第57話 いつもの訓練
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「今日は終わりにするには、まだまだ早いな。少し遅くなったが、
そろそろ昼飯にするか。お前たちなら、もう少し時間がかかると
思ってたんだ。俺の予想よりも早く見つけたんだ、喜べよ?
午後の実技は、普段通りに模擬操縦訓練機の訓練をやるとするか。
ついでに、明日はお前らが欲しがっていた休みを一日やろう。
この巨人兵に乗るのは休み明けだな。
まぁそのウイスキーはお前たちにやるから、今晩好きなだけ飲め。
但し羽目を外しすぎるなよ」|(英語)
さぁ、飯の時間だ。お前らは教室の横の食堂に行け、俺はコイツら
とこっちで話があるし飯も食うから、と言われた三人は、サンダー教官
とそこで別れた。
そう言えば、教官とは一度も一緒に食事をしたことが無い、と雄二は
今更気がついた。教え子とは馴れ合いはしない、という方針なのかな?
とふと疑問を持った。
ジムはもうソワソワしている。早く戻ろうぜ、飯だ飯だ、と帰る気が
満々である。昼飯だけではなく、恐らくもう夜の酒盛りの事を考えてる
のであろう。三本の瓶を抱えて離さず、一人だけ早足でさっさと歩いて
行ってしまった。雄二は、ペコリとビフとクリフそれに教官にお辞儀
をしてジムの後に付いていった。陳だけは少しだけ名残惜しそうな様子で、
機械の巨人の方を見つめている。二人の姿が見えなくなる寸前、置いて
いかれない様に駆け足で追いかけた。
教室の隣にある食堂に到着しても、ジムはウイスキー瓶を自分の横に
置いて離さない。お前らは、何が好きだ?ショットか、それともロック
か、もしかして水割りとか言うなよ、と一人だけ独り言の様に酒の話で
盛り上がっていた。
雄二は、どちらかと言えばハイボールが好きですね。チューハイも好き
ですけどね、と答えている。陳は、俺は専らロックですね、等と渋々と
ジムに付き合うつもりが、実物が横にあると少し話が弾みだすようだ。
「ハイボールは知っているが、そのチューハイってのは何だ?」
|(英語)
ジムが雄二に聞いてくる。アメリカでは知られていないのか。
「チューハイは、焼酎と言う日本の伝統的な蒸留酒を炭酸水で
割ってレモンの果汁とか、色んな味付けしたカクテルみたいな物で、
元々は[ショウチュウ・ハイボール]だったのを略した言葉ですね。
日本では凄く人気があって、お店でも沢山あるし缶でも売ってますよ」
|(日本語)
「そうなのか。機会があれば、日本に行ってそれも飲みたいな。
マイケルお前は何が好きなんだ?」|(英語)
ジムは、そのチューハイってのも美味そうだなぁ、と指を咥えながら
聞いている。
「香港じゃ、ビールかワインか、ウイスキーです、かね。俺は、ビールが、
好きですよ。中国の、昔からある、老酒などは、最近の人は、あまり
飲まない、ですね」|(広東語)
「へぇ、そうなんだ。香港は暑いからビールが好まれるんですかねぇ?」
|(日本語)
「俺はジェミーと毎晩ウイスキーだったな。ビールも飲むがもの足りん」
|(英語)
今から待ち切れないという顔をして、横目でウイスキー瓶をチラチラ眺め
ながら、もぐもぐといつもの白いブロックを喰んでいる。三人とも心ここに
あらずである。ただ、陳だけは先程見せられた機械の巨人の事が引っかかる
らしく、二人にその話題を振った。
「あの、巨人、どう思い、ましたか? 俺、子供の頃から、日本のロボット
アニメとかが、好きで、良く観ていたん、です」|(広東語)
「俺も、凄く好きって訳でも無いですけど、一応日本人なんでね、子供の
頃は、それなりには観てましたよ。プラモデルも組み立てた事あります。
陳さんは組んだ事はありますか?」|(日本語)
ポツリポツリと自分語りをしていく陳に、雄二が加勢する。
他国の人間に、自分の国の文化を褒められると嬉しいものである。
「そんなに良いものなのか・・・俺はGIジョーとかで遊んでいたな」
|(英語)
あんまり二人の会話について行けないジムは、ボソリと呟く。
「色んなロボットの、プラモデルや玩具を、買って、沢山、部屋に飾って、
ます。俺が技術者の道を、選んだのも、その影響が大きい、です。
だから、ジムさんがヘリに、乗りたい気持ちも、解るん、ですよ。
俺の場合は、憧れの対照が、巨大ロボット、だったん、です」
|(広東語)
その言葉を聞いたジムが、そうかそうか、お前のその熱い気持ちは解るぞ、
と言わんばかりに、うんうんと大きく何度も頷いている。
「そうか、そうだったのか… 俺と同じ気持ちだったのか。だったらマイケル
お前の気持ちも理解出来るぞ。俺たちは憧れの対照は違うが似た者同士だ
って事じゃねーか。俺はロボットに対しては思い入れはないが、次からの
訓練を頑張ろう、皆で教官を見返してやろうじゃねーか、な?」|(英語)
何故か意気投合した二人は固く手を組み、二人がそれぞれの想いを熱く語り
だした。語りだしたら停まらない状態で、どうも雄二は、この二人の熱いノリ
について行けずに、一人だけ居心地が悪い。
熱い語り合いと昼食の後、三人は宿舎の自分たちの部屋に戻り、ウイスキー
の瓶を大事にそれぞれの机に一本ずつ置いた。食後はまた模擬操縦訓練機での
訓練が有るので持っていく訳にもいかないと考えたので、一旦戻ってきた。
教室に置いておくのも気が引けたからでもある。
ついでだからと、全員で並んで歯磨きマシーンで口腔内洗浄を行う。U時型の
マウスピースを噛むと、自動で口内を洗浄・殺菌・消毒を行うのである。
食事も済み、大事な酒も置いてきて、三人はまた[高重力訓練場]に行く。
「お、来たな狩猟犬野郎ども。さぁ早速、実技訓練を始めるか。
今日もいつものアレからやるからな」|(英語)
もう既に教官はそこに来ていた。遅いぞ、いつまで飯を食ってる、犬から豚
にでも成るつもりか?と小言を言われた。右手の親指で、自分の後ろにある
訓練機を指差す。
先ずは、人間用巨大”回し車”によるハムスター訓練である。いつも最初は
これから始まる。これで1時間は走らされる。ただ、三人はかなり鍛えられて
きたのか、意外と余裕でこなせるようになってきていた。ジムは3.0G、
雄二と陳は2.5G、大気圧は0.7迄下げても出来るように成っていた。
軽い準備運動と化したそのハムスター訓練の後は、模擬操縦訓練機の置い
てある更に奥にある[模擬操縦訓練場]に赴く。
かなり前から模擬操縦訓練機の訓練内容が代わっていた。リング状の物が
トンネルのように並んだ三次元的なコースを飛び回るという訓練である。
ある程度の操縦の感覚が掴めてきた頃に、このやり方になったのだ。レース
ゲームの飛行機版みたいな物である。
トンネル状の三次元的なコースを出来るだけ外れず、出来るだけ速く飛ぶ
訓練である。毎回、コースの形状が変わるため、慣れてダレると言うのことは
無いが、かなりキツい。操縦の訓練であれば訓練機が動くだけで良い筈だが、
きっちりと旋回する際の重力加速度が再現されているので、肉体的にも精神的
にも凄い負担がかかる。
しかもそのリングに接触すると、もの凄い振動で揺さぶられるおまけ付きだ。
壁に当たるショックの再現と云うのであろうか。別にそんな事までやる必要は
無いだろう?と雄二と陳は思っていた。それが原因で、しばしば吐いてもいた。
俺達に対する嫌がらせだろう、とも感じていた。
「まぁ今日はこれくらいにしておくか。この後はお待ちかねの酒盛りだろ?
あんまり扱きすぎるのも可哀相だから、ほどほどにしておいてやるよ」
|(英語)
どこが”このくらい”だよ、フラフラで立つのもやっとだよ、俺達を殺す気か!
と三人は悪態を吐いた。飲む気分を無くすために、絶対にわざとやってるだろう、
と教官に対して淡い殺意も抱いていた。
でも、やっと、やっと酒が飲めるぞ! と喜びながら三人はお互いを支え合い
ながら宿舎に戻っていった。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




