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オルクセン王国史2次創作

作者: 那田野狐

漫画2巻とエピソード61を履修

漫画最新話を読んで浮かんだお話

 オルクセンに連れていけチタカタッタッタア!

 エ・エ・エルフのお臍!

 ミ・ミ・ミミズの目玉!

 あるのかないのかないのかあるのか見に行こう♪

(サカグチポチ著。通称エルフの生態考察)


 アキツシマ、キタザト生物研究所の一室。


「伝え聞くところ、エルフには生物学上の親というものが存在しないらしい。ある日突然、聖なる地の白銀樹の根元で赤子の姿で見つかるという。

 しかも全てが女性だという」


 アキツシマ人に多い黒髪黒目の人間、北里敏郎は3時の休憩として用意した緑茶を啜りカリントウを齧りながらボソっと呟く。


「それは有り得ないだろ?」


 柴犬のコボルト種の男、サカグチポチは目を丸くして聞き返す。


 哺乳類は母親の胎内で育つ。それは生物学者たちが一致した見解だが、実際にエルフたちは聖なる地の白銀樹の根元で赤子の姿で見つかるという生態で集落を作り繁栄しているという。

 サカグチは疑問を持った。エルフの身体は他の種族と同じなのだろうか?ということに。

 エルフの長い笹の葉状の耳は別として、外見上は人族と同じだ。そして、自らは望んで生殖行動をしないというのに性の象徴である尻や乳房が豊満な個体は存在しているという。

 だが、使われない器官は基本的には退化するものだ。

 え?エルフは魔種族で不老長寿で不死に近いから使われない器官が退化する速度も遅いんじゃないかって?まあ、それはそうかもしれない。

 もう一つ疑問がある。エルフの赤子は木の根元で見つかるということ。つまり卵子が受精してから生まれるまでの間、母親の胎盤から栄養や酸素を得ていないという事だ。


「赤子の食事はどうするのでしょうか?基本、母乳は妊娠後期のホルモン分泌で乳腺が発達し刺激によって分泌するものです。というかエルフは妊娠するのでしょうか?」


 サカグチは鉛筆でポリポリ頭をかきなが尋ねる。


「さあな?ハーフエルフの存在は確認されていないから妊娠し辛いか妊娠そのものをしない可能性はあるよ」


 北里がなにやら書籍を読みながら答える。


「なるほど・・・問い合わせてみますか?」


 サカグチが聞き返す。


「何を問い合わせる」


 北里が尋ねる。


「臍があるのか?妊娠するのか?生殖器はあるのか?」


 サカグチが首を傾げる。


「センシブ過ぎるだろう。手紙とかで答えてくれるとは思えない!」


 北里が苦笑いする。


「しかし、疑問に思った以上はある程度の回答は得たいですね・・・」


 サカグチは顎のしたを撫でながら呟く。


「そうだ。こっそりと見に行きましょう!」


 サカグチは名案を思い付いたかのように叫ぶ。


「まぁ、手紙だと本当かどうか誤魔化されるかもしれんからな」


 センシブなことなので答えてくれるかどうか解らないと思った北里は無責任に答えるのであった。



 オルクセン王国北西部、同国最大の商業港ネーベンシュトラント


「やれやれ。ようやく着いたよ!」


 サカグチはアキツシマからオルクセン王国まで3ヵ月かかった船旅で凝り固まった筋肉を伸ばす。


「オルクセンにようこそ。ドクターサカグチ」


 入国審査場を出てきたサカグチに単眼鏡をかけたドーベルマン種のコボルトが話かける。


「やぁドクタールードビッヒ。お久しぶりです」


 サカグチが手を差し出すと、ルードビッヒが手を握り返す。


「で、今回の訪問の目的は何ですか?」


「エルフの身体調査です」


「ほう?」


 サカグチの答えにルードビッヒは頭を傾げる。


「エルフが他種族と生殖行為を行えるのは調べて知ってますが、その先・・・妊娠まですることはできるのか?ですね」


「ほう?またセクシャルな疑問を・・・ただまぁ、エルフ族が他の種族との子が成せるのかは確かに興味がありますね」


 ルードビッヒは苦笑いする。エルフには男性というものが存在しない。白銀樹の根元で赤子の姿で見つかるという。だが、オルクセンには白銀樹が存在しない。ダークエルフという種族の存続のためには調査する必要があるかもしれない。


「流石に子宮がどうこう調べるつもりはありませんよ。まぁ調べられるなら調べたいですが・・・取りあえず自分が興味があるのは臍です」


 サカグチは苦笑いする。


「臍は、母親の胎盤から胎内の赤子へと栄養と酸素を供給するための器官の名残でしょう?しかるにエルフはある日突然この世に生を受けるという。つまり臍はないんじゃないかと」


「なるほど・・・臍がない場合、エルフは自分の胎内で子供を育てる事が出来ないということになると?私もエルフ族との交流がそんなにある訳じゃないからその辺は謎ですね」


 力説するサカグチにルードビッヒは顎を触りながら唸る。


「という訳で、ルードビッヒ殿の伝手でエルフを紹介して下さい」


「紹介するのはいいですが、臍を見せてくれという交渉まではしませんよ?」


「当然です」


 サカグチは笑った。



「はじめまして。ニルナーヴァです」


 ルードビッヒがサカグチに紹介したのはまだ三桁の年齢に達していない若いダークエルフだった。

 エルフィンドからオルクセンに亡命したダークエルフの集団の一人らしい。


「で、ルードビッヒ卿から話は聞いたんだけど、ひとつ聞きたい。臍ってなんですか?」


 ニルナーヴァは頭に大量の?を浮かべて尋ねる。


「臍を知らない・・・だと?お腹の真ん中に窪みがあるでしょう?」


「へぇ?」


 ニルナーヴァは服を捲ってお腹を晒す。この辺の羞恥心は皆無だった。


「へ、臍が無い?いや、あるのか?」


 サカグチは目を丸くするが、よくよく見るとニルナーヴァのお腹には小さな亀裂のようなものがある。


「ない・・・訳じゃないが?」


 使われない器官は代を重ねると徐々に退化する。そしてニルナーヴァバの臍はないと言っていいぐらい細く小さいものだった。


「自然にそうなった訳じゃなさそう・・・だな?」


 サカグチはさわさわと臍らしきモノを触る。退化したというより、造形の過程で人に似せるために付けた穴が成長するにつれ引き伸ばされた感じがする造形だ。


「くはっ!くすぐったいです!」


「あっ!失礼」


 思わず手を引っ込めるサカグチであった。



 サカグチのお臍調査はニルナーヴァの知人を含め10人ほどの協力を得ることが出来た。

 その結果、臍はあるが胎内で子供を育てる器官の名残ではないという結論に達した。ついでにいうと月経そのものが「無い」ということも判明する。

 エルフはオーク並みに飲み食いしても排泄物をほとんど排出しないというから、胃から下の臓器が他の種族とは違う可能性があるという結論になった。ただ、解剖した訳ではないので机上の空論ではあるが・・・


「エルフの死体が手に入らないかな?一度解剖してみたいものだ」


 サカグチはポロッと言葉を零したが、それを聞いたニルナーヴァは聞かなかった振りをするのであった。



「お?ドクターサカグチから郵便物か」


 オルクセン王国にきたサカグチが半年ほどの取材を終えてからー年。ルードビッヒのもとにー冊の本が届いた。


「何々?『オルクセンに連れていけチタカタッタッタア!

 エ・エ・エルフのお臍!

 ミ・ミ・ミミズの目玉!

 あるのかないのかないのかあるのか見に行こう♪』・・・なんだこのタイトルは?」


 オルクセン語で書かれたやけに長いタイトルの本にルードビッヒは顔をしかめる。

 付属していた手紙には、ダークエルフの生態考察の本だと書いてあるが、タイトルを見た限りは真面目そうには見えない。献本なのでいつか暇なときにでも読もうかと書架に放り込んでおく。

 この本の内容が日の目を見るのは、オルクセン王国国王グスタフ・ファルケンハインがダークエルフのディネルース・アンダリエノムを伴侶として迎え世継ぎを望まれるようになってしばらくたった後のことである。

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