第65話 新しい訓練 その2
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「ほら乗れよ。説明は、乗りながらしてやるよ。
その方が解りやすいかもしれん」|(英語)
サンダー教官にそう言われて、模擬操縦訓練機に渋々と乗る三人。またこれ
をやるのかよ、とウンザリとした表情だ。もういい加減飽きたぞって顔である。
殆ど毎日これに乗って操縦訓練をしているのだ、かなり慣れてきた。普通に
飛ばせるようになっていると自覚はある、あまり自信は無いが・・・
「乗ったか? では、先ずは左の操縦桿の説明だ」|(英語)
コックピットの蓋の裏面が画面に成っているが、その左上に小さい四角の枠
に教官の顔が表示される。そこから説明してくる。これも毎度の事である。
そもそも、この教官が喋っている動画は誰が撮影しているんだ? 教官の前に
カメラなんて物は無いし、それに教官は手に何も持ってもいない。腰に手を
当てて偉そうにしているだけだ。マイクやイヤホンすら装着していないのに、
その声はこの模擬操縦訓練機の中に伝わる。
俺達だって、ヘッドフォンやマイクなんて物を装着していない。小さい四角の
枠の画面に映る教官に話しかけているだけだ。何でこれで会話が出来ているのか
原理が解らない。訓練機の蓋が閉まれば密閉されてしまうし、この中で無線機の
操作などした覚えもない。
疑問は前からあるが、今更考えても仕方がない、どうせ頭の中の機械で何か
やっているんだろう。
「前に倒すと、機械巨人兵は前に進む。後ろに倒すと後ろに進む。右に倒せば
真横右に進む。左に倒せば左に進む。ここまでは理解したか?
簡単だろう?」|(英語)
教官の説明を聞いた雄二は、ふむふむ、これは子供の頃に遊んだラジコンカー
の送信機と同じだな、と理解した。自動車と異なるのは、左右進が有ることだ。
自動車のステアリング・ハンドル操作にあたる物は、足のペダルで操作する。
自動車と同じ様に動かそうとすると、左の操縦桿の前後と左右の足踏みペダル
だけで済む。普通は左右の操作は操縦桿で、前後は足のペダルの方が良いように
思うけど・・・
「ただ、これでは上下の操作が出来ないな。なので、操縦桿を握った親指で操作
する小さな操縦桿が有るだろう? 触ってみろ。これで上下方向の操作をやる。
上に傾けると上昇、下に傾けると下降する。
但し、この操縦桿の操作方法は自分用に変更することも可能だ。好きな様に
割り当てても構わない。右の操縦桿で前後左右上下進の制御、左の操縦桿で
ロール、ピッチの制御でも良い。お前たちの自由にしろ。変更方法も教える。
まぁ、先ずは標準の操作方法で覚えるか」|(英語)
教官の説明では何かが足りない。そう、これは巨大な人型の二足歩行機械歩兵
なのだ。どうやって歩かせるんだよ? 腕の動かし方は? 手の指や足の指の
操作なんてどうやってやるんだよ? 上下に2つも有る頭の向きの変え方は?
と疑問が色々と湧く。
「教官、歩くのはどうするのですか? 左右の操縦桿と足踏みペダルだけでは、
四肢を動かすのに、どう考えても数が足り無いと思います」|(広東語)
陳が疑問を投げかけている。歩兵なんだから歩き方を先に教えてよ、と思う
のは当たり前のことだ。何で移動・飛行の方法しか教えてくれないんだろう?
「あぁ、そこに引っかかるな・・・ まぁお前はロボットが好きな機械マニア
だったか。それは、頭で考えろ、そうすれば動く、と言えば納得するか?」
|(英語)
教官のマトモな説明に成っていない説明を聞いて、ジムが悪態を吐く。
「阿呆か? 考えろって、もうそれ操縦じゃねーだろ。だったら操縦桿なんて
要らんだろう? 訳が分からん」|(英語)
呆れて両手を広げて頭を振っているジムに対して、教官が答える。
「まぁ、そうだな。全部を思考制御にすると、頭がこんがらがるんだろう。
お前らの考えることは、とっくの昔に既にやったんだろうさ。
で、結局はこの方法に落ち着いた。そんな感じなんだろう。自動車の運転
を全部頭の中で考えてやれ、と言われてお前は出来るのか?
走っている最中にヘッドライトを点灯しろワイパーを動かせ位は思考制御
での方が良いだろう。だがステアリングやブレーキは、身体でやった方が
良いんじゃねーか? 思考力が高くて頭の回転の早い奴なら、同時に色んな
事を処理出来るんだろうけど、そんな器用な奴は少ないんだろうさ」
|(英語)
何だか上手い具合に誤魔化されている気がする、と素朴な疑問が三人の頭に
残る。本当かなぁ? 全部を思考制御でやる方が効率が良いと思うんだけどな、
と陳は思案している。周りの状況を見てから判断して腕を動かして機体を制御
するよりも、見て直ぐに考えて思考制御する方が早いだろう。
「歩こうと考えたら、機械兵は歩くって事ですか? 右足を出して、そこから
どうしようとかは、詳細は? 全部考えるんですか? 良く解りません!」
|(日本語)
雄二が疑問を呈する。歩けと思えば歩くのか? それとも、逐一脚部の動きを
考えるのか・・・
「だから、やってみろよ。今は模擬操縦訓練なんだ、失敗しても死なねーよ。
うだうだ言う前にやってみろよ。お前は歩く時に、脚の動きを全部考えてる
のか?」|(英語)
教官はその場で足踏みするジェスチャーをやり雄二を促す。早く歩きやがれ
それとも赤ん坊の様にハイハイやつかまり立ちからやり直すのか? そこから
教えないといけないのか? と苛つかせるような言葉を投げかけてくる。
「やります、やります! 歩けば良いんですよね。歩きますって!
うわっ! 歩いた! 何だこれ?」|(日本語)
歩こうと思った時には、機械歩兵は足を出して歩いているので驚いている。
なるほど、思考制御というのはこういう事なんだ。自分の足で歩くのと変わら
ないんだなぁ、でも自分の足ではない不思議な感覚だ。今まで味わったことが
無い。義足とか義手の人は、こんな不思議な思いをするのかなぁ?と変な事を
考えている。
「飛ぶのは、出来るか? 左の操縦桿の親指にある小さい操縦桿を上にだな、
ほんの少しだけだぞ、いきなり上にガバっと動かすなよ」|(英語)
教官のその言葉を聞いて、ジムが隙かさずやってみる。
「おぉ! 浮いた! 何だこの感覚。気持ちが悪いのか気持ちが良いのか…
不思議だな。スーパーマンみたいに空を飛ぶって、こうなんだ。
浮いているけど、低いな。高度は・・・ 2フィート(60cm)だぁ?
何だコレ」|(英語)
空を飛んでいるというか、その場でほんの少し浮き上がっただけである。
「そのまま右の操縦桿で姿勢を変えてみろ。面白いぞ?」|(英語)
いつもの教官のニヤけた顔がモニターに表示されている。やれと言われば
やるけどよ・・・ みたいな顔でジムが試してみた。
右の操縦桿を左に倒すと、機械巨人兵はその場で左に90度傾く。
「え? こうなるのか・・・ このまま浮いていられるのか? 気持ち悪い。
何だよ、これ・・・」|(英語)
機械巨人兵は横になった状態でそのまま浮いている。勿論操縦室も同じ向き
なので、ジムも90度横倒しの状態である。胴体の中心を軸に左に横倒しである。
巨人の脚の長さ分だけ高度は上がったように見えるが、胴体部分の地面からの
高さは変わっていない。
「そのまま上に行くなよ。横に居るホンダにぶち当たるぞ?」|(英語)
教官に言われた言葉の意味が解らない。上に行く? あぁ、このまま巨人の
上方向に行くということは、端から見れば、左横に進むことになるのか・・・
これは姿勢制御がややこしいな。なるほど、空間認識の感覚が鋭くないと上手く
操れないな、とジムは一人で納得した。
「これ、どうやって歩くんですか? 右足を出して・・・ 左足を出して?
あれ? え? え! えぇぇ!」|(広東語)
陳の操縦する機械巨人兵が、ずっでーん!と派手に転倒している。右足を
出して浮いた状態で直ぐに左足を出すのである。そんな事をやれば人間でも
転ぶ。
「お前、自分の右足を自分の左足で踏んでコケる間抜けかよ・・・
考えすぎなんだ。歩くと考えるだけで良いんだ。脚の動きを全部考えるな。
その巨人は素直で頭も良い。ある程度の指示で基本動作はやってくれる」
|(英語)
教官が首を振って、駄目だコイツ・・・みたいな顔をしている。
「教官! 歩いたんですけど、どうやって停まれば良いんですか?
と、停まらない、助けてぇ!」|(日本語)
雄二の乗る機械巨人兵は、ノシノシと歩いているだけである。別に恐怖を
覚えることも無い。と言うか前に進んでいない。歩き出した直後に教官に言わ
れてジムと同じ様に少し宙に浮かせていたのである。その後に巨人の足は歩い
ているが、地面に付いていないので歩けていない。足踏みの状態に近い。
「お前ら・・・ やっぱり不器用だな。ハイハイからやり直すか?
それとも、寝返りからか? 赤ん坊じゃねーんだから・・・」|(英語)
ジムの巨人は、空中で真横になった状態で歩こうともがいている。
「ジャクソン、まずは降りろ。飛ぶのは後にしろ。先に歩く練習をやれよ。
糞ったれ、人型にすれば、これかよ・・・ 先が思いやられる」|(英語)
教官は模擬操縦訓練機を一度終了させ、最初の機械巨人兵が直立した状態
に戻す。
まず、歩く練習からやらすか・・・ 飛ぶのは後にしよう。歩兵だしなぁ。
歩くのをみっちりやってから空を飛ばそう。不器用なこいつらには、その方が
良いかもしれんな。
顎に手をやり思案顔をしている。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




