つまらない夕食 【月夜譚No.313】
レンジの中をぼーっと眺める。オレンジの光の中、磨り硝子越しにコンビニ弁当がゆっくり回る。
『ったく、何やってんだよ』
突っ立ったまま、青年は昼間ぼそりと上司に言われた悪態を脳内で反芻していた。
自分が全面的に悪いのは事実だ。昔から要領が悪く不器用で、人付き合いも得意な方ではない。そんなことは、自分が一番よく解っている。
しかし、こうも毎日何かしら言われていたら、気分も沈んだまま浮いてこないというものである。好きな音楽を聴いたり、推しの笑顔をテレビで見たり、酒を呷るように飲んでみたり。色んな方法を試してみたが、気持ちが晴れることはなかった。
毎日が鬱々として、まるで地の底にでもいるようだ。光の差さない視界は色彩も薄く、面白味がない。
チーン、と高い音が鳴って、青年ははっと我に返った。レンジから弁当を取り出し、殺風景な部屋の中央に置かれたテーブルに向かう。
味気ない食事を始めた彼が、マナーモードにしたままのスマートフォンの通知に気がつくまで、後数分。