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9.窮鼠猫を噛むけど、猫も追い詰められたら噛み返すから結局は猫の方が強いよね

昔の水没して戻ってこなかったアカウントの作品を読み直したんですけど、なんか今の自分より1話ごとの文章量が多くて、戦闘描写がしっかりしてた気がします。



 ムスキルくんの覚醒が発覚してから一夜明けて、早速いつもゴブリンを倒す森の奥地、オーク達の縄張り付近まで来た。


 遠出なので、もちろん食料も持ってきた。

 まぁ荷物が重くて途中からは念動力で浮かせて移動することを思いつくまでに足の疲労感がだいぶ溜まってしまったのだけど。



「歩いて半日かかった………」



 まだ空が白み始めたくらいの時間帯に街を出たのに、すでに太陽が頭の真上に来ている。

 時間は有限、食料も有限だ。今回は3日分の食料しか持ってきてない。

 まぁ荷物は邪魔になるので、適当な木陰にでも隠して早速のオークを探そう。



ガサガサッ!



 茂みからオークがとびだしてきた!

 わぁお。探す前に向こうから来てくれるなんて、なんというおもてなしの心。

 余計なお節介だね。



「ブルッヒィィィ!!!」


「うぉあ!!?」



 ボクを視認した途端大声を上げて手に持った丸太みたいに太い、というか実際に丸太から作ったであろう棍棒を振り抜いてきた。

 驚きつつも、ちゃんと今回の為に新しく頑丈に編んできた糸で棍棒を受け止める。


 自分が操作しているものだからわかる糸が撓む(たわむ)感覚。


 糸は今ボクが出せる全力で押し出したはずなのに、威力が拮抗して互いに弾かれた。

 咄嗟の一撃で仕留めきれなかったとはいえ、なんとか一撃を受け切ることはできた。



「ブピィ………」



 オークの方はボクみたいな成長不良のチビに攻撃を受け止められたことによほど驚いたのか不思議そうな顔をしている。



「本当に豚の顔なのになんで表情がこんなにわかるんだろうね」



 気がつくと考えていることがそのまま口に出ていた。取り留めないことを口にして自分の緊張を解そうとするのはきっとボクの無意識のクセなんだろう。

 正直、怖い。そりゃ自分の1.5倍も身長があって、それに合わせてガタイもすごくデカい。


 スキルがなければどんな武術家でもタイマンで勝つのは不可能だと思えるほどの体重差だってある。


 そんな相手に普段は不意打ちで暗殺まがいのことしかしてないボクが逆に不意打ちされた。


 腰が抜けてないのを、オークの棍棒を咄嗟に糸で受けたことを、おしっこちびってないことを褒めちぎりたい。


 いやごめん、ちょっと出ちゃった。染みになる前に洗ってしまいたいけど、逃がしてくれなさそう。と言うか荷物置いたまま逃げられないっての。



「ブルァアア!」


「うっ!」



 少しの間睨み合ってた均衡はオークが殴りかかってきたことでオークが攻め、ボクが受けの構図になった。

 オーク×クロンとか字面が最悪すぎる。


 ただ、オークは馬鹿みたいにデカい丸太から作った棍棒を持ってるせいで振り上げるモーションが挟まってて次どっちから攻撃が来るのかがわかるので、1番最初の不意打ちほど緊張せずに糸で相殺すること自体はできている。


 今回オーク用に持ってきた念動力の使用を前提とした落下撲殺武器を落とすと下手したらボクがペシャンコになっちゃうのでなんとか動きを止めたいんだけどな。



「ブルゥ………ブルゥ………」



 そう思いながら数分、糸での防御に徹していたら段々とオークの動きが悪くなってきた。

 息切れもしている。


 そりゃあんなデカい丸太みたいな棍棒を振り回してたらオークの怪力があっても疲れるか。


 オークの攻撃から勢いはどんどんなくなっていき、糸が撓む感覚も無くなってきた。これは好機。



「落下兵器バージョン2!金属の恐ろしさを知れー!」



 今回持ってきたのはスラム街の一角、処分に困る金属製品ばかり捨てられている所から拝借してきた大体30kgの鉄のスクラップ達を念動力と糸魔法の合わせ技で無理やり押し固めた鉄屑くん1号だ。

 2号はまだ居ない。


 攻撃を受けた後、後ろに走って少し距離を空けるてから、鉄屑くん1号をオークの頭に落とす。

 いくら大きくて頑丈だろうが、所詮2mちょっとの身長の人型の生物だ。ドラゴンみたいに最低でも30mみたいなことはないし、硬い鱗があるわけでもない。

 それなら、30Kgの鉄をいきなり頭にぶつけられて無事でいられるわけがない。


 『ガァン!!!』という大きな音させたあと、地面に落ちてもう一度音を立たせた鉄屑くん1号。

 そしてその音と一緒に体を『ドサリ』と倒したオーク。

 左側頭部に当たったのか、その部分がベッコリと陥没している。

 目、口、鼻からは血を流して、体は時折痙攣している。

 とても生きているとは思えないが、首を持ってきた剣を切断する。

 ボクは剣術のスキルを持ってないから、ほんとに最後の最後、とどめを刺す用に持ってきたやつだ。



「か、勝ったぁ………」



 首を落として絶命を確認したら、足から力が抜けて尻餅をついてしまった。

 今まで正面戦闘なんて碌な経験がないボクが初めて戦うモンスターと真っ向からぶつかって勝った。



「はは、あははは!ダメだ!気疲れと達成感で今日はもう何もやる気が起きないから、寝られる場所を探して今日は寝る!」



 戦った後の高揚感が抜けずに変にハイテンションな中、負けたらどうなるか分かり切ってたからこその緊張からの解放で今日はもう不意打ちとか関係なく戦意が湧かないことを実感した。


 こんなのをムスキルくん改め《チートオブチート》くん無しで何体も狩る予定だったんだから、見通しの甘さがひどいや。



「とりあえず、川か何かないかな?水浴びしたい」



 初めての死闘の緊張で出た汗と、ビビって出ちゃったおしっこのせいで気持ち悪いからね。最近買ったばっかりの新しい下着に染みが出来てないといいなぁ………。



◆◇◇◇◆



 オークはその中にオスしか生まれません

 どうやって繁殖してるかなんて、薄い本をたくさん読んでる読者の皆さんならお分かりですよね?

 そんなオークはゴブリンと同程度の繁殖力を持つので、ギルドはお金で釣って沢山狩ってもらおうとしているのです

 まぁそのせいで功を焦った冒険者が巣穴にお持ち帰りされることも稀によくあるみたいですけどね



◆◇◇◇◆

次回で10.です。次話投稿以降は毎週土曜日のAM00:00に予約投稿になります。

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