36.お節介も善意ではあるんだよなぁ
結局、ボクは待つことなくギルドを出てゴブリン狩りをすることにした。
なんか付いてきそうな雰囲気あったし、それなりに強そうなあの人と一緒に、ってなんか迷惑かけてるみたいでやだし、ちゃっちゃと行っちゃおう。
そう思って外壁の門を抜けようとしてたらさっきのゲンコツした方の人が追い付いてきた。
「なぜ先に行ったんだ」
「え、いや普通に初対面の人に待ってろって言われて待つ人います?」
「………そう言われると、確かにその状況なら俺も待たないが」
「でしょう?」
悪い人ではなさそうだからこうして話してるけど、なんでこうもしつこく付いてくるんだろうか。
うーん、気になるし直で聞くか。
「ところで、なんで付いてくるんですか?」
「それはだな、孤児院でも見たことがないし、君はこの街のスラムか、もしくは街の外から来たのだろう?悪いがあまり強そうには見えないから、ゴブリン狩りで失敗しないようにだな………」
「失礼だなぁ」
「第一印象と経験則だな。金の無い“成人した子供”は、報酬に釣られてゴブリンにやられる筆頭だ」
「確かにボクも何度かやられそうになったけど」
「ほらな………ん?何度かゴブリン狩りをしたことあるのか?」
「そりゃ失効したけど、Cランク昇格試験受けたこともありますからね」
「てことはオークも狩れるのか。悪い、余計なお節介だったな」
「そーですね」
こうして話しながら門を抜けてゴブリンがいるだろう森まで来たが、勘違いを正してもまだ付いてくる。
「………あの」
「どうした?」
「なんでまだ付いてくるんですか?」
「逆に聞くが、客観的にみてお前の外見でCランク目前だったけど失効したから再度取得したなんて言う奴の言葉は信じられるか?」
「そりゃ信じないけどさぁ」
「そうだろう?まぁなんだ、それが事実でも嘘でも俺がいればゴブリンに遅れをとることはないからな。事実を証明できるチャンスとでも思ってくれ」
実際に見て僕の実力に嘘がなかったら、付いてくるのは今回限りにすると付け加えるこの男。
面倒だけど、1回だけだと考えればまぁただの心配性を安心させるだけ、報酬が減るわけでも無い。
「そういえば名乗ってなかったな。俺はベルコードだ」
「クロンです」
「あぁ、よろしくな」
◆◇◇◇◆
レベル10のスキルを持っている存在、つまりSランクは老化や寿命というモノからは切り離された存在になります。
また、毒物や外傷なども基本的には死には繋がりません。
しかし同じSランクが生成した毒物やスキルを用いた外傷が致命傷になります。
レベル10スキルを持つ存在とその他の差が大きいのはこのためですね。
◆◇◇◇◆
「妄言ではなかったな、俺もAランクとしてそれなりに腕に自信はあるが、明らかに俺より強い」
ゴブリンを沢山狩っている様子を見てようやく杞憂だったと理解したっぽいベルコードさん。
というかAランクだったのか、まぁ確かにそれなりに強そうではあるけど。
そのAランクのベルコードさんは少し考えるような素振りのあと、またも話題を振ってきた。
「クロン、お前『S』だな?」
「セクハラですか?」
「む、いやそう言う意味ではなくてだな………」
「ふふ、冗談です。………まぁ、はい。ボクはレベル10のスキルを持ってますよ」
「やはりそうか!」
大きな声で少しびっくりした。
ただ気持ちも分かるんだよ、Sランクなんて人生でそうお目に掛かれるモノじゃないからね。
そしてベルコードはまた少し考えるような素振りの後にボクに向き直って頭を下げてきた。
「折り入って頼みたいことあるんだが、このあと付き合って貰えないだろうか?」
「何それ告白ですか?」
「はは、クロンは冗談の好きなヤツだな。いや何、Sランクに出会うのは初めてでな。今後の参考になる話でも聞けないかと思ってな」
「奢りなら構いませんよ」
「交渉成立だな、美味い店を知っている」
2度目の冗談は軽く躱されてしまった。
まぁご飯奢ってくれるらしいので、話すくらいいいだろう。
ボクのはあんまり参考にならないと思うけどね。
ベルコードにその気がないとはいえ、クロンが完全にナンパに引っかかってますねw




