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第71話 仮面をつけた道化師

作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。

多分、内容とは関係ないと思います。


 陳が道具入れから両腕で抱えて持ってきたのは、映画「ロボコップ」の主役

のマーフィーが被っていた様な、眼や鼻の下まで隠れるヘルメット状の三個の

物体であった。顎まで保護されるフルフェイス型とは違い口元部分は何も無い。

一応、耳部分も隠れる様な形状にはなっている。そして色は、この基地では毎

度お馴染みの真っ白である。この月基地には、色の付いた装備や備品は無いの

だろうか?


「どうぞ。多分、これ・・・ ですかね?」|(広東語)


 陳は、そう言うと両腕で抱えてきた”被り物”かヘルメットのような物体を

雄二とジムの二人にそれぞれ一個ずつ渡した。彼が戻ってきた頃には、ジム

は身体(強かに打ち付けた頭部)の痛みが引いたのか、雄二の隣で立って陳

を待っていた。今しがた手渡された物体、それが持ってこられるまでの経緯、

雄二がジムに耳打ちしていた。ふんふん、そうなのか、それはすまなかった

手間を掛けた、と陳に礼を言った。


 陳が持ってきたその物体は、良く観察してみるとオートバイ乗りや戦闘機

のパイロットが被るような物に比べて、全体的に厚みが無くてとても軽い。

フェンシングの試合の時に使う防具用マスクの口元部分が無い形状みたいで、

その上それよりもかなり脆そうで、とても弱々しく見える。

 映画で使う小道具もしくは仮装用の衣装か、日本の夏祭りや縁日の出店で

売っているお面に近い造りにも見えた。

 手で触っても、アルミニウムやマグネシウムまたはチタニウム等の軽量・

高硬度合金や、炭素繊維強化合成樹脂(CFRP)等で造られているような頑丈

で顔面や頭部を保護できるような構造には、とてもではないが感じられない。


 内側にも頭部を保護する為の緩衝材の類いが一切無いのである。なんだか

とてもペラペラで、悪く言えば安っぽくて簡素な(ちゃちな)造りなのだ。

 陳は、道具入れの中を隅から隅まで探したのだが、頭部に被れそうな構造

をした物体はこれだけしか見つけられなかったのだ。取り敢えずそれっぽい

物をと思い手に取ってみたが、これでは頭部や顔面の保護用の防具には成ら

ないのでは? と疑問を抱いていた。

 だから微妙な表情の顔になって戻ってきたのである。


「あぁ、それだ。そんなので良いんだろ? 取り敢えず何でも構わないから

 頭に被れば気持ちが落ち着くか楽になる、違うのか?

  今後は、それを被って訓練をやることを許可する。但し、脳味噌が少し

 足りない間抜けなお前らの頭の大きさに合うかどうかまでは、知らんぞ」

 |(英語)


 サンダー教官は、陳が抱えて持ってきたその被り物のような物体を、ほん

のちらりと見て、確認してからそう言った。


「ほら、願い事を叶えてやったんだから、これからは俺を崇めろよ。

 さぁ、さっさと玉乗りの訓練をやりやがれ、道化師(クラウン)ども!

 俺様をお前らの芸で存分に楽しませてみせろ!」|(英語)

 

 更に続けていつものニヤけた顔をして、仁王立ちの姿で三人を罵った。

彼らを罵った直ぐ後に、ヘルメットの様な物を抱えた三人に向かい、教官は

昔を懐かしむような表情で語りだした。ほんの少し前に、三人を茶化し罵っ

ていた時とは全くの別人の様な顔付きだ。


「何十年も前なので、もはや名前すら忘れてしまったが、ここに連れてこら

 れた訓練生らが万霊節の前夜祭の宴を開催するとかで、その為の仮装用に

 拵えたんじゃなかったかな? 多分アメリカの漫画のスーパー・ヒーロー

 のバットマンかキャプテン・アメリカだと思う。ただ生憎、俺はそう云う

 のには疎くて詳しくは無いんでな。もしかすると、ジャック・オー・ラン

 タンかプロレスラーの覆面(マスク)なのかもしれん。

  ジャクソン、お前は生まれも育ちもアメリカだ、そんなのは良く知って

 いるんじゃないのか?」|(英語)


 先程、陳から渡されたその物体を胸の前に抱えて、キョトンとしている

ジムに、サンダー教官が聞いてきた。

 うーん、そうだな、聞かれたんだから一応は良く見てみるか、と抱えた

その被り物?を目の前にまで持ち上げて、クルクルとまわして色んな方向

からじっくりと観察しだした。


「これはアイアンマンか? でもこれは目が空いていないし、あれは口元

 は空いてないよな? そう言えばロボコップにも見えるし、額に「A」

 の印が付いてればキャプテン・アメリカだし、ザ・フラッシュにも見え

 なくもない。バットマンにしては、頭の上に二つの耳が無いな。仮面を

 被った漫画のスーパー・ヒーローなんて沢山いるからな。それに、覆面

 レスラーなんてメキシコには星の数ほど居るだろう、正直俺にも判らん。


 せめて色が付いていれば良いんだが、真っ白だからな・・・

  ってか、これ万霊節用の衣装なのかよ? こんなんで頭や顔の保護に

 なるのか?」|(英語)


はぁ? これ仮装用の衣装なのかよ、マイケル、お前さん選ぶのが適当すぎ

ないか? そんな物を頭に被っても防具に成るのかよ? と色々と思う所は

ある。まぁ、それはこの際は置いておくか・・・ 折角、あいつが何とか探

してきてくれたんだ、と前向きに考えることにした。

 一方の教官はといえば・・・


「何だ、お前にも判らんのか。まぁ俺が被るんじゃないから別に何でも良い

 んだけどな。それに被っても被らなくても、変わらないぞ?」

 |(英語)


 と呟き、白けて落胆したような顔をしている。教官も一体なんの仮面なの

かを知りたかったのかもしれない。ひょっとするとこの三人なら解るかも?

とでも思っていたのか。


「えーっと、すいません、万霊節?の前夜祭、ジムさんそれは何ですか?

 キリスト教の伝統的な、お祭りか何かなんですかね?」|(日本語)


 雄二は、教官とジムのやり取りの中に聞き慣れない単語があって、少し興

味が湧いたので手を挙げてその会話に割って入り、間の抜けた調子で彼に

聞いていた。

 キリスト教の何だっけ、イースターなのかな? いや違うな、確かあれは

復活祭ですよね。それとも感謝祭だったのかな?

 雄二の頭の上には、大きな疑問符の「?」が出ていて頭を傾げている。


「ん? なんだホンダは万霊節を知らないのか? 日本ではやらんのか?

 諸聖人の日の前夜祭、All Hallow's Eveningを縮めてハロウィンだ。

 食用では無い専用の大きなカボチャを顔みたいにくり抜いて中に蝋燭を入

 れ灯して飾ったり、幽霊や魔女の仮装をした子供らが近所の家を歩き回っ

 て、”トリック・オア・トリート”と言っては大人にお菓子を強請る祭だ。


  毎年11月1日の本来の”諸聖人の日”は、カトリック教では全ての聖人

 や殉教者に祈りを捧げる神聖な儀式だった。その次の日の万霊節、死者の

 日とも呼ばれるが、それは死んだ者の霊魂が煉獄から天国に早く行ける様

 にと祈る為、北欧に古くからあった行事だったらしい。だが今のUSでは、

 前夜祭のハロウィンだけが、何だかよく判らん単なる仮装行列大会に成り

 果ててしまっているな」|(英語)


 ジムは、被り物を眺め回すのを止めて、雄二に簡単に万霊節について説明を

してやった。

 陸軍に入隊して間もない訓練兵なのに意外と博識だな、とまた陳が妙に感心

している。いや、それなりの階級の軍人は文武両道でないと駄目なのかな?

ジムは戦闘ヘリのパイロット志望だと聞いているし、専門知識以外の一般教養

も意外と豊富なのかな? 教官だって人に教える立ち場だ、それなりの知識と

教養は持ち合わせておかないと、訓練生らに示しがつかないし舐められるな、

と一人で納得して頷いていた。


「あぁ、なんだハロウィンの事でしたか! それなら、結構前から日本でも

 やってますし、その時期になるとカボチャの絵柄の描かれたお菓子なども

 売ってますよ。本当はそんな意味がある神聖な行事だったんですか、全然

 知りませんでした。

  確かに、今はいい歳をした大人が仮装をして街で騒ぐだけの変なイベント

 に成ってしまってますよね。本来の意味だと、日本の夏のお盆みたいなモノ

 ですかね」|(日本語)


 ふむふむ、なるほど勉強にるなぁ、と雄二はジムの説明を聞いて胸の前で腕

を組み一人で首肯している。

 一方のジムは、何だ知ってるのかよ... ハロウィンの事だ、とだけ言えば

良かった、長々と説明して知識自慢をした厭味な奴みたいじゃねーか、と少し

不満げな顔である。

 そのやり取りの後、教官がまた昔を懐かしむ様な表情で、先程の続きを話し

だした。


「名前は覚えていないが、アイツは器用な奴だったな。映画の都ハリウッドで

 小道具(プロップ)特撮用の模型(ミニチュア)か何かを造る仕事をやっていた、と言ってたかな。

  細部までを再現する時間か技量か材料が足り無かったのか、それとも詳細

 な資料が無くて、うろ覚えで造ったのか、今となってはもう判らん。

  そうか、まだ残っていたんだな。後で廃品利用でもしようと思い廃棄処理

 せずに置いていたんだろう。お前らが懇願する迄は、すっかり忘れていた」

 |(英語)


 思い出を語る教官は、そう言えばアイツは巨人兵の実機が置いている格納庫

に行き、機械いじり担当のカーペンター兄弟二人に頼み込んで、何かの廃材を

貰ってきては、しばしば被り物造りに熱心に取り組んでいたな、と昔の記憶を

呼び起こしていた。


「それにな、被っても被らなくても変わらない、とさっきも言っただろう。

 ここでは頭を保護する必要が無い、だからヘルメットを被る必要が無い。

 被る意味が無い。理解したか? 物わかりの悪い奴らだな。

  お前達の気持ちが落ち着くなら、それでも被れ。まぁサーカスの道化師

 には仮面はお似合いだろう。

  名前は忘れたが、中国には仮面を一瞬にして変える芸事があるそうだな、

 それみたいだな、違うかチェン?」|(英語)


 陳はその言葉を聞いて、なんだそうだったのか・・・ と落胆し項垂れた。

叩頭(こうとう)してまで懇願して損をしたと思ったが、これはこれで何か正義の味方の

スーパー・ヒーローみたいで格好が良いな、と手に抱えた被り物を眺めながら

嬉しげに少し顔を綻ばせた。


「そ、そうですか・・・ でも何もないよりは、精神的に多少はマシになる

 かもしれません。仮面を被って変身する正義の味方になったようで気分が

 高揚する・・・かも?

  それと教官の言われたのは、中国に昔からある大道芸の変面と思います。

 よくご存知ですね」|(広東語)


 それにしても中国の古典的な大道芸”変面”まで知っているのか、サンダー

教官の知識量は恐るべし・・・ と陳はまた感心した。

 いや待てよ、この月基地には地球上の色んな国や場所の様々な国籍や人種

や民族の人間が、大昔から沢山拉致されてきたのだろう、だからか・・・ 

陳は少し淋しく哀しくなり、怖くもなった。

 雄二とジムは、変面についての知識が全く無いのか、お前は知ってるか?

いや知らないです、みたいな会話を何気に交わしていた。


「ま、まぁでも、ジムさんが判らないのも仕方がないですよ、アメリカの漫画

 のスーパー・ヒーローは正体を隠すために大体は何か仮面を被ってますから

 ねぇ。俺も、これが何かは判らないです。

  それにしても、結構本格的に出来てますよね。これを造った人は、とても

 器用な人だったんでしょう」|(日本語)


 陳の気持ちなど露知らず、雄二が呑気に言った。それに自分の頭を防御する

安全性よりも、手に持っている被り物の構造のほうが気になる様子だ。


「でも、これバットマンや覆面レスラーのマスクみたいに目の部分に穴がない

 んですけど、被って前が見えるのかな? ロボコップみたいに覗き用の透明

 な部品が目の所に付いている訳でもないですし...

  前から見ただけじゃ解らないですが、ゴジラやウルトラマンの怪獣などの

 着ぐるみの様に、小さい覗き穴が空いているのかな?」|(日本語)


 雄二は、そう言うと早速自分で被ってみようとしている。でも、頭を入れ

ようとしても被れない。こんな被り物で首部分が細いのは普通は前後に分割

する構造なのでは? 昔、レンタルビデオ店で借りて観た仮面ライダーのリメ

イク版(THE FIRSTかな?)は、そんな仮面を被っていたよなぁ。

 それにこの被り物は口元は空いているんだから、何とかやれば被れそうなん

だけど...などと色々と試行錯誤をしている。


「俺は、奴らがそれを被って馬鹿騒ぎをしていた事しか覚えていないな。

  どうやって被るのかまでは知らん。恐らく、被りながら酒を飲んだり食っ

 たりしたいから、口元の部分が空いた形状にしたんだと思う。元の素材は

 この基地にあった余り物だから、伸縮性はそれなりに有るんじゃないか?

  それとなホンダ、前が見えないと言うが、お前は忘れたのか? お前らは

 普段は制限してるが、エックス線に赤外線や紫外線が視えるし、聴覚と嗅覚

 も大幅に強化されているだろ? 丁度良い機会だから、それらも一緒に使う

 訓練にするか?」|(英語)


 え? 訓練の課題が増えちゃった、余計な事を言ってしまったよ、と雄二は

ほんの少し後悔した。でも眼の部分が覆われたエックス・メンのサイクロプス

みたい、いや形状はロボコップかムテキングみたいで格好良いなぁ、と先程の

陳と同じ様に顔が少し綻んでいた。

 ムテキングはローラースケートだけど、俺は玉乗り・・・ ですか。

今まで観たこと無いですよ、大きな玉に乗って颯爽と登場する正義の味方。

あんまり格好は良くないですよね・・・


「あ、被れた! 何だこれ、意外と伸びますね。面白いな、触った感じ薄い

 硬質プラスチックみたいな手触りなんですけど、強く力を加えるとゴムの

 様に伸縮性が出るみたいですね。一体どんな素材で出来ているんだろう?」

 |(日本語)


 そうこうしている内に、カポッという感じで被り物が雄二の頭に被さった。

 何だか凄い小さいけど、目の前には一応は穴が空けられているんですね。

でも、これじゃ殆どまともに前が視えないなぁ、矢張り、教官が言う通りに

エックス線で透視をするか、赤外線と超鋭い聴覚と嗅覚で視界を補完する

べきですよね、と一人で納得した。

 でも、今はどれも使えないんですけど・・・ 試してはみたけど、全く見

えないし、聞こえないし、殆ど匂わない。


「あ、あの教官、もしかして今の俺達の超感覚は制限がかけられてますか?

 これを被ってしまうと、殆ど前が視えないんですけど・・・

 出来れば今直ぐに制限を解除して頂けると、ありがたいんですが・・・

 是非ともお願いします!」|(日本語)


 雄二は申し訳無さそうに、仮面を被った自分のこめかみを右の人差し指で

トントンと突き、教官に再度懇願しだした。

 この被り物には、左右の目の前の部分に、それぞれ格子状に縦に三個、横

は三個の九個だけしか覗き穴がないのである。しかもそれは千枚通しで刺した

程の大変小さい穴だ。

 なんで覗き穴をこんな風にしたんだろう? 被った時の見栄えに拘ったの

かな? でも、そこに拘るよりも、外観の形状をもう少し何とかした方が

格好が良くなったのでは? これ形が質素すぎない? と変な疑問を持った。


「被ったら感覚機能の制限の解除をしてやる。ほら、そっちの二人も

 ボケっと突っ立ってないで、さっさとソレを被って玉乗りをやれよ。

  今は思い出話や昔話をする時間では無いんだぞ?」|(英語)


 その言葉を聞き、思い出話をしだしたのは教官の方じゃなかったか?

と少し不満を持ちつつ、ジムと陳の二人も慌てて被り物を頭に装着した。

 その被り物は、先程雄二が言った通りある一定の力が加わると伸縮性が

出る素材なのか、力任せに無理矢理押し込むとカポッと頭に嵌まる様に被る

ことが出来る。

 ホンダの言う通り、確かにこんな小さな穴じゃ禄に外が視えないな。

あいつのお陰で余計な訓練が増えちまった。いや、そもそもこんな物を被る

事になったのは、マイケルの余計なお節介が原因か? いや、あいつなりの

俺や自分らの頭の心配だろうしなぁ、とジムは不満を持ちつつ困惑していた。

 何やら一人でブツブツと文句を言っている。


「えーっと、先ずは遠赤外線で前を視ると、 うわっ! 気持ち悪い!

 じゃぁエックス線透視に切り替えて・・・ わっ!もっと気持ち悪い!」

 |(広東語)


 被り物を装着した陳は、周りを見渡して吃驚仰天して思わず叫んでいた。

自分が視ているのは、攻撃ヘリの前方監視型赤外線装置(FLIR)の様な

赤外線映像と、病院で骨折した患部を撮影するエックス線での透視映像の

両方が重なっているという事には、全然気が付いていない。自分では切り

替えたつもりでも、両方の画像を同時に重ねて観てしまっているのだ。

 近くにいるジムの顔を観て、化け物でも見たような怯えた顔つきになり、

少し怖気付いている。

 ジムもまた、陳と同じ様に仰天して喚いている。


「おぉ! 久しぶりにやると、確かに気持ち悪いな・・・

 えーっと、俺はエックス線で仮面の外を透視しているのか?

  マイケル、お前の頭蓋骨とその中の脳味噌や目玉なんかが全部視える

 んだが・・・ こっちを見るな、気持ち悪い!」|(英語)


 彼は両手を目の前で振って、陳にこっちに来るな、自分の方に向くな、

と文句を言っている。その上、その振った自分の腕や手の平や指の骨まで

透けて視えて、更に驚き気持ち悪がっていた。


「おぉ! 視える、観える、見える! クッキリはっきりと前に何が有る

 のか解りますね。これは微妙に緑色っぽいから遠赤外線画像かな?

 そうそう、コレですよ、これ!

  前の座学の時は中々上手く出来ませんでしたが、今回は直ぐ視えた!

 あぁ陳さんはそこに居たんですか、所でジムさんは何してるんですか?」

 |(日本語)


 雄二は他の二人と違い、意外とすんなりと赤外線映像視に馴染んで視界が

良好になった事に狂喜乱舞している。

 その様子を見たサンダー教官は、やれやれ全くこいつらは... と呆れた

ような顔をしながら頭を左右に大きく振り、その三人に注意・叱咤をする。


「お前ら早く玉に乗れよ! 端からだと、仮面を被って遊んでるようにしか

 見えんぞ?

  さっきも言ったが、願いは叶えてやったんだから、さっさと俺を崇めて

 玉乗りの訓練をやれ!

  お前らの芸で俺を笑わせろよ。それが道化師(クラウン)だろう」

 |(英語)


 三人は、そう言えばそうだった、とそれぞれ自分の前の白い玉を掴み、

また頑張ってやるか... 痛いのは嫌だけど... 渋々とその上に乗る。

しかしながら、そんなに直ぐに乗れる様に成る訳でも無く・・・


 ゴツン! ずでーん! ゴンッ!


 と三者三様の良い音を訓練場に響かせて、盛大に転げている。


啊喲(アイヨー)! おでこが・・・ 割れる、死ぬ!」|(広東語)


Shit(クソッ)! 尻が割れる・・・ 横にも、割れる!」|(英語)


「あ痛たたっ! あ、頭が割れる・・・ 被り物の意味がない!」

 |(日本語)


 三人は、床の上で倒れそれぞれ痛む箇所を擦りながら、悪態を吐く。

ジムは再び盛大に尻餅をつき、うつ伏せで尻を擦ってのたうち回っている。

雄二と陳の二人は、再度四つん這いの姿勢で落ちて顔面・頭部を強打して、

痛みに耐えかねて床の上を転げ回って被り物の上から頭とおでこを必死に

撫でているが、それこそ何の意味もない行為だ。


「だから何度も言っただろ。被っても被らなくても変わらない、とな。

 お前らは本当に間抜け(stupid)だな・・・」|(英語)


 あの被り物の鼻の所を丸く赤く、目に十字状の星とその上にはアーチ状

の眉毛でも描くか、その方が道化師(クラウン)らしくなって、似合うだろう。 

 両手を腰に当てたサンダー教官は、床でのたうち回る三人を見て呆れて

いるが、いつものニヤけた顔で少し楽しげにそんな事を考えていた。



この物語は創作です。

作者の空想・妄想の塊です。

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