第63話 新しい訓練の前
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「それでは、座学はこれくらいにするか。そろそろ昼飯を食う時間だろう。
お前らあっちで飯を食ってこい。その後は、新しい訓練をやる。これまでと
同じで模擬操縦訓練を使って行うが、先程言った[フリーモード]だな。
それをやるからな。ジャクソン、お前が気に入りそうな訓練だぞ」
|(英語)
その言葉で本日の午前の座学は終了となった。雄二はまだサンダー教官に
聞きたい事があったのだが、機会を失ってしまった。まぁ、また今度じっくり
聞いてみようかな、と考えていた。
三人は教室の隣の食堂に移動し、昼食を食べることにした。その食事の途中、
雄二はジムにある質問をした。
「ジムさん、攻撃ヘリってどんな武器を積んでいるんですか? 俺、あんまり
詳しくないので教えて下さい」|(日本語)
白いブロックを齧り、モグモグと咀嚼しているジムが意外な顔をして雄二を
見つめる。口の中のそれを飲み込み、コップの水を一口飲み、説明を始める。
「そうだな、俺が乗りたいと思っていたアパッチなら、固定武装として胴体の
下に30mmのチェーンガン、わかり易く言えば機関砲だな、それが有る。
それにスタブウイングと言って胴体に小さな羽根みたいなのがあるんだが、
そこに武装を装着できる。無誘導のハイドラ70ロケット弾か、レーザー
誘導式かミリ波レーダー誘導式のヘルファイアという対戦車ミサイルだな。
場合によりスティンガーやサイドワインダー等の対空ミサイルも積める。
何でそんな事を聞くんだ、珍しいな」|(英語)
そう言えば、そんな事を聞くのは何でだろう?と陳も疑問を持って考えた。
「あのですね、それって敵と言うか誰かを殺すために積んでいるんですよね?
攻撃ヘリって、そんな存在なんですよね?」|(日本語)
雄二は、白いブロックをあんまり食べず、ぼんやりしながら喋る。
「あぁ、そうか・・・ まぁそうだな。そういう事か。
お前の気持ちは解る。俺はガキの頃からの単純な憧れでパイロットに
なりたいと、ぼんやりと考えていた。そうだな。まぁ人殺しの機械だよな。
うん、そうだ」|(英語)
ジムは食べていた手を止めた。少し間をおいてまた喋りだす。
「それは自分を含めた誰かを守るために有る、と俺は思っている。
それにな、ホンダ、戦闘機の戦い方って、どんなものか知っているか?」
|(英語)
雄二は首を横に振る。だって俺は普通のサラリーマンだし、戦闘機なんて直に
観たことなんて無いんだし。
「飛行機に限らずヘリだって、ドッグファイトなんて格好良い事はやらない、あれ
は映画とかの世界だ。相手に見つかる前に攻撃するんだ。これが自分がやられず
に確実に相手を殺る方法・戦法だな。
な、卑怯だろ? 戦争ってのはな、理不尽なんだよ。
誰が始めるかなんて難しい事は、俺は知らん。
だが命令があれば、それをやる。それが軍隊、軍人、兵隊だ。
こんな話で良いか?」|(英語)
そう言い終わると、ジムはまたモグモグとブロックを食べ始めた。
雄二と陳は、そのジムの話を聞いて、食べる手を止めたままだ。
「それは軍隊ですよね。宣誓布告するか、それなりの政治的な理由か何かで始める
んですよね。でも、俺達のやらされることって何でしょう? でっかいロボット
に乗って原爆や水爆を使うのって、何か守る事ですか?
虐殺じゃないですか? それも戦争でしょうか・・・」|(広東語)
雄二の質問に対するジムの答えを聞いた陳が、ボソボソと喋りだした。
ブロックは目の前にある皿の上に置いてしまった。
「そうだな。俺は生まれていないから知らんが、太平洋戦争でアメリカは日本に
対して空爆で都市部を一方的に攻撃してたし、ヒロシマとナガサキに原爆を
落としたな。犠牲になったのは、殆どが民間人だったろう。あれを誰かを守る
ための攻撃か? と問われたら、俺は解らないと答える。
さっきも言ったが、戦争は理不尽だ。勝った奴が正義で負ければ悪役だ。
そういうものだ。理屈で説明は出来ん。俺はマイケルみたいに頭は良くない
からな。悪いな・・・」|(英語)
ジムはまたモグモグと食べる。食べる事も軍人の仕事だ。そう教えられた。
「理不尽ですよね・・・ 星間戦争なんでしょうか、前に教官は害獣駆除だと
考えろ、と言ってたと記憶してますが、それも駆除される側からしたら、
理不尽ですよねぇ・・・」|(日本語)
人間の経済活動に対して不利益であるからと熊や虫を駆除・退治するのは自分
勝手だよな、とでも考えているんであろう。
「ホンダ、マイケル、先ずは目の前の飯を食えよ。
俺は軍隊に入って食う事も仕事だと教えられた。だから食え。お前ら自身を
守るために食え。今はあんまり余計なことを考えるな。また教官に頼んで酒を
貰って飲むんだろ? その時の事でも考えてろ。旨いつまみでも良い」
|(英語)
ジムはブロックを食べ終えて、水を飲んでいる。もう一つ頼んで食うかな?
とでも考えている。
「強いんですね・・・ジムさん」|(日本語)
「あぁ、ビルダーだったからな。まだ力じゃお前らには負けないぞ?」|(英語)
そう言うと、右腕を曲げ太い腕に大きな力こぶを出すポーズをしてみせた。
どうだ、この上腕二頭筋は、と服を着て見えないのに腕を出す。
「違います・・・・」|(日本語)
首をブンブンと横に振りながら、雄二は弱く言う。
「そうか、俺だって怖いんだぞ? 格好つけて言ってるだけで買いかぶり過ぎだ。
俺の親父の受け売りだ」|(英語)
「そうなんですか、強いお父さんなんですね・・・」|(広東語)
またボソボソと小さい声で、陳が言う。
「あぁ、自慢の父親だな。だから憧れて入隊したんだからな。
ビルダーのトレーナーで十分な収入があって食って行けてたんだ。それを辞める
と言ったら、ジェミーに死ぬ程殴られて止められた」|(英語)
ジムは、遠くを見るような顔で、独り言のように喋っている。あの時のパンチは
死ぬ程痛かったな。ジェミーが本気で殴ると人が死ぬ。俺の顔がバスケットボール
みたいに腫れたもんな、と昔を懐かしんでいる。
「それでも、軍に入ったんですか?」|(日本語)
理解できない… って顔で雄二が聞く。自分がもし陽子さんに何か言われたら、
絶対にそれを聞いちゃうのに。
「そうだな、馬鹿だな、俺・・・ でも頑張れば子供の頃からの憧れが手に入る
んだぞ。やりたくなるだろう? 別にアパッチで無くても良かったんだ、ヘリ
なら何でも良かった。だからな、俺だって覚悟はそんなに出来て無いんだよ、
さっきも言ったが格好つけてるだけだ」|(英語)
そう言うと席を立ち、カウンターの方に歩いていった。白いブロックのおか
わりを貰いに行ったのであろう。因みに、月基地では食べ放題である。
栄養過多だと判断すれば、機械が自動で吸収せずに排泄させる。肥満で太る
ことも無い。それよりも、必要な栄養素に変換するので筋肉モリモリになる。
「あの人、強いですよね・・・」|(広東語)
「そうですね・・・」|(日本語)
そう言うと二人は白いブロックを食べ始めた。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




