒した。雄鶏と蛇がかけ合わさったコカトリスのその姿は、目を背けたくなるほど禍々しいが、力なき死骸となった以上危険性はない。甚大な脅威が完全に沈黙したのを確認した(のち)、アトラシア軍のジャイアント部隊は、その巨体から繰り出される膂力をもって、ルシファーが待ち構える居城の正門を破壊した!


「道は開けた! 行けるか!? リサ!?」

「うん! もう大丈夫! 一緒に行こう! 私たちならルシファーを斬れる!」


 先刻、邪悪に染まったかつての親友と対峙したリサだったが、一時休憩により衝撃から立ち直り、心のバランスを取り戻せたようだ。サイラスとリサは、互いにそう示し合わせると、それぞれの所属であるファイター部隊、シルバーナイト部隊の仲間たちと共に、真正面から城へ侵入する!




 ルシファー打倒の使命を負ったファイターとシルバーナイト部隊は、魔王を守る最後の盾、親衛隊からの激しい迎撃を覚悟していたのだが、そのような抵抗を受けることもなく、討伐隊が侵入した城内は、不審に感じられるほど静まり返っていた。


「……どういうことだ? 諦めたのか? いや、相手は魔王だ。そんな考えには至らないだろう」

「そうだな。恐らくルシファーは、親衛隊を結集し、玉座の間で起死回生の反撃をしかけようと、万全の備えを講じているのだろう。油断は全くできないぞ」


 そう予想を立てながら静寂の城内を注意深く進んでいたサイラスとリサは、程なくして、討伐隊の仲間と共に玉座の大広間まで到達した。2人の推測通りである。ルシファーは、最側近の忠実な親衛隊に自らの周りを固く守らせ、大広間の中心に立ち、万全の体制で威風堂々と待ち構えているではないか!


「サイラスと言ったな。これでお前の顔を見るのも三度目か。人間ながら大したやつだ。褒めてやろう」

「!?」


 魔剣を構え、こちらを見据えているルシファーは、その戦闘態勢とは対照的な言葉で、自身にとって最大の脅威となったサイラスの勇気を褒め称えている。ルシファーから称賛の言葉をかけられたサイラスは、その不気味な意図が見えず、黙して剣の切っ先を魔王に向けていたが、


「アレスのようにサイラスを引き込もうとしても無駄だ! ルシファー! 私がそうはさせない!」


 冷静な構えをもって、鋭槍(えいそう)を最大の敵に突きつけるリサの啖呵を聞き、ハッと我に返った。


「そういうことか! どこまでも汚いやつだ! 今度こそとどめを刺してやる!」

「ほう、そこの女。アレスを知っていたのか。サイラスを引き込めば、アレスに匹敵する手駒になると考えたが……仕方あるまい」


 称賛の意図に気付いたサイラスは激昂し、今にも斬りかからんばかりである。そのファイターの怒りをルシファーは気にも留めず、意外な顔をリサに向け、呟いていたが、


「ならばここで殺しておくまでだ!」


 周囲の親衛隊に魔王の号令を突如としてかけ、討伐隊を皆殺しにせんと、先制攻撃を繰り出させた!


 ルシファーの最後の盾、親衛隊が振るう剣は激烈だが、ここまで苦難を共にしてきた、ファイター部隊、シルバーナイト部隊の仲間たちが、懸命に応戦し、防いでくれている。頼もしい戦友たちから支援を受けたサイラスとリサは、得物を構え直した(のち)


「ウオオオォォォッッッ!!」

「ハアアアァァァッッッ!!」


 大気炎を上げ、ルシファーに連携攻撃を畳み掛けた!


「ふんっ! やるな!」


 サイラスの剣とリサの鋭槍(えいそう)、2人の手練れが繰り出した攻撃は苛烈で、さしもの魔王といえど、対処は不可能に見えた。しかしながらルシファーは、右手に持った魔剣でサイラスの攻撃を受け切ると同時に、左手に魔力の盾を作り出し、リサの鋭槍(えいそう)による激しい刺突を防いでいる!


「今度はこちらから行くぞ!」


 2人の連携攻撃を跳ね除けたルシファーは、魔力を集中し、左手から紫の光弾を撃ち出した! 甚大な魔力が乗った数発の光弾が、2人の体を撃ち抜かんと、高速で飛んで行く!


「タッ!」

「ヤッ!」


 当たれば戦闘不能は避けられないが、ここでもサイラスとリサは、息の合ったコンビネーションを見せた。示し合わせ、左右に跳んだ2人は紫の光弾をかわすと、その勢いを駆って、ルシファーに再び連携攻撃を仕掛ける! 虚を突かれたルシファーは、サイラスの剣をかろうじて防いだものの、


「グッ!?」


 リサが繰り出した鋭槍(えいそう)に急所を貫かれた!


 魔王は激しい苦痛に顔を歪ませた(のち)、そのままぐったりと力なく息絶える……。




 トラス平野においてルシファーの打倒を果たし、領土奪還も成し遂げられた。魔王は力を失ったその亡骸を、大広間の冷たい石床に晒し始めている。しかし!


「あれは……ルシファーの魂!」


 またしても本体である赤い光の球が、魔王の亡骸から抜け出てしまった! ルシファーの魂は、まばゆい赤光(しゃっこう)を発すると、魔王の本拠、ケイオスの地へ飛び逃げて行く……。




 サイラスとリサは、三度(みたび)ルシファーを取り逃がしたことを強く悔しがっていた。だが、この戦いの勝利において、トラス平野奪還は成し遂げられ、領土回復が果たされた。アトラシアにとって非常に大きく、意味のある戦果だ。


 (いくさ)を終え、キングの居城に帰還したサイラスとリサは、ありのままの戦果報告を謁見の間で行い、


「よくやってくれた。ルシファーに残された地は、もはやケイオスしかない。次の戦いで決めよう」


 と、賢王から(ねぎら)いの言葉をかけられている。


 もはやルシファーに後はないのだ。キングは決着をつけるため、最終決戦の地、ケイオスへと、軍を進める。

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