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1.世の中ね、顔かお金かなのよ

読んでた作品の続きが数年書かれず、作者様は別の作品を描き始めたので、似たようなのを書いて自給自足をしたい!



 ボク、クロンは異世界からの転生者だ。


 この世界はありきたりでもはやアニメや漫画で見慣れるほど見たいわゆるナーロッパ(中世ヨーロッパ)………よりは進んだ技術を持ってる世界で、魔法を使うクリーンな蒸気機関車も普通に走ってるし、護身グッズとして単発式の拳銃がそこらの武器屋で売ってるような世界だ。

 まぁ、武器スキルやら魔法スキルやらがあって、一般兵士レベルのスキル熟練度があれば拳銃持ちでも危なげなく制圧できるってんだから、スタンガンとか催涙スプレーみたいな護身程度にしか使われてないけどね。


 それでも、言ってしまえばそれだけ。

 流石に現代日本ほど進んではおらず、そこから転生してきたボクからすれば貧富の差も歴然の王侯貴族が支配する封建制の社会構造。

 上下水道などの管理も甘くて多くの人々がいまだに井戸から水を引きそれを自宅まで運んで生きている。

 単純な科学技術を日本に例えると、大正後期から昭和初期みたいな感じだろうか。


 この世界にはスキルという異能の力が存在し、個人の強さが飛躍的に伸びる。

 美人であるなどの共通認識がこの世界でも通じるエルフとか、モフモフ可愛くてカッコいい獣人とかが闊歩している。

 ファンタジーな種族やら野生動物よりも恐ろしい魔物やらが跳梁跋扈する中で知性ありし人々は力を合わせて生きている。

 文字通りの一騎当千が10万人規模の都市なら10人はいるような世界観であり、ボクはその吹き飛ばされる方の1/1000だと自覚している。


 それでも、誰もが何かしらに憧れるようにボクにも憧れがあった。

 作中最強と呼ばれるキャラクター達。

 ボクはどうしてもその存在に惹かれた。

 無限の距離を発生させて攻撃が当たらない白髪の目隠し男。

 ハゲるまで鍛えてワンパンで全てを解決できるようになったハゲ。

 金ピカ鎧で不遜な態度がかっこいい、叙事記を書いた王様をモデルにした英雄王。

 色んなチートを得て、あるいは己の努力のみで転生した後の世界で活躍する、なろう主人公達。


 超常の能力がある世界での最強という称号。

 ボクはそんなものに憧れていた。

 でもそんなの現実の世界には存在しない。

 ボクの憧れは、決して手の届かない理想の自分だった。

 だからこの世界に転生して初めてスキルを目にした時に、世界の全てが輝いて見えたんだ。


 まぁ、ボクの生まれは生まれてすぐ孤児院の前に捨てられてた捨て子の孤児なんですけどね。


 顔も頭も運動も並程度。

 孤児の出自だからこの世界的に考えると、多少算数が得意な程度のボクには事務系の仕事をできるような信用もない。


 スキルが存在する世界なのに神にも会わずチートもなし。

 と言うか生まれ持ったスキルが何もなかった。


 この世界では成人した時に大体の人がスキルの鑑定を受ける。

 封建制とはいえ、この世界の住民たちも馬鹿なわけではなく、生まれが貧困でもスキルの有無や有用性次第でいくらでもお金を得ることができる制度自体は存在しているんだ。


………ボクにはスキルがなかったので完全に関係ないことだね。

 はぁ。


 前世では普通の社会人で、別に技術職とかではなかったので異世界で役立つ技術ももちろん知らない。

 取り柄といえば、性別的特徴のアレがデカいってことくらいだな。


 そんなナイナイ尽くしのボクが孤児院を卒院してから2年。


 どうにか犯罪に手を染めずに生きながらうことができたのは、異世界定番の国の垣根を超えた世界最大の組織である『ギルド』が当然のように存在していて、誰でも『ギルド』に所属して周辺の魔物の間引きやら、お使いやらでお金を稼ぐことができたからだ。


 当然、簡単な依頼ほど収入も低くなる。

 めちゃくちゃ貧弱で15歳にもなってゴブリン相手にすら下手したらボコボコにされるくらいに弱いボクはモンスター討伐で稼ぐことができなくて、街中での雑用依頼ばかりしているから『小遣い稼ぎ』なんて呼ばれてるのが現状なんですけどね。


 そんな世間の人たちから見たら『小遣い稼ぎ』な収入で銅貨1枚(¥100くらい)を毎日コツコツ貯金していたのも、この世界ではスキルを買うことができるからだ。


 スキルは生まれ持つこともあるけど、基本的にはこの世界の誰もが『スキルオーブ』と呼ばれる使うとスキルを増やすことのできる直径15cmくらいの水晶玉みたいなもので増やすことを当たり前にして生きている。


 凄いものになると、それこそ国家が数ヶ国単位で動いて買おうとするようなものまであるらしい。

 

 この間も国家規模のオークションで、ボクの今住んでいる国が金貨600万枚(約6000億円)で『水魔法Lv.Max』のスキルを競り落としたとか。


 レベルがMax(Lv.10)のスキルオーブはそれ1つで世界に英雄みたいな強さの人を一人作れてしまうわけだから、当然高値で取引される。


 つまりこの世界は金さえあればスキルを手に入れられる。

 弱くても金さえあれば強くなれる。

 弱く金のないものは弱いまま。


 ボクが2年も極貧生活をしてまで金を貯めたのはスキルが欲しかったからっていうのは、ここまで読んでくれてる皆々様ならわかってくれるだろう。


 せっかく原理不能のオカルト能力がある世界に転生したのに、何も使わないまま、使えないまま死んでいくなんて絶対に嫌だもんね。


 この街、オタイオ辺境伯領都のギルド支部では『小遣い稼ぎ』なんて不名誉なあだ名で呼ばれてるけど、今日で返上だ。




◆◇◇◇◆



【ギルド】

 『ギルド』はたくさんの利権を持った組織です。

 例えばスキルオーブの販売はその全てを『ギルド』が持っていますし、ダンジョンに関する利権、戦争における約定と勝敗判断、世界共通で使用されている貨幣の発行、すべての国で共通して適応される世界共通法の遵守と整備などなど、その他にも国家を超えた権益や権限を持った巨大な組織です。

 その意思決定は9人の最高幹部が行なっていますが、そのさらに上に何者かが君臨していると言う噂があります。



◆◇◇◇◆




 さて、やってきましたオーブ屋さん。


 ボクが泊まっている街1番の安宿とギルドとの間にあるこの店。

 毎日この店の前を通るたび、世界最強になって好き放題に生きる自分を妄想して1日頑張ると言うルーティーンをしていた。

 そのせいで一度も入ったことがないのに、店主のオジさんとは顔見知りになってしまった。

 オジさんは髭面で、その上に割と強面だけど本当はただの気のいいオジさんだ。

 時々お菓子もくれる。



「ようお前か、ようやく買えるくらい金溜まったんか?」


「うん。じゃあこれ、銀貨10枚()ね」


「そうかそうか、よかったな………っておい、10枚分って。お前これ全部銅貨(・・)じゃねぇか。1,000枚数えるのメンドイからちゃんと換金してこいよ」


「いやいや、だって換金にも手数料いるからね」



 交換する枚数によって手数料って変わるから、1,000枚も交換すると交換分の1割が取られてしまう。


 そうなったらスキルが買えないからね。



「はぁ………今日はもういいけどよ、今回限りにしろよ」


「ありがとうオジさん、次はちゃんと銀貨で持ってくるよ」


「俺はまだ34だ。オジさんじゃねぇ」



 34は十分おじさんだろって言葉はなんとか飲み込んだ。



「で、どのスキルを買うんだ?」



 オジさんは世間話を適当なところで切り上げて本題に入った。

 このあとスキルを使って早速初めての討伐任務に行こうと思ってるから、ボクもその流れに乗る。



「えっとこれと………あったあった、これの2つで迷っててね」


「はぁ?こんなのほんとに買うのか?銀貨10枚のカッスいスキルにしたって、もっと使い勝手がいいスキルだってあるだろ?どっちもまともに使い道が無ぇことで有名な奴じゃねえか」


「いやいや、知られてないだけでこの2つは結構強いと思うんだよね」


「だが確証じゃねぇんだろ?これで失敗だったら残飯の方がマシかもしれねぇカッスい飯と、廃墟と見分けがつかねぇボッロい宿に泊まって我慢して貯めた金だろ?ドブに捨てることになるかもしれねぇんだぞ?」



 すごい早口で捲し立てるようにボクを諭すような雰囲気を出してるスキル屋のオジさん。


 でも他のスキルよりも伸び代を感じるっていうのは事実なのでこっちも譲る気はない。


「まぁ見ててよ」


 啖呵切ってダメだったら恥ずかしいけど、その時はその時だ。




◆◇◇◇◆



【スキル屋のオジさん】

 スキル屋のオジさんがクロン君を気にかける理由………。なにかあるかも?ちなみにオジさんの股間のアレはめっちゃデカいです。



◆◇◇◇◆



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