先輩
中野桜はいつものように朝を迎えた。だが、今日の朝はいつも以上に特別な朝だ。なぜならば、今日は夫、光弥との結婚式だからだ。光弥とは高校で知り合った。光弥は2つ年上で、いい関係を築いてきた。光弥にあこがれている女子高生は多かったが、桜とはとても仲が良く、両想いだった。
桜は1階にやって来た。そこには光弥がいる。桜よりも早く目を覚ましたようだ。桜は笑みを浮かべた。今日は楽しみにしていた結婚式だ。
「おはよう」
「おはよう」
光弥も笑顔で応えた。光弥も今日が楽しみなようだ。
「今日は結婚式だね」
「うん」
桜は朝食を食べ始めた。今日は珍しく、光弥が作ってくれた。いつもは桜が作るのに。
「思えばいろんな日があったね」
「ああ」
2人はこれまでの日々を思い出した。高校で出会って以来、2人は離れ離れの時もあったけれど、やっと一緒になれた。
それは桜が高校1年生の時だった。田中桜は専願で出願した高校の入学試験で合格した。今月から始まった高校での日々、どんな生活になるんだろう。どんな日々を送るんだろう。全くわからないな。
桜には気になっている男がいた。高校の2つ上の先輩である、中野光弥である。野球部の主将で、女性からの人気が高かった。この高校は全国大会からは程遠い。光弥は実力はあるものの、プロが注目しているほどではない。
「どうしたのよ、中野先輩を見て」
桜は横を向いた。そこには同級生の村山がいる。村山も光弥が気になっていた。村山も野球部で、光弥はあこがれの先輩だと思っていた。
「何でもないよ」
と、村山は思った。ひょっとして、桜は光弥に心惹かれているのでは?
「恋をしてんじゃないの?」
「ううん」
桜は否定した。だが、本当は心惹かれている。いつか交際したい、結婚したいと思っている。
「ふーん・・・」
と、そこに光弥がやって来た。桜は、光弥の事をよく知っていた。光弥は一目見た時から、桜が好きだった。この子となら一緒になりたいな。
「おーい!」
「中野先輩」
「桜ちゃん」
光弥は桜の肩を叩いた。そして廊下を歩いていく。いつか、2人で一緒になれる日を楽しみにしていた。
だが、翌年の3月、卒業式を迎えてしまった。光弥はこの年で卒業だ。光弥は東京の大学に進学し、東京で就職しようと思っているそうだ。この年限りで離ればなれになる。残念だけど、受け入れないと。
「卒業おめでとう」
だが、桜は悲しそうな表情だ。今日限りで光弥とはお別れなのだ。だけど、また東京で会いたいな。これからは、しばらく遠距離恋愛になるけど、それでもいい関係を築いていきたいな。
「中野先輩、東京に行くんだね」
「うん」
ふと、桜は思った。自分も東京の大学に進学したいな。そして、光弥と一緒に暮らすんだ。
「私もいつか、東京に行きたいな」
「そう?」
「うん」
そして、光弥は高校を後にした。その翌日、光弥は東京へ向かった。それ以後の2年間、2人は遠距離恋愛となった。そして、光弥が大学3年生になった時、桜も東京にやって来た。そして、2人の交際生活は始まった。
2年後の春、桜は東京にやって来た。東京の大学に進学したのだ。去年の大学受験とても大変だった。だけど、頑張った結果、東京の大学に進学できた。これから東京での生活が待っている。東京での生活はいろいろ大変だけど、光弥と再び一緒になれるのなら、全く心配ないだろう。
「ここが東京か」
桜は東京駅を見て、東京に来たんだと実感した。修学旅行で初めて行った東京。東京駅を見て、ここで生活するのにあこがれたあの日。そして今日から東京に住む事になった。まるで夢のようだが、夢ではない。だが、ここで浮かれてはならない。これからもっと厳しい日々が始まるだろう。
「おーい!」
と、誰かの声がした。誰だろう。桜は振り向いた。そこには光弥がいる。まさか来てくれるとは。
「中野先輩! まさか来てくれるとは」
「そりゃ来たんなら来るじゃないか!」
「そうだね」
2人は再び一緒になれた。ここまで遠距離恋愛でさみしかったけれど、ようやく一緒になれた。2人は再び始まる交際生活に期待していた。
4年後、桜は大学を卒業し、そのお祝いに光弥とスカイツリーに来ていた。修学旅行では行ったけれど、東京に住み始めてからは行った事がない。光弥はすでに2年前に大学を卒業し、サラリーマンになっていた。今では多くの社員の支持を得ていて、社長からも期待されているという。
だが、桜は思っていた。どうして今日はスカイツリーに誘ったんだろう。ここに誘ったのは光弥だ。その理由が全くわからない。
「どうしたの?」
光弥はスカイツリーの夜景を見ている。スカイツリーから見る東京の夜景はとても美しいな。どんな嫌な事があっても忘れられる。とても素晴らしいな。
「きれいな夜景だね。でも、どうして連れてきたの?」
「卒業おめでとうと言いたかったんだ」
そうだったのか。今日は卒業式があった。両親はとても感動していた。そんな両親にこれから、どんな形で恩返ししようか? 全くわからないな。
「ふーん・・・。でも、どうして会場で言わなかったの?」
「ここで言った方がいいかなと思って」
光弥は会場で言うより、こんな特別な場所で言った方がいいと思っていたようだ。桜はとても嬉しそうだ。こんな素晴らしい場所で言ってくれて、ありがとうと言いたいようだ。
「そう・・・」
と、光弥は真剣な表情になった。何か言いたい事があるんだろうか?
「桜ちゃん」
「どうした?」
光弥はショルダーバッグから何かを取り出した。光弥は少し緊張している。どうしたんだろう。
「渡したいものだがあるんだけど」
「何?」
光弥が取り出したのは、指輪だ。どうやらプロポーズのようだ。自分は大丈夫だけど。
「指輪」
「どうして?」
突然の出来事に、桜は驚いている。まさかこのタイミングでプロポーズとは。
「これから一緒になろう」
「ありがとう」
桜は受け入れた。だって、大好きだから。これからずっと一緒になれるのなら、これ以上嬉しいものはないだろう。
そろそろ結婚式の会場へ向かう時間だ。これまでいろんな日々があったけれど、どれもこれもいい日々だったな。これからもっといい日々を送っていきたいな。
「そろそろ行かなくっちゃね」
「うん」
そして2人は、家を出て、結婚式の会場に向かった。空は、2人を祝福しているかのような快晴だ。2人はこれからの人生に期待を寄せた。これから、いろんな苦しい出来事があるかもしれないけれど、2人なら乗り越えていけるだろう。だって、2人は一緒なのだから。