第67話 新しい訓練 その4
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「ほら、歩けよ。転んでも模擬訓練機だ、機械巨人兵は壊れない、心配ない。
あと、お前らも怪我はしない、巨人が受けた感覚、痛みや辛いのは伝えて
やるけどな。
さあ歩け! 行け、歩け歩け歩け!」|(英語)
サンダー教官のその言葉に、またジムが腹を立てる。巨人より俺達を心配
しろよ、こっちがぶっ壊れるじゃねーか、糞ったれのおっさんが!と考えて
いると、また彼の操る巨人が怒りのポーズを取っている。
「余計なことを考えるな、ジャクソン。歩く事だけを考えろと言っただろう。
まぁ歩くのに自身がついたのなら、走るのもスキップでもダンスでも他を
やっても構わないぞ。何だか知らんが、地球では黒人らの間ではブレイク
ダンスやロボットダンスってのが流行ってるんだろ? それでもやれよ」
|(英語)
いつの時代の流行りだよ。今頃そんなのやってる奴なんて居るかよ!
そうか、やって良いのならやってやる。この俺の上腕二頭筋と胸筋・腹筋を
観ろってんだ!とビルダーのポージングを巨人にやらせている。見事に両椀を
持ち上げて肘を曲げている。何だか腕の動かすやり方も、微妙に人間の自分
とは少し違うな、何だコレ? と疑問が湧いて出てきたが・・・
「ほう、矢張りお前は飲み込みが早いな。腕もそこそこ動かせるじゃねーか。
まだ教えてないってのに。良いぞ、好きにやってみろ。お前は理屈じゃなく
身体で覚えるタイプだ。ほら!どんどんやれよ」|(英語)
へぇ、ジムさん凄いや、俺なんて足の動かし方に集中しないと転びそうなのに、
機械巨人兵でボディビルダーみたいな動きが出来るんだ・・・いや見た目が
巨大ロボットだから、鉄人28号が叫ぶ時の姿勢に近いかなぁ。それにしても
これは天性の才能の差なのかなぁ? 黒人さんの身体能力が高いというのは、
本当なんだなぁ、と雄二は改めて感心と少しばかりの嫉妬心を抱いていた。
一方その頃、陳は・・・ブツブツと呪文を唱えている様な勢いで喋りながら
しかし、ジムの操る巨人のポージングを観て、そうか、そうするんだ、流石に
身体を動かすプロは違う、重心の移動を意識もせずに自然に腕を持ち上げて
平衡を保てるんだな、なるほどなるほど、参考になるなぁ、俺もやってみたい、
こうかな? うーん、と詳細に観察し関心し参考にしつつライバル心を燃やす、
という複雑な心境を抱いている。マルチタスクな心理状態である。地頭は良い
のだろう。
そのジム本人は少し褒められて、嬉しそうである。そうだろう? 俺のこの
筋肉にジェミーは惚れたんだぞ、どうだ、もっと観ても構わないぞ、と巨人の
ポーズを色々と代えている。巨人がポーズを代えても筋肉は盛り上がらないし
そもそもそんな物が無いので見えないのだが。
雄二は、また始まっちゃったよ・・・と心配しているが、あまり他人に気を
遣うと自分が操る巨人が転びそうになるので、気が抜けない。集中しないと!
こいつら面白いな、と教官はニヤリと笑う。不器用な奴らだが、各々不得意な
分野が違うんだな、これは組み合わせが良いのか。最初は、ハズレな使い物に
ならん奴らを連れて来やがって、自動捕獲機の球ころ野郎!と憤ったが、俺の
勘がハズレたか? それはそれで嬉しい誤算なのだがな。
「おいジャクソン、そのポーズも良いが、歩くのも疎かにするな。
歩兵の基本は歩く事だ。先ずは足腰を鍛える運動をやってみろよ。
どうだ出来るか?」|(英語)
何だよ、下半身か? だったらこれか? とジムはヒンズースクワットを巨人
にさせ始めた。うーん、こいつやっぱりちょっと身体が変だな、もっと自由に
俺の思う通りに動けよな! と苛つきながらも、腕を前に水平に真っ直ぐに持ち
上げ、太腿が水平になる位に膝を曲げ、膝小僧がつま先より前に出ないように尻を
後ろに突き出す様な、教科書に書かれている理想的な屈伸運動をやらせている。
元インストラクターの矜持なのであろう、巨大ロボットの関節がそんな些細な
姿勢の違い程度で痛むことも無い筈なのに、である。
何ですと! スクワットなんて複雑な動きを、いとも簡単にやらせてる!
凄い!凄いですね、ジムさん、負けませんよ! 俺だって何時かは自由自在に
この巨人を動かせる様に・・・
ずっしーーーん!と陳の操る機械巨人兵が派手に転倒した。片足を上げた瞬間
にジムの巨人の方を観てしまい、思考が抜けて平衡を崩してしまったのだ。実際
には、訓練機が回転しただけであるが。
「うがっ! 哎呀、いたい、痛い、イタイ・・・
感覚帰還で、巨人が受けた痛みが伝わる・・・
そうか、こうなると、ここが、だからか、痛いって事は受け身を取れば!」
|(広東語)
文字通りに[転んでもただは起きない]、その痛い経験でさえ自分の思考制御
の失敗が原因だ、ジムさんみたいに見事なスクワットを出来るように、クソっ!
運動神経の鈍い自分が憎い! 今度コケた時には、受け身を取る様に思考制御
してやる! と陳は、色々と考えを巡らせているみたいだ。
「ほほぅ、出来るじゃねーか、良いぞ、どんどんやれよ。その運動も良いが、
先程も言ったが歩くのが歩兵の基礎で仕事だ。目を瞑っても、寝ながら屁を
こいてでも、銃を撃ちながらでも、歩ける様に成れ。特にチェンとホンダ、
お前らはもっとマシな歩き方が出来るように頑張れよ。
チェン、転倒したら痛いだろ、感覚帰還を理解したか?」
|(英語)
ふむふむ、寝ながらでもですね、本当に身体で覚えるんですね。やってやり
ますよ、反復横跳びでもケンケンパでも何でも出来るように、なってやります
からね、撃ちながら歩くのはあんまりやりたくないですけど。
うーん、何となくだけど、こんな風にやれば・・・
ずっしーーーん!
雄二の操る機械巨人兵も転倒した。だぁ、い、いっ痛い、イタイ・・・
そうか反復横跳びとケンケンパを同時にやろうと考えちゃったのか。感覚帰還
がどんな物なのかも実感できました。こうなるんですね、痛みがそのまま来る
んですね。これは凄い技術だよ、凄いけど、余計な気もする。でも痛い思いを
したくないからやられないように回避したり戦闘するのかな? と逡巡か思考
してる。痛みがあるから身体で覚えられるのかな? 人間って案外不便な構造
なんだなぁ、と変な所で感心してる。
お臍あたりに重心があると意識して、それを動かさないように、脚を上げて
歩いてみよう。これで上手くいく筈だ・・・
ずっしーーーん!
いたたたた、またしても転倒した。あれ? これで上手くいくと思ったんです
けど何で?あぁ、俺にも陳さんみたいな頭脳があればなぁ、何で転んだのか理由
が分からないですよ。これじゃ、骨折り損のくたびれ儲けですね。そう言えば、
この巨人兵には骨は無いのかな? もし無いのであれば、歩き方や立ち方も人間
と違いますよね。そこら辺の違いを覚える必要があるんだろうなぁ。
理屈では解っていても実行するのは難しいなぁ。俺は陳さんみたいに理論詰め
では出来ないから、[下手な鉄砲も数撃てば当たる]で、どんどん歩いて転倒
してを繰り返すしか無いですかね。やってやりましょう! 抜き足、差し足、
忍び足、全部を出来る様になってやりますよ。俺も一応は日本人ですから、忍者
みたいな足さばきも出来るでしょう!
「教官、質問があります。四つん這いでの歩行も有りですか? 転倒して立ち上
がる時、手で支えて起き上がりますが、別にそのまま四足歩行に移行しても
問題は無いですよね? 場合によっては、そんな状況に陥る事もあるかもしれ
ないですし・・・」|(日本語)
その言葉を聞いた教官は、またニヤリと笑った。このホンダも面白い。平凡で
目立った取り柄がない奴だと思っていたが、そんな発想をするのか・・・
まだ俺が教えてもいないのにな。矢張りコイツら三人は、興味深い組み合わせだ。
「あぁ、別に構わないぞ、最初に説明したが、状況に依って二足歩行、四足歩行
自由自在に切り替えろ、上下も関係ない、前も後ろもだ。意味は解るか?
機械巨人兵は人間とは身体の構造が違う、臨機応変に色んな動きが出来る、
そういう風に設計されてる。慣れてくればその訓練もやるからな、体操選手の
身体能力以上に動き回るから面白いぞ。だが、取り敢えずはマトモに歩ける
ように成れよ。ケンケンパなんて、まだ要らん。それより先に前進・後進・
左右に曲がる事が出来るように成れ。理解したか?」|(英語)
「なるほど、転倒した時は四足歩行の練習もやってみます!」|(日本語)
その言葉の後、雄二の操る機械巨人兵は、手脚を広げて蜘蛛の様な歩き方を
やり始めた。教官はてっきり犬か馬みたいな歩き方をやるもんだと思っていた
ので意外だった。そっちを選んだか。なるほどコイツの発想力は面白い。
教えてないぞ、そんなやり方。日本人はロボットの出てくるアニメが好きなの
は本当なんだな、色んな物を子供の頃から観て覚えているのか。
チェンもそうみたいだが、アイツは頭でっかちで理詰めでやるタイプで突飛な
思いつきが出来ないかもしれない、上手い具合にそれぞれの不得意分野を補完
しあう、良いチームになるかもしれんな。
サンダー教官はテンガロンハットのつばを持ち、ニヤリと笑う。
「な、何ですと! ホンダさんがあんな歩かせ方をやっている! そうか!
そうだった。巨大ロボットの歩兵だから二足歩行という固定概念が邪魔を
してた。流石ロボットアニメ大国の日本の人ですね。あれは攻殻機動隊の
フチコマかタチコマでしょうか、ダグラムのブリザードガンナーもあんな
感じでしたか、なるほどなるど。勉強になるなぁ。
俺も今度転倒したら早速やってみよう!」|(広東語)
正に[人の振り見て我が振り直せ]を実感した陳であった。
「手をついて歩けってか? 猿やゴリラに[先祖返り]だな。でも、猿やゴリラ
もある意味では人間よりも身体能力は高いんだよな。それに器用な指が付いて
るんだ。おまけにコイツは空も自由自在に飛べる。面白い機械を考えるもんだ。
マイケルが言ったのがどんな物かは解らんが、四本脚だけど二足歩行が出来る
昆虫みたいな物か。なるほど、これは無敵の歩兵だな。教官、俺はコイツが
増々気に入ったぞ。俺が乗る実機にもジェミーの名前を付ける」|(英語)
そこそこ歩けて、次はジャンプでもやってみようかと考えていたジムが、雄二
の動きを観たりや陳の話しを聞いたりして、喋りだした。四本脚の状態は腕立て
伏せに近いのか、それともプランクの状態で動くのか、人間の身体だと体幹が
辛いな、等と要らんことを考え出した。巨人は、もう既に体幹運動のプランクの
姿勢になった。
「あぁ、好きにしろよ。声も再現してやろうか? カミさんの声で操縦の補助
してもらいたいか? 出来るんだぞ。操縦補助機械思考と呼ぶのか?」
そう言えば存在を伝えるのを忘れていた、みたいな雰囲気で教官がボソリと
呟く。わざとやっているのである。
「何ですと! 操縦を補助する人工知能(Artificial Intelligence)ですか?
そんな物があるのなら、それに補助させて・・・
あ、なるほど、それじゃ訓練には成らないぞ!って訳ですかね、教官?」
|(広東語)
陳は自分で言って納得している、そうだ、これ訓練なんだよ、初めから全部を
全自動でやっちゃ駄目なんだ、そう駄目よ、ダメダメ!
手動が基本なんだ、と思い直した。
「そうだな。よく解っているじゃねーか。先ずは補助輪無しで自転車や一輪車に
乗れる様になれ。スキーやローラースケートや竹馬にも乗れる様になれ。
そういう事だよ」|(英語)
竹馬かぁ、やったこと無いなぁ、子供の頃は、兄貴が乗る自転車の後ろに乗せて
もらってたなぁ。懐かしい。また会えるかな。最後に会ったのは・・・
今考えることじゃないか。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




