35.新生活の始まりはいつだってドキドキ
鉱山から約1分、ボクはラーク伯爵領都の門前にいた。
別に近かったわけではなくて、単純にボクがスキルを使ってめちゃくちゃ速く移動しただけだ。
「前来たときは檻の中だったし、こうしてみると立派な街だなぁ」
大きな外壁で囲まれていて、それだけ大きな街であることも窺える。
旅人や冒険者、行商人なんかが盛んに行き来している。
門番さんに通門税(門を通る時にかかる税金)を払って街に入る。
「まぁ、オタイオの領都とそんな変わらないね」
所属してる国も一緒だし、ラーク領とオタイオ領は隣同士らしいし当然だね。
さて、街に着いたからまずは寝床の確保だ。
通りすがりの人に宿の場所を聞いたところ、ギルドに行けと言われた。
確かにギルドならいい感じに宿も紹介してくれそうだ。
ギルドは街の中心街にあるらしく、丁寧に建物の特長まで教えてくれた。
情報料は銅貨10枚って言われた。
で、いざギルドに来てみれば、まだ朝と言えなくもないくらいの時間なのにお酒臭かった。
………いや、よく考えればオタイオの街でも似た感じだった気がする。
気にしないことにしてカウンターに行ってギルド証を発行してもらう。
「あの、諸事情があって活動できてなかったんですけど、復帰とかって「できませんね」………わ、わかりました。じゃあ登録お願いします」
受付のお姉さんに食い気味に否定されちゃった。
面倒なことを言うなオーラがめっちゃ出てるけど、こっちはやってもらわないと困る。
2〜3年前にやった登録と同じ手続きをしてもらって、Gランクのギルド証を受け取った。
「クエストはあっちに貼ってあって、受付はここ、素材買取はあっち。他に質問は?」
「あ、無いです」
捲し立てるように最低限のことを伝えて面倒臭そうに手元の書類に目線を移す受付のお姉さん。
なんかちょっと顔色悪いし、機嫌も悪くてお疲れみたいなので今日のところは退散………って宿の場所聞いて無いじゃん。
戻って受付のお姉さんに聞くと、これまた面倒臭そうな顔をしながらも、しっかり値段ごとのおすすめの宿まで教えてくれた。
◆◇◇◇◆
主人公は収納箱スキルの中にお金を隠し持ってました。
普通は奴隷になった時に没収されますが《ーーーーーLv.10》のスキルで増えてる分から空の箱を出して、没収を免れてます。
収納箱は出せる数が[スキルレベル×1個]と決まってますから、裏技ですね。
◆◇◇◇◆
宿の部屋だけ取ってすぐにギルドに戻ってとりあえずあった依頼を適当に受けることにした。
「えーっと、下水道掃除、配達、配達、配達、薬草採取、ゴブリン討伐か」
朝の依頼張り出しからだいぶ時間が経っているし、残ってる依頼なんてこんなものかと思いつつ、無難にゴブリン狩りに行こうとしたら酔っ払いの中堅っぽい冒険者がこっちを見てフラフラと歩いてきて話しかけてきた。
「よぉ、お前新人かぁ?ゴブリンとか行くならやめとけやめとけ、1人やったら危ねぇし小遣いやるから酌しろ酌ぅ」
心配されてるんだか絡まれてるんだか判断に困るなぁ、なんて思ってたら横からまた別の冒険者が現れてゲンコツで黙らせた。
「すまないな、悪いやつじゃないんだが、昨日結構稼いだからって朝からベロベロに酔ってるバカが絡んじまって」
「あー、状況はわかったしボクは大丈夫だけど………その人大丈夫?」
「む?」
ゲンコツされた人は目を回していて、口から泡を吹いている。
悪酔いと頭への強い衝撃で泡を吹いてるみたいだけど、気管が詰まってそうだ。
「しょうがない奴だ。すまないがちょっと待っててくれるか?こいつを医務室に連れて行ってくる」
それだけ言い残して、ガタイのいい横から割って入ってきた方の冒険者はゲンコツされた方の冒険者をずるずると引きずって行った。
いや、なんか待ってるように言われたけど、これ待たなきゃダメ?




