第49話 操縦訓練 その4
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「どうだ、面白いだろう? まだ余裕があるか? まだそれ程大した
機動をやってないから行けるだろ? キューバンエイトが良いか?
それとも。ナイフエッジのループか、インバーテッドループか?
ジェット機じゃあんまりやらんが、コイツなら何でもいけるぞ
どれをやって欲しい?」|(英語)
どうだ、好きなのを選べよ、どれでもやってやるぞ? と教官も
ノリノリである。一方、模擬操縦訓練機の中のジムと言えば・・・
「き、キツイな、これ・・・ ふ、普通は・・・じ、Gスーツを着て、
やるんじゃ、ね、ねーのかよ・・・」|(英語)
かなりキツそうな声で答えている。身体にかかる重力加速度に耐え
ながら喋っているのであろう。
「まぁ普通の戦闘機乗りならそうだろうな。Gスーツを着て8G位は
耐えるのか?
俺は陸軍上がりだから、詳しくは知らんのだが」|(英語)
コイツにはスーツ無しでも大丈夫だろ、と適当に答えている。
「な、ナイフエッジを、た、頼む、一度、け,経験してみたかった」
|(英語)
この際だ、何でもやってやるよ、みたいな気概でジムは教官に答えた。
だがかなり辛そうでもある。やせ我慢なのかもしれない。
「そうか、覚悟しろよ。かなりGがキツイぞ?」|(英語)
その言葉の後、左のハールロール(機体が真横)になった状態で水平
飛行をし、そのまま機種を右に向けて上昇し宙返り機動に移行する。
ラダー(方向舵)を右に思いっきり切って、上昇するのである。
「ぐ、ぐぐぅぅ・・・ はっ、はっ、はっ、はっ!」|(英語)
ジムのかなり息苦しそうな息遣いが聞こえてくる。
下腹に力を入れ、短く息を吐く呼吸法をやって、なんとか耐えている
みたいだ。
「ほぅ、ちゃんと耐Gの呼吸法を知ってるじゃねーか」|(英語)
「教官、ちょ、ちょっと、あの、これじゃ模擬操縦訓練機がクルクル回る
だけで、俺たちには何をやっているのか分からないんですけど・・・」
|(日本語)
雄二が教官に懇願する。クルクル回る球体を見るだけでは、何がなんだか
理解できないのは当たり前である。
「あぁ、そうか。これじゃお前らは解らんか。だったら飛行機に置き換えて
表示してやるよ。今は、こんな感じで飛んでるんだよ」|(英語)
そういうと、雄二と陳たちの眼の前の何もない空中に画面表示が現れた。
ジムが飛んでいる様子を、滑走路の横から観ている状態になっている。
訓練機の赤色と白色の球体ではなく、赤と白のツートーンカラーのF-16
戦闘機が飛行している動画になっている。
「えぇ! 横向きに、なったまま、宙返りして、ません、か?
これ、とんでもない、横向きの、重力加速度が、掛かっているん、
じゃ・・・だ、大丈夫、なんです、か?」|(広東語)
陳は、こんな風に飛ぶ飛行機を観たことがない、って顔で心配している。
サンダーバーズでも、普通はやらない機動である。
「そうだな、横向きに5Gくらいかな? これくらいは普通だろ。
戦闘機乗りは8G旋回程度ならやるぞ?」|(英語)
教官は、別に大したことないだろ? みたいな顔で手を振って答え
ている。
「いや、5Gでも、普通は、プラスのGで、しょ? あれ、横向きに
Gがかかってますよ? 普通は、耐えられ、ないん、じゃ・・・」
|(広東語)
「インバーテッドループ(背面宙返り)だとマイナス5Gだぞ、
大丈夫だ、行けるって」|(英語)
大丈夫、余裕だよ余裕って、とニヤけた顔で答えている。
「いや、戦闘機パイロットでも、マイナスGは、そんなに耐える、のは、
無理なの、では?」|(広東語)
陳も、意外と飛行機の事に詳しいようである。
「だから、自動掃除機械を用意してるんじゃねーかよ。どうせ吐くだろ」
|(英語)
教官は、ニヤけた顔でサラっと言いのけた。
「ひ、酷いですよ・・・」|(日本語)
「き、鬼畜、です・・・」|(広東語)
二人の顔がまた引き攣っている。
「本人がやりたいって言ったんじゃねーか、俺はアイツのリクエストに
答えてやったんだよ。おーい、次は、背面の宙返りをやるか?
どうする、これキツイぞ?」|(英語)
「ぐ、ぐ、ぐ、ぐ・・・ や、やって、く、れ・・・」|(英語)
中のジムは、何とか歯を食いしばって話している。
「あいつ、根性があるな。見直したぞ。二回くらい振り回してやろう」
|(英語)
そう言うと、ナイフエッジループの終了と同時に更に左にハーフロール
で一度背面飛行状態にして、そこから機首を下げて機体を上昇させた。
「ぐ、ぬぬぬ・・・ あ、頭が、め、眼の前が、あ、赤い・・・・」
|(英語)
ジムの声がかなり辛そうである。マイナスGのお陰で急速に大量の血が
頭に登っているのであろう。
「流石にヤバいか、レッドアウト寸前だな。普通の人間ならここで意識が
飛ぶんだがな、あいつ意外と持つな。
駄目なら[降参]って言えよ、言わないと、もう一回まわすぞ?」
|(英語)
何だ意外と頑丈な奴だなもう少し遊んでやるか、とニヤケ顔で言いながら
模擬操縦訓練機を操作しているみたいだ。
「ぐ、ぐ、ぐぅ・・・・」|(英語)
もう言葉に成らない様子である。
「いや、教官、あれってGの所為でジムさん喋れないのでは?
かなりヤバくないですか?」|(日本語)
雄二がかなり心配している。ジムは、既に言葉が出せない状態に見えたの
である。かなり苦しそうだ、必死に重力加速度に耐えてのであろう。
「いや、行けるだろ。ほら、ジャクソン、一回目は回ったぞ。
どうだ、楽しいだろ。もう一回、背面ループいくか?
中々出来ん体験だぞ」|(英語)
その様子を見ていた後ろの二人は、この人、ひ、酷い、サディストだ・・・
と感じていた。二回連続した背面宙返りのあと、右にハーフロールして機体を
水平飛行の状態に戻す。
「あと、キューバンエイトもやるか? なんなら、背面状態でキューバンエイト
をやっても良いぞ? これが楽しいんだ。それにキューバンエイトと違って
縦向きに八の字を書くのもあるんだぞ、これもやるか?」|(英語)
ニヤケ顔ではなく、完全に楽しんでいる笑顔である。
この人やっぱり甚振って楽しんでるだけなんじゃ… 酷くない?
と後ろで見守る二人は、恐怖した。
「ちょ、ちょっと、まって、く、くれ・・・す、少し、水平に、
して、く、れ・・・」|(英語)
ジムが悲痛な声を上げてきた。が、まだ[降参]とは言わない。
「何だよ、もう限界か? ローリング旋回ってのがあってだな、機体をロール
させながら一周旋回をやるのが、一番面白んだぞ」|(英語)
キューバンエイトとは、水平飛行から上昇して3分の2だけ宙返りして、
その後、斜めに降下しながら機体を半分だけ横転回転させ、その後再び3分
の2宙返りして水平に移行する機動である。空中に横向きの8を描くことから
[キューバンエイト]と呼ばれる。空中戦としては殆ど意味がない、あくま
でも曲技飛行としての技である。
今、背面状態になって宙返りを行い、その後機体を半分捻り、再度背面
宙返りを行っている。恐らくジムの身体にはマイナス6Gは掛かっているはず
である。プラスGとは違いマイナスGとは、足から頭にかけて遠心力が掛かる
のである。普通であればGスーツを空気で膨らませて腰や太腿を締め付け、
頭から血液が下半身に行かないように制限して、パイロットが失神するの防ぐ
のであるが、マイナスGの場合は防ぎようがない。
頭に血液が登らないように首を締め付ける訳にはいかないからだ。そんな事
をすると窒息してしまう。
足から頭に血液が向かうのである。逆立ちしながら振り回されている状態だ。
訓練した戦闘機乗りでも、マイナスGは4で限界だそうである。
強いマイナスGでレッドアウトで意識を失って、下手すると機体が墜落する。
今は、ジムも同じ様にレッドアウトに陥って、意識が途切れてしまった。
「あぁ、駄目か・・・ まぁ、かなり頑張った方だな。
普通はインバーテッドループ(背面宙返り)で失神するんだがな」
|(英語)
教官は右手を顎にやり、撫でながら呟いている。
中のジムがもう限界だと感じたのか、模擬操縦訓練機を停止させた。
「あぁジムさん、また・・・ これ大丈夫なのかな?」|(日本語)
「あれ、完全に、中で、意識なくして、ます、よね?」|(広東語)
完全に停止した模擬操縦訓練機のハッチが、パカッと開いた。
ジムは中で首をだらんと垂らして、失神しているみたいである。
「ソイツはデカくて重いだろうから、お前らじゃ運ぶのは無理そうだな。
そこで寝かせておけ。次はお前らの番だぞ、さぁ、乗った乗った」
|(英語)
「え… い、今から、の、乗るんですか?」|(日本語)
「い、いや、あの、その、えーっと、お腹、痛い、です」|(広東語)
あんなのを目の前で見せられて、乗りたがる人間は居ないであろう。
二人の反応も当然である。
「いいから、乗れって、ジャクソンみたいにはやらないって言ってるだろ。
コイツは自分から体験したいって言うから、敢えてやったんじゃねーか」
|(英語)
いいから、早く乗れよお前たち、って顔してまた手のひらを振っている。
「さっきの続きのヨー軸の制御からやるんだよ。ある程度の回転数の制限は
かけてやるから、怖気づくなよ。大丈夫、死なねーよ」|(英語)
本当かなぁ、絶対ですか、嘘ついてませんか、と二人はビクビクしながら
模擬操縦訓練機に向かって行き、渋々と乗り込んだ。
「いいか、座ったら先ずは[座席]のボタンを押せよ。必ずやれよ。
そうじゃねーと、死ぬぞ? クルマに乗ったらシートベルトを締めるだろ?
あれと同じで、命を守る大事なことだ。理解したか?」|(英語)
「はい、了解です」|(日本語)
「わかり、ました」|(広東語)
死にたくない二人は、何を置いてもこれを押さないと、とボタンを押して
発光したのを視認し、身体が確実に固定されたかジタバタと動いて確認した。
「教官、押しました。固定はされてます」|(日本語)
「俺も、大丈夫、です」|(広東語)
「それじゃいくか。ほら、右に機体を向けてみろ。90度だぞ」|(英語)
そう言われて、二人は右足のペダルを踏み込んでみた。教官に教えられた
通りにソローっと、靴で紙一枚分を踏み込む要領で踏んでみた。
すると、模擬操縦訓練機は、ゆっくりと右に向きを変える。
「やった! 教官、なんとか出来ましたよ! 嬉しい!
なるほど、こうやってじわっと踏み込むんですね」
|(日本語)
「あぁ、本当だ、これ、こうやるん、ですね。さっきは、訳も分からず、
思いっきり、踏み込んじゃった、から、駄目だった、のか」|(広東語)
二人の乗る模擬操縦訓練機は、ゆっくりと右回転して90度近く回頭した
所で停止した。ただ、ジムがやった様にピッタリ指示された角度で停止して
いない。少しズレているし、停まる時も微妙にぎこちない。
初心者が運転する自動車の停止に似ている。カックンブレーキである。
「まぁ、そんなモンだろう。さっきと比べるとかなりマシだな。
な、ペダルの踏み加減で全然違うだろ? クルマの運転だってそうなんだぞ。
信号が青に変わったからって、アクセルペダルをベタ踏みしないだろ?
上手い操縦ってのは、そうやるんだよ。覚えておけよ」|(英語)
モニター左上の小窓の教官が、ニヤケ顔ではなく、真面目な顔で褒めている。
人間褒められると意外と嬉しいし、やる気も起きる。
最初に嫌な思いをさせた後、上手くやらせて自信を持たせるのが、サンダー教官
のやり方なのかもしれない。
「今度は、操縦機をこっちで動かすから、それを足のペダルで停めてみせろ。
ほらやるぞ」|(英語)
教官が操作して、ジワーッと模擬操縦訓練機が左向きに回転する。それを足の
ヨー軸制御ペダルを踏んで調整して静止させろ、と言う訓練である。
「[回頭角速度計]の針が左に振れているだろう? それを真ん中で静止する
ようにペダル操作してみせろ。針と同じペダルじゃ無いぞ。逆向きのペダルを
踏むんだぞ。右だからな」|(英語)
[回頭角速度計]を赤い丸で点滅させ強調表示して解りやすくしてやり、
ペダルの踏み方も教授してやった。二人はそれを必死で聞き、何とか操縦機の
回転を停めようとペダルを踏み込んでいた。
「あぁ、中々停まらない・・・ クルマと違って足で左右の操作って、意外と
難しいですね。こうかな? うーん、駄目か・・・」|(日本語)
「いや、先程に比べたらかなり上達はしてる。その調子で練習してろ、身体で
覚えるんだ。自転車と同じだな。出来るまでやれよ、俺はジャクソンを覚醒
させて、違う訓練をやらせるから」|(英語)
そう言うと、ジムの乗る蓋の開いた模擬操縦訓練機の前に行き、コック
ピットの蓋の中を覗き込んでいる。
「おい、ジャクソン、起きろ! 訓練の続きをやるぞ。おい、返事しろよ」
|(英語)
頭の中に入れられた機械で、強制的に意識を覚醒させているのであろう。
暫くすると、だらんと垂れていたジムの頭が動き出した。
「あぁ、糞ったれ、またやられた・・・
教官、あんた、わざとやってるだろ? 俺を甚振るのが楽しいのかよ。
悪趣味なおっさんだな」|(英語)
正気を取り戻したジムは、首を振り両手で顔を拭って目の前にいる教官に
悪態をついている。二回も気絶させられたのである、文句の1つも言いたく
成るのは当然だ。
「まぁお前さんは根性が有るからな、ちょっと遊び心が出るんだよ。
可愛い子には旅をさせよって諺があるだろ? それだよ、文句言うな」
|(英語)
再度、ロール軸とピッチ軸の訓練をやり始めた。ジムの場合、雄二と陳とは
違い、物覚えが良いのか天性の素質なのか、かなり自由に模擬操縦訓練機を
操作している。
「まあまあだな。今度は自分で操縦して飛ばしてみるか? ヘリモードや固定
翼機モード、フリーモード、色々と有るんだがな。どれにする?」|(英語)
その問いかけに対して、ジムは即答した。
「ヘリだな。それを飛ばしたいから仕事を辞めて軍に入隊したんぞ?」
|(英語)
もう既に気絶させられた事を忘れているかのように、ニヤけた顔になっている。
「AH-64Dアパッチ・ロングボウか同軸反転のカモフKa-50ホーカム、
どっちが良い?」|(英語)
ジムの顔が笑顔から驚愕の表情になる。
「選べるのか? じゃぁアパッチにしてくれ。昔から乗るのが夢だった」
|(英語)
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




