タイトル未定2024/09/06 15:49
目が覚めた。
あたりは暗い。
どのくらい寝ただろうか。よっぽど安心したのだなぁと、自分に思った。
果てしなく続く夢を見ていた。夢のまた夢の、そのまた夢が続く無限のループのようだった。どこかで、これは終わりがくれば楽になれる、きっとどこかに抜け出す道が現れるはず、と薄らと確信していた。
そう信じたかった、の方が本当かもしれない。
それほどまでに、僕は夢の中でもがいていたのだった。
ー
この世界は、ほんとうに美しい。
これこそ、夢なのではないか?と思ってしまう。
移り行く季節の中で、風が変わること、葉が色づいたり落ちたりすること、咲く花々が色とりどり変わること、雨が降り雪が降り、雲は流れ太陽は昇っては沈むこと、それらが二度と同じ風景はないこと。
そうこう思いをふけっているうちに、日が暮れてきた。僕が1日で特に好きな時間だ。
今日の夕陽を見に僕は外にでた。
浜辺に行く途中に、立ち寄る場所がある。
ぽつんと立つ、一本の木。
なんの変哲もない、まだどちらかというと小柄な木。
僕にとって特別な木だ。
素晴らしい思い出、というよりは、あの気持ちを決して忘れないようにしたい、という決意に近いかもしれない。
実は、僕は長い長い旅に出ていた。
この町から出発して、ようやくこの町に戻ってこれたのだ。
その間に、僕の大好きなおじいさんがなくなってしまった。
その事実を知ったのは、旅に帰って来てからだったから、おじいさんが亡くなってしばらくたっていた。
おじいさんは僕にいつも、いろんな話をしてくれていた。けれど、当時の僕にとってそれは、どこかお説教臭く感じてしまい、ときには突っぱねてしまうこともあった。おじいさんはそんな僕に対しても、決して冷たくすることはなかった。
とても忍耐強く、あたたかい人だった、と僕はようやく今になって気づいたのだった。
大切な人を大切だと気づくまえに、もう二度と会えない人になってしまうことの言葉にしようのない暗くて重い感情。
それと同時に、どれほど沢山のものをもらっていたかに気づいたときの突き刺さるほどの深い感謝の気持ち。
相反するような二つの気持ちに襲われたとき、僕はしばらく起き上がれないほどだった。
このことをもう二度と味わいたくない、と最後まで大切な気づきをくれたおじいさんとの別れ。
おじいさんは樹木葬だったから、僕にとってこの木は、特別なのだった。