38.社会に出ると、ほんとに思ってたより世間は狭い
ご飯をデザートまで完食した後、それぞれがジュースとお酒を飲みながら食休みをしているが、気まずいしボクの方からから話を切り出す。
なんか話したそうにしてたしね。
「ボクの話は参考にならなかったわけだけど、まだボクに言いたいこととか何がある?ありそうな顔はしてるけど」
「表情を読まれたか、これまでそれなりに仏頂面だと言われて来たんだが………まぁいいか。そうだな、できれば俺もパーティに入れて欲しいと考えている。クロン達にももちろんメリットがある話だとは思うぞ」
「ボクにメリットがあるかはともかくとして、何でボクについて来たいのさ。正直に言うけど、ボクと一緒にいてもSランクに速くたどり着くとか、ないと思うけど」
「いや、それがそうとも言い切れない。そもそもAランクである俺のスキルを用いた攻撃は全力の出力だと大抵の相手は一瞬で粉微塵だ」
「まぁそうだろうね」
「そして同格相手でも、長時間戦い続けるような膠着状態になることは少ない。格上相手は言うまでもないな。その点Sランクのクロンなら、俺の全力の出力をいくら受けようが微風のようなものだろう?同じ訓練でもカカシ相手と生き物相手だとスキルレベルの上がりやすさが違うと言う話も聞くくらいだ」
「だからボクと一緒に行動したいってことか。訓練相手とは言っても、ベルコードの攻撃を防いでるだけでいいんだね?そこは理解した。で、ボクのメリットってのは?」
「順番に説明するぞ。まず1つ目は俺とパーティを組めば高難易度のクエストを受注して早々にランクを上げられることだな」
ベルコードの言う通り、ボク1人ではまだ見習い冒険者レベルの依頼しか受けることができない。
しかしベルコードというギルドに“Aランク”と正式に認められている冒険者と行動を共にすることでランクの上昇がスムーズになる。
これは結構大きなことで、付随してお金も稼ぎやすくなる。
センチ君とラシー姐さんの2人を待つ間に、少しでもお金を貯められるのはデカい。
「2つ目は知識だな。クロンは仲間の2人と旅をすると言っていただろう?俺はそれなりに各地の名産品や観光名所に明るいし、必需品の買い足しや料理番なんかも出来るぞ」
まぁ確かにボクは冒険者として2年くらい活動してたとはいえ旅や野宿なんてほとんどしてこなかったし、料理はからっきしだ。
いや料理はスキルで干渉すればできるようにはなるだろうけど………あ、出来るようになった。
いやいやそうじゃなくて、雑務もこなしてくれるなら確かにありがたい。
ボクは基本的に大雑把で、必要だと思ったものを大量に買い込んで、個数なんて気にせず使って、必要な時に在庫がなくなる様な人間だ。
ラシー姐さんも得意には思えないし、仲間内なのにセンチ君1人に押し付けるのもアレだから、やってくれる人がもう1人いた方がありがたいのはそうだ。
「最後に俺のコネが使えることだな。Aランクにもなればそれなりに貴族連中からの依頼もある。結構便宜を図ってもらえる立場なんだ。あと、クロンは強いがその見た目だし他2人も冒険者登録はまだだって話だからな。別の街に移動するたびに絡まれて、クロンがボコボコにするのもアレだろう?そう言った場を俺に任せてくれればいい」
これも確かに言う通り。
待ってるセンチ君とラシー姐さんも含めてボク達のパーティって実際はともかく見た目は弱そうだし、実績も全くないと言っていい。
そうなると酔っ払いと粗野な者が大半を占める冒険者に各地で絡まれることは想像に難くない。
その対処を暴力ではなく、顔の広さと知名度とランクでベルコードがカバーしてくれるってのは確かにありがたい話だ。
センチ君はともかく、ボクとラシー姐さんって結構やりすぎちゃうことも多いから、衛兵のお世話になるかもしれないし、回避できるって言うならそれに越したことはない。
「どうだろうか?俺はそれなりに役に立てるつもりだが、この話を考えてはくれないか?」
「まぁ確かにメリットが沢山あるのはわかったよ。この街にいる間は付き合うし、お世話になる。でも旅に同行するかどうかは他2人が来てから決めないと」
「それはそうだな、無理なことを迫って悪かったな」
「いいよそれくらい」
とりあえず一旦は2人を待つ間ベルコードと行動を共にすることになった。
明日からはベルコードと一緒に冒険者ギルドでCランク向けの依頼を受けることができる。
まぁひとまずはDランク向けのオーク討伐を沢山こなしてさっさとランクを上げるところからだね。
◆◇◇◇◆
実は既存キャラ達の外見設定はほぼ決まってません。
クロンも同い年の同性と比べてかなりの低身長であるということくらいしか決まってませんしね。
まぁ名前クロンだし、クロをとって黒髪黒目でいっか。
はい、決まりです。
イメージとしてはラシー姐さんは少しピンクに近い赤、センチ君は金、ベルコードは赤褐色。
これが作者の髪色のイメージですが、これも本決定ではなくてそんな感じのイメージで描いてるだけです。
◆◇◇◇◆
ベルコードと行動を共にして早1週間。
ベルコードの助力も多々あってすでにランクはD、オークの討伐も多々やっているから、Cランクへの昇格のために盗賊が現れるのを待っている状況だ。
お金稼ぎも順調で、依頼が終わった後にベルコードの訓練に小一時間付き合っても夕食まで少し時間が空く程度には余裕のある生活が送れている。
孤児院を卒院してからの2年とは暮らしぶりが段違いで、思えば前世含めても1番キツかったのはあの2年間だろう。
ベルコードも少しずつ身の上話なんかもしてくれて、どうやら彼は初恋の人にまだ恋焦がれていて、腕を磨きつつ各地で探しているらしい。
その初恋の人の特徴を聞くと、『面倒見は良かったけど何事も大雑把だった』とか『同年代の間では1番小柄なのに筋力も腕っぷしも1番強かった』とか『自分より強い男としか結婚しないと公言して、相手を探すために冒険者になって急に街から消えた』とか、なーんか話を聞く限り少し嫌な予感がしている。
「ちなみに名前は?」
「ああ、ラシーと言ってな。俺は彼女に見合う男になるために各地を旅して力と生活力を身につけたんだ」
はい確定。
これ、ボクの待ってるパーティメンバーの1人がラシー姐さんだってボクから伝えなきゃダメかな?
まぁ知ってて言わなかったってのも文句を言われそうだしなぁ………。
仕方ない、言うか。
「あのさ、そのラシーさんなんだけど」
「どうした?どこかで会ったことがあるのか?」
「いや、今待ってるパーティメンバーの内の1人がそのラシー姐さんなんだよね」
「なに?え?本当か?ほんとに?」
「名前と特徴を聞く限り限りなく間違いないと思う」
「なんと………いや、世間は狭いと言うが、ここまで狭いものなのか………」
「流石にボクもびっくりだよ。で?どうするの、告白とかするの?」
「いや、真正面から戦ってからだな。彼女は自分より強い相手としか結婚しないと公言しているわけだし」
「そうだった。じゃあSランクになりたいってのも………」
「ラシーとの結婚を確実なものにするためだな」
「男を見せるためってことかぁ。じゃあ、ボクとしてはしばらく休んでもお金は他全然余りそうなくらい稼いでるし、どうせ盗賊が出るまでランクも上がらないから、訓練の時間増やしてもいいよ」
「本当か!?いや、正直助かる。こうして近々ラシーとの再会が確実にあると思うと、より一層己を鍛えようと思えるな」
これ、ベルコートは結構ラシー姐さんに重い感情向けてるっぽいな。
流石に今からラシー姐さんが来るまでにSになるのは無理だけど、できるだけ付き合ってあげるかな。




