第68話 新しい訓練 その5
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
もう、嫌だ・・・竹馬に乗れって、無茶だよ。俺達はサーカス団員ですか?
数日間は歩行の訓練が続いた。転倒しまくりではあったが、三人はなんとか
歩けるように成ってきていた。歩けるようになると模擬操縦訓練機での機械
巨人兵の訓練は、複雑な事をやるようになってきた。
逆立ちして歩くのは意外と簡単だった。そもそも巨人の構造が上下・左右が
対称で違いが無いので難しくはない。ただ、バク転をやれと教官に言われて
辟易した。無理だ・・・体操選手じゃないし、そもそもそんなに運動が得意
では無いし、それに運動神経が良いとは自分でも思えない。雄二と陳はそんな
考えで、諦め顔が続いていた。
座学の時間に、体操選手の動画や香港映画のカンフーみたいな動画も観せら
れた。教壇の後ろのホワイトボードに、実は動画も映写出来る事に驚いた。
いや別に難しい技術では無いが、今まで本当にホワイトボードみたいな使い方
しかしてこなかったので、三人はてっきりそういう物だと思い込んでいたのだ。
それにしても、こんな事をやれと? いや、自分は無理でも巨人がやるから
出来るのかな? 側転くらいなら出来そうか? でんぐり返しは出来るか?
雄二と陳は、更に頭を抱えていた。
一方、ジムもこれは無理かもしれん・・・と言う及び腰の表情であった。
身体は鍛えて筋肉ムキムキなのであるが、体術(格闘技や球技など)は、殆ど
やってこなかったのである。実は、運動が出来ない筋肉達磨なのである。
見た目がゴツくなれば舐められない、だから喧嘩をしなくてよくなっていた。
だから殴る・蹴るのは上手くない。何か競技やスポーツの為に鍛えたのでは
無くて、鍛えるのが面白くなってそればかりしていたのだ。その内にそれが
職業になってしまい・・・本当に成りたいのはヘリのパイロットだったので、
その為の鍛錬だと割り切ってもいた。そのツケが今頃になって回ってきた気が
した。
雄二は中学生の頃、体育の授業でほんの少しだけ柔道をやった経験はある。
でも受け身の練習や、簡単な投技を習っただけである、そんなもの何の役にも
立たない。それに高校では剣道の授業もあった。学校の方針なのか体育とは
別に週に1回だけあったのだ。だから竹刀を振るのはそれなりに出来るかな?
と考えた。
一応それをサンダー教官にも伝えると、うん、そうか、と答えただけだった。
巨人兵では剣を使わないのか? そもそも接近戦を想定をしていないのか?
疑問であった。カンフーの動画は観せられるのに、剣術は無いのは、何故?
武器は使わないのかな? カンフーは身体の動かし方を習得するための物なの
かな? 巨大ロボットで機械の身体だから、関節技も関係が無いのかな? と
考えていた。
だったら竹馬は何だよ。これ要るのか? しかもこの竹馬がただの棒なので
ある。日本の物は足を乗せる所が付いているが、巨人兵でやらされるのは、
2本の棒で、両方の足の指で棒を掴め、腕の指で掴め、それで歩け!と教官に
指示された。ゴリラやチンパンジー等の猿みたいに足の指を器用に使わない
といけない上に、バランスを取って歩けと言うのだ、無茶である。何度も転倒
して体中が痛い。三人とも竹馬は未経験で誰も上手く出来ない。転けてばかり
である。見本が無いので参考にするものが無い。教官に少し文句を言った所、
人間用の二本の棒を渡されて、それで練習してみろよ、と言われた・・・
出来るかよ、足の親指と人差し指で棒を掴んで乗るのか? クソッタレ!
俺は猿じゃねーぞ!とジムは罵った。雄二は少し考えて、棒を一本だけ持つ。
その棒を両足の裏で挟み、登り棒に登る要領で腕で持ってみた。
転ける・・・痛い。
でも、これピョンピョンと飛べば乗れるな、ホッピングみたいにして飛ぶので
ある。但し、これにはT字型の持ち手のハンドルは無い。下にジャンプ用の
バネも体重を掛けられる足場も無い。無理矢理である。これまで鍛えられたの
で腕の力は結構強くなっている。それで強引にやってみた。やはり転けた。
先程よりも痛い。ジャンプするつもりだったからだ。
それを興味深そうに少しニヤけた表情で教官は観ていた。だが、何も助言は
しない。
クソっ! やってやりますよ、ホッピングは子供の頃に兄貴と散々遊んだんだ。
父ちゃんが子供の頃に遊んでいた古い物を物置で見つけたのだ。それでこれは
何か? 玩具? どうやって遊ぶの? と父親に問い詰め、実際に乗ってやって
もらって、その様子を観た。そして兄貴と取り合いながら遊んでいた。その経験
を思い出そうとした。
ぴょん! いけた! 転けた! 痛い! うー、いつつぅ・・・
ここ月基地に来て支給された服は結構丈夫である。防弾、防刃、防爆、防塵の
構造にでも成っているのか、お陰で怪我はしない、だが痛みは緩和してくれない。
緩衝機能は装備されていないの? でも痛いだけなら我慢してやれば良いか、
やってやりますよ。
ぴょん! いけた! ぴょん! いけた! 転けた! 痛い! つつつ・・・
その様子を陳も観ていた。ふーん、ホンダさんは相変わらず面白い事を考える
人だなぁ、と感心していた。自分も真似してみるか? いやそれとも、普通の
竹馬みたいに乗る練習をやるかな? 靴を脱いで裸足になってみた。
足の親指と人差し指で棒を掴もうと試してみた。あれ? 俺、持てる?
やった事が無かったけど、足の指を意外と動かせるな、へぇ〜自分にはこんな
才能があったんだなぁ、と1人で感心している。そうやって普通の竹馬と同じ様
に乗って見ようとしたが・・・アイヤー、痛い痛い痛い、そりゃ転けますね。
そう言えば、普段の自分たちの生活圏も2Gにされていたんだった。
そりゃ痛いよ。でも、これ慣れてきてるんですね、人間の適応能力は凄い。
いや、身体の中の機械で無理矢理に適応させられているのか、どちらかは知ら
ないけど生活は出来ている。
でも、身体能力や運動神経は向上させてくれないのね。それは自分でやれよ!
という事か。だったらやれば良いんでしょ、やりますよ、どうせ他にやることも
無いし、逃げられないし・・・
ジムはその身体の大きさ故、二人の様な事が出来ない。どうしろってんだ?
と、ぶつぶつと何かを呟きながら、棒を一本持ちそれを振り回していた。
剣の様に斬りつけるような動作や、バトントワラーみたいに両手を使い体の前で
クルクルと回してみたり、右の手に平に棒の先を乗せてバランスを保ってとかも
やって遊んでいる。
ん? 俺こんな遊びなんてやったこと無かったけど、意外と出来るんだな。
何だこれ? 教官は特に文句は言わず、じっと見ているだけだ。
これで時間が潰せるなら、楽で良いじゃねーか。
竹馬なぁ、そもそも竹馬は足に長い棒を括り付けて歩くものなのでは?
中国や日本ではこんな何も無いただの棒なのか? ホンダは変な事をやってるが、
あれ何だ? 一本の棒に掴まってジャンプしてるのか? マイケルは、足の指が
器用なんだな。裸足になって猿みたいに棒を挟んでいるな。俺もやってみるか?
近頃は殆ど見なく成ってきた消防署の滑り棒みたいに腕で掴んで、この状態で
ジャンプをすれば・・・
ずっでーん、と転倒した。痛い、痛い・・・クソッタレ!
なるほど、雄二はこうするつもりだったのか。でも、これ竹馬では無いよな?
教官は何も言わないから、これでも良いのか? 俺は両腕に棒を二本抱えてジャ
ンプでもしてみるか? なんせ腕力は人よりも有る。余りまくっている。
三人はそれぞれのやり方で棒を使って練習をした。
あっちで、ずでーん、こちらで、ずでーん、そちらで、ずでーん、痛い、痛い、
痛い!の声が上がる。
雄二がピョンピョンと飛び回る。コツを掴んだようである。丈夫な棒を器用
に乗りこなしている。地面(月面ですね、ここは)が穴だらけになりそうだが、
これでも全く傷も付かない。そのうち飛び回るのでは無く、その場で留まる動作
に移行する。何だ、ジャンプしなくても平衡を保てるんじゃないですか。これで
残りの一本も使えば竹馬に乗った事になるのかな? 意外と早く習得できた気
がする、こんなに簡単に出来るのかなぁ、と訝しげに不信感を抱く。
陳は、器用に足の指で棒を掴んでいる。うんうん、人間やれば出来る!
やった事が無かっただけで、自分には本来こんな隠れた才能があったのかもしれ
ないなぁ、等と呑気に考えている。その上、普通に竹馬に乗るように二本の棒で
歩いている。ただ、足の位置は低い。握りこぶしが足の裏に入るかどうか程の
高さである。殆ど竹馬に乗っている意味が無い。高くすると転けた時に痛いので
低い状態でやっていて、それが癖になったようだ。
ジムは、腕で抱えた二本の棒で無理矢理に起立していた。何だ、脚なんて使わ
なくて済むじゃねーか、いや、この体制は結構腕が疲れるから足も使うべきか?
と他のやり方を模索している。なので、また転倒する。
ずでーん、いったたたた・・・クソっ!
脚なんて要らねぇ飾りだ、いや、でもな、もう少し傾けて棒に乗ってそれを腕で
支えれば良いんじゃねーか、何だ簡単だな! と無茶苦茶な考えに至った。
転けるのは痛い、それは嫌なので、先ずは二本の棒を地面(いや月面か?)に
置いて、左右の足をそれぞれに乗せる。その自分が乗った棒を両腕で持ち上げ
ようとしている。常人なら腕力的に無理なので、そうは考えない。
その姿を観た雄二は目を丸くした。陳も開いた口が塞がらなかった。
いや、そういう考えにはならんだろう、やらんだろう、何をしてるんだろう、
この人・・・と呆れていた。なんて腕力なんだ、そもそもこの棒も凄い。ジムの
体重であんな事をやれば曲がりそう、もしくは折れそうだけど、何も起きない。
床にも傷一つすら付いていない。どんな材質で造られているんだろう?
いや、感心するのはそこでは無いのかもしれない。一体全体何をしているのよ、
この人は? 自分の首根っこの後ろを掴んで、自分の腕で持ち上げるに等しいで
すよ、それ。
あ、あれで出来てるよ・・・この人の腕の力、とんでもないな。前から知って
いたけど、改めてまざまざと見せつけられると、恐怖や畏怖では無く笑いになる。
雄二と陳は顔を見合わせて、引きつった笑顔になっている。なんて脳味噌筋肉な
考えの力技なんだ、ジムさんらしいよね・・・と声には出さずに。
サンダー教官は、ニヤけた表情で何も言わずに三人を眺めているだけだ。
面白い奴らだ、観ていて飽きないなぁ、とでも考えていそうである。
猿に金槌を渡すとどうやって使うか、そんな感じで観察でもしてるのか。
猿でも金槌を使って釘を打つのか? それとも自分の指か頭を殴るのか?
ホンダは何か気がついているみたいだな、猿よりは馬鹿じゃなさそうだ。
そんなに早くできる訳がないだろう。解りにくいように補正してやって、早く
習得出来る様にある程度は身体の中の機械にやらせてるんだよ。マトモにやって
たら何年かかるやら・・・とか考えてもいるのか。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




