紙飛行機の絨毯爆撃
とある貴族の学園で。
或る日の放課後、家へ帰ろうとする令息の頭に何かがコツン、と軽くぶつかった。
振り返れば、まだ空にもふわりと漂うそれは、紙飛行機。
何故、と令息は思うのと同時に何かが堰を切って溢れるように流れ出し、思い出す。
これは、前世で紙飛行機と呼ばれていたものだ、と。
通り縋った他の者達は、首を傾げてそれを拾い上げるものの、どうして良いか分からない風。
なので、令息はその飛行機を開いて、紙に何が書かれているのかと読み始める。
やっば。
これ、犯罪じゃん。
書いてあったのは王子による悪逆非道な、性犯罪。
思わず地面に落ちている紙飛行機を拾い上げてまた、読む。
今度は実名を晒しての、官能小説だ。
令息の記憶が確かならば、王子の側近と、その相手のご令嬢には婚約者もいたはずで。
浮気ですね、完全に。
しかし、誰がこれを、と空を仰ぎ見るが、今は影も形も見えない。
それよりも、他の手紙が気になって、拾い上げては広げて読んでいく。
「なっ!」
「まあ……!」
令息の真似をして、紙飛行機を開くと文面があると知った周囲の人間が読み始めた。
ある者は顔を蒼くし、ある者は真っ赤に染まる。
犯罪の告発文と赤裸々な官能小説なのだから、無理もない。
読み終わった生徒達は、お互いに持っていた物を交換して読み始め。
いつしか馬車の停車場に人だかりが出来ていた。
きっとこれを使って爆撃した人間は、多くの人にこの犯罪を伝えたいのだろう。
思い立った令息は、地面に置いて手紙を並べ始める。
自由に読めるように。
またも周囲の人間がそれを真似して、自分が読んだものを置いていく。
噂好きの貴族の血を継いだ少年少女があっという間に……当事者を除いて集まり、その情報を広めていった。
真面目な令嬢が、事件を紙に書き付け始める。
几帳面な令息が、犯人ごとに事件を並べ直した。
警察かな?
もう一度屋上を見れば、一人の少女が覗き込むようにこちらを見ていた。
学園内だけではない。
貴族街でも同じような事件が起きて、結局捜査の手が入り王子を筆頭に軒並み問題のある令息とご令嬢達は廃嫡、修道院送りや刑罰を受ける事となった。
令息は紙飛行機を飛ばして遊んでいただけ、という無邪気な言い訳をした令嬢と愛を育んでいる。
最近忙しくてこんな企画がある事も知らず、何ならやってみようと突発で書いた物です。
早朝ひよこ。
完結してなくても良かったのか!と書いてから知りました。
でも読む方は完結してる方がスッキリしていいよね!