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都合のいい星

作者: 響戸桃

ある日突然宇宙人がやってきました。




 どこからかやってきた宇宙人たちに地球は大騒ぎになりました。どうして宇宙人たちはやってきたのか、どこからきたのかなどを話す胡散臭い動画がはびこりました。


 征服するために来たという人もいれば、いまだに攻撃してこないので友好のために来たのでは、という人もいました。だんだん議論は加熱していき、攻撃される前に武力でUFOを乗っ取って星に攻め入り征服すべきだという過激派すら現れました。




 しかし、そんな騒ぎもすぐに収まりました。


 都合のいいことに宇宙人たちは地球上の全ての言語を話せたからです。実は宇宙人たちの間で使う言語を話しているだけなのですが、なぜか地球の人々にとってはそれが母語に聞こえるのです。また、宇宙人たちも地球のどんな言語を聞いてもその宇宙語に聞こえるのでした。


 さて、司令官らしい宇宙人が来た経緯を話しだしました。


 彼らは銀河系の彼方にある星からやってきました。地球に大変よく似た星でしたが、一つ大きな違いがありました。酸素と二酸化炭素の役割が逆転していたのです。彼らの星で火を燃やせばででくるのは酸素、植物が光合成で作るのは二酸化炭素で、彼らが息を吐く時出てくるのはのは酸素なのでした。


 地球の科学者たちはそんなことはあり得ないと笑いましたが、実際、その宇宙人たちは確かに二酸化炭素を吸い、酸素を吐いていたのです。




 さて、そんな星にある変化が起きました。産業が急成長したことにより、酸素が増えすぎて、異常気象が起こり始めたのです。


 そこで見つけたのが地球でした。この星の動物たちを連れてくれば酸素が増えて異常気象も解決するのではと、やってきたそうです。




 都合のいいことに、その星は地球人にとって住みやすい環境でした。宇宙人たちの作った宇宙船によって片道数日で行き来することもできました。


 さらに都合のいいことに、その時地球はそこそこ平和でした。それもあり、宇宙人に対応するため作られた地球政府も、異常気象を解決できるならと賛成しました。


 そうして、お互いに移民と家畜を交換することが決まりました。


 星に送る移民を募集したところ応募が多すぎて抽選で選ぶことになりました。家畜は政府によって買い上げられ、送られました。


 その後すぐにUFOに乗ってやってきた移民と家畜たちによって、異常気象は落ち着き、地球に平和が戻りました。


 宇宙人たちは持ち前の言語能力を活かし、地球で商売や通訳などをして力をつけていきました。




 移民たちがやってきた数年後、宇宙人たちに頼り切りであることや、大きな力をつけたことに危機感を持った人々が現れました。彼らは宇宙人たちの身体の構造を調べようとし、秘密裏に宇宙人たちの人体実験が行われました。身体の構造を調べることでどうにかして宇宙人たちの居なかった世界を取り戻そうと思ったのかもしれません。拉致された宇宙人たちは無理な実験によって次々と亡くなっていきました。


 地球政府の人々は震えました。どんなことをしても友好を保ちたい星相手にこんなことが起こってしまったのです。移民が全員戻されても文句など言えません。戦争になってもおかしくないほどのことです。


 その星に連絡した翌朝、彼らは不安に苛まれながら職場にやってきました。


 しかし、都合のいいことに向こうの星でも同じ事が起こっていたのです。だから向こうの星の人たちもその事について非難しようとはせず、お互いに一般人に知らせないようにしようということになりました。


 地球政府の人々はその存外の『幸運』に胸を撫で下ろしました。


 そうして地球と、かの星の平和は長く続きましたとさ。


 めでたしめでたし。

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― 新着の感想 ―
「都合のいいことに向こうの星でも同じ事が起こっていたのです」という一文にゾクッとしました。平和とはなんなのか考えさせられるいいSF作品ですね。
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