第11話 電撃戦
攻撃と回復、対照的な魔法を使う2部隊が新たな戦力として加わり、アトラシア軍の陣容は更に整った。
「よし! 全軍出陣! トラス平野を我らの手に取り戻すぞ!」
『応!!』
キングの大号令を受け、士気上々のアトラシア全軍は勢いよく城を出る。王が率いる光の軍は、広大なトラス平野奪還と三度の魔王ルシファー打倒のため、勇猛邁進な第一歩を踏み出した。
この戦いで進んでいくトラス平野は、その地域名にある通り、漠然とした移動しやすい平地が地平の向こうまで広がっている。その広大な平野部の周辺には、山や森林地帯など、起伏に富んだ地形も一定の割合であるのだが、前の戦で攻略したエルディアに比べると、地域特性として軍の機動力が失われにくい。恐らく、進行はある程度スムーズになる。
ただ、トラス平野におけるその地域特性は、南方の居城から進み来る、ルシファーの魔軍についても同様に当てはまる。南進するアトラシア軍、北進するルシファーの魔軍、相対する両勢力は、平野部中央にある空城の支配権を巡って、しのぎを削ることになるだろう。電撃戦が予想される。
「やはり我々の方が、魔軍より一手早く到着できたか。だが、サイラスとリサと言っていたか……。後続のファイターやシルバーナイトなどを待てるほど、時間は残っていないようだ。飛兵部隊の我らだけで防衛線を張るぞ!」
『はっ!!』
兵は神速を尊ぶの言葉通り、キングは、翼による飛行で山川などをショートカットできる、ハーピー部隊、グリフォン部隊を、トラス平野中央部に位置する空城へ向けて、最高速度で先行させた。魔軍に先んじて、周辺地域の偵察と防衛線の構築を成功させるのがキングの狙いだ。その賢王の狙いを十分理解している精鋭たちは、飛兵総長であるグリフォンのカイが発した、的確な指示を受けて動き、期待通りの部隊展開を見せている。
平野中央部において防衛線の構築に成功した統合飛兵部隊は、周辺の偵察を逐次実行しながら、魔軍の襲来を待ち構えていた。
「来ました! ダークハーピーとダークグリフォン部隊です! もうすぐここに到達します!」
「予想通りだな。迎え撃つぞ! 防衛線を突破されるなよ!」
逐次の偵察が功を奏したようだ。アトラシア軍の統合飛兵部隊はうろたえることなく、魔軍の飛兵集団に接近し、迎撃を開始する! こちらの統合飛兵部隊もハーピーとグリフォンの2種族で構成されており、兵種の優劣による敵との戦力差は全くない。あとは部隊運用が物を言う世界だが、幸い、アトラシア軍には、高い統率力を持つ飛兵総長のカイが居り、的確な指示で皆を導いている!
魔軍の飛兵集団と激しい混戦となりながらも、状況に応じたカイの指揮と各兵員の粘りにより、統合飛兵部隊は防衛線の死守に成功した! 十分な時間を稼げたところで、シルバーナイト、ゴブリン、エルフ、リザードマンといった後続部隊が、援軍として次々と到着し、厚みを増した防衛線は一気に安定していく!
「最前線の状況は悪くないな。空城に入城し、第二拠点を構築する! ファイター部隊は周辺の町を開放せよ!」
『はっ!!』
ここにおいて戦況は五分以上、アトラシア軍側に傾いていたが、駄目を押す形で、サイラス所属のファイター部隊とキング、更には新戦力のソーサラーとモンク部隊が、後詰めとして到着した。キングとファイター部隊は、戦略目標の空城と、周辺の町々の開放を素早く進め、北の第一拠点と、トラス平野中央部に今構築した第二拠点を、堅固な補給線でつなげていく。
「私たちも働かないとね。手柄がなくなっちゃうわ」
「そうだな。我らモンク部隊は、傷ついた他部隊の支援に回ろう」
ヴィオラとハンがそう話している通り、トラス平野中央部における戦いの趨勢は、決し始めていた。
その戦況を見てやるべきことを悟った、ヴィオラ所属のソーサラー部隊は、戦場の間隙を縫って動くと、攻撃魔法バルを使い、周囲の敵戦力を効率的に削っていく! 魔法使いたちの動きとは対照的に、ハン所属のモンク部隊は、ユンクの魔法で傷ついた他部隊の負傷兵を治療し、味方戦力の回復を進めている。
各部隊間のベストとも言えるチームワークで、戦況はアトラシア軍の優勢にハッキリと傾いてきた。
士気衝天となった光の軍は、ルシファーを三度追い詰めるため、防衛線を勢いよく南下させて行く!




