第48話 操縦訓練 その3
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「おーい、チェン、ホンダ、お前ら生きてるか? 返事しろよ」
|(英語)
また呑気な声でサンダー教官は、二人の乗っている模擬操縦訓練機
に声をかけている。
「おい、教官どうした、ホンダとマイケルの二人が何かやらかした
のか? あんまり俺みたいにイビってやるなよ。
アイツらは乗り物には不慣れなんだしよ」|(英語)
自分からは二人の様子が見えないため、教官に質問している。
まだ模擬操縦訓練機同士の通信は出来ないのである。
ジムからは、他の操縦機の中の二人の様子を知る術がないのだ。
「俺がやったんじゃねーよ。あいつらが鈍臭すぎるんだ。
ちょっと先が思いやられると頭を抱えている所だ」|(英語)
そう教官はジムに答え、やれやれどうしたもんか、と思考をめぐら
している。
「おーい、チェン、起きろよ。大丈夫か? ホンダ、訓練機を停めたぞ。
生きてるか? おーい! 返事しろ」|(英語)
二人に声をかけているが、返事がない。
「うーん、め、目が、回って・・・気持ち悪い、です」|(広東語)
「き、気持ち悪い、吐く・・・教官、外に出してください、吐く」
|(日本語)
教官に無理矢理覚醒させられたのか、死にそうな二人の声が聞こえてきた。
中で吐かれると掃除が面倒だと考えたのか、直ぐにパカッと蓋を開けた。
「ほら、早く出て吐いてこい。中で吐くなよ。お前たちに掃除させるぞ?」
|(英語)
だだだ、と二人は勢いよく降りて、直ぐにトイレに走っていった。
「教官、俺はどうする? もう少しコイツに乗っていても良いか?
出来れば、ローリングやピッチングの教習もやりたいんだが」
|(英語)
ジムは一人だけやる気満々である。欲しかった玩具を与えられた子供の
様に、目がキラキラと輝いている。まだまだやり足りないという気持ち
なのであろう。
「あぁ、そうか、やっても良いが、あんまり調子に乗るなよ。
そうだな、動きに制限を加えるか? それとも無しでやるか?
無しだとキツイぞ」|(英語)
かなり真面目な顔が、ジムの乗り込んでいる模擬操縦訓練機のモニターの
左上の小窓に表示されて、聞いてきている。
「制限ってなんだ、それによっては考える。どんなモノなのかを教えてくれ。
もしかして最初のヨーイングの時にも、それをやってくれれば吐かずに
済んだんじゃねーのかよ・・・」|(英語)
口調は少し不満げではあるが、表情は綻んだままである。
恐らく楽しいのであろう。
「制限ってのは、最大の回転数だな。アクセルペダルを思い切り踏んでも
フルスロットルには成らない、そう考えれば理解できるか?
操縦桿を目一杯倒しても勢いよくグルグルと回転しない。そう云う事だ」
|(英語)
それを聞いたジムは、なるほどそういう事かと頷き、教官に答える。
「なるほど、理解した。やってくれ。それなら初めてでも行けると思う。
ロール軸とピッチ軸も練習したい。早く慣れたいんだよ。
コイツ、中々面白い」|(英語)
「よし、ロールとピッチの回転レートを落としてやる。あんまり重力加速度は
掛からないはずだ。先ずは、球体の頭を45度上げてみせろ。45度上だぞ。
[人工水平儀]をよく見ろよ。あと[機種上下計]だ、聞き慣れないかも
しれないが、上下のピッチの角度を表示する。右上のコイツだ」|(英語)
[方位計]の上に[機種上下計]が表示されそれが赤丸で囲まれて点滅して
いる。これと[人工水平儀]で機種の上下の向きを確認しろとの事。
「何となく解る。これで機体のピッチ角が解るんだな。なるほどな。で、ロール
角度の表示はどれだ? これか? [回頭角速度計]の上に今黄色の丸で
囲まれて点滅してるな。コイツは何と呼ぶんだ?」|(英語)
「それが[機種左右計]だな。ロール角度を表示する。教えても居ないのに、
よく解るな。
流石ヘリパイロットを目指すだけはある。基本の姿勢の確認は「人工水平儀]
でやるんだ。真ん中の空中に浮いた球体があるだろ、ヘリや飛行機と同じモノ
だが、コイツのは立体表示になってる。
そこのX、Y、Zの三軸の目盛りで見ても良いが、お前の好きにしろ」
|(英語)
その言葉を聞くと、チラッと視線を移動させ画面の表示を確認して、直ぐに
教官に聞いてくる。
「了解だ。もうやって良いか? 機種上げを45度だな? やるぞ」|(英語)
ジムは右腕に握る操縦桿を少し手前に引いた。すると球体が上を向く。
[人工水平儀][機種上下計]をチラッと見ながら、操縦桿の引き具合を調整
してピタッと模擬操縦訓練機を上向き45度で静止させた。
「これで良いのか、どうだ?」|(英語)
「よし、やるじゃねーか。今度は左に90度ロールさせろ。機種上げは
そのままだ」|(英語)
「了解。左90度ロールだな」|(英語)
右腕で掴む操縦桿を左側に静かに倒して模擬操縦訓練機を左向きに90
度傾ける。これも[機種左右計]を確認しながらピタリと停める。
「ほほぉ、やるじゃねーか。次にヨー軸で180度右に回頭、更に左に90
度ロール。その後にピッチ軸での45度機種上げをやってみろ」|(英語)
「了解、180度右にヨー軸回頭、ロール軸左に90度、ピッチ軸上げ45度」
|(英語)
教官の指示を復唱し、それを実行に移す。
クルリと模擬操縦訓練機が180度機種を右に回す。その後、左に90度
回転して機種を45度下に向けた状態になる。その後に45度機種を上げて、
元の水平姿勢に戻った。但し、最初の状態からは丁度真後ろを向いた向きに
なっている。
「よし、最後に180度左にヨー軸回頭をやってみせろ」|(英語)
教官は最後の指示を出す。
「了解、180度左にヨー軸回頭」|(英語)
ジムは左足でペダルを踏み込み、左に機首方向を180度回転させた。
それをやると、模擬操縦訓練機は教官に正対し一番最初の状態に戻った。
「おもしろいぞ。気に入った。教官、コイツを俺にくれ。抱いて寝る」
|(英語)
ジムは操縦席の中で溢れんばかりの笑顔で笑いながら、教官に話しかけ
ている。
「そんなに気に入ったか。デカいからベッドで抱いて寝るのは無理だろうが、
そいつはお前の専用にしてやるし、外装を好きな色に変更もしてやる。
名前を付けるのも許可するぞ」|(英語)
またいつものニヤけた顔である。
「そうか、これから毎日乗れるのか?
色は黒が良い、名前はジェミーにする」|(英語)
ジムの顔も教官と同じくニヤけている。これから毎日ジェミーに乗るのか、
面白いじゃねーか、たっぷりと楽しませてもらおうか、という顔である。
「カミさんの名前かよ、ラブラブだな。まぁ良いだろう。あとで名前も入れ
といてやるよ」|(英語)
そこに雄二と陳がフラフラになりながら戻ってきた。すっかり胃の中の物を
トイレで吐いてきたのであろう。
「あ、ジムさん、まだやってるんですか、凄いなぁ。でも、こんなに自由自在に
動かせるんだ・・・ ちょっと面白そうかも」|(日本語)
「これ、向き不向きが、如実に出ま、すよね。俺は、絶対に向いて、ない、
と思うな・・・」|(広東語)
戻ってきた二人を見た教官が、こっちに来て見てみろよ、と人差し指をちょい
ちょいとやっている。それを視認した二人は、教官の後ろに立ってジムが乗機
して操縦する模擬操縦訓練機の動きを観察していた。
「お前ら、ジャクソンを見習えよ。な、あんな風にやって操縦するんだよ。
今度は、足のペダルを親の敵みたいに踏みっぱなしにするんじゃねーぞ?
先程も言ったが、足の裏で紙一枚分を踏み込む。腕で動かす操縦スティック
はソローっと動かすんだ。
熱り立った自分の股に付いてる息子を、ブンブン勢いよく振り回す奴は居
ないだろ? ゆっくりと、且つ確実に操作するんだ。
ペダルを踏むか離す、操縦桿を倒すか離す、その二つしか無い1か0の
やり方じゃ駄目なんだ。その間に、数十、数百のポイントがあるんだと思って
じわっと操作しろ。理解したか?」|(英語)
教官は二人に丁寧に操縦に対する心構えを説明してやっている。その説明を
真面目に、ふむふむと頷きながら聞いている。
「そうだ、ジャクソン、いい感じだ。
どうだ、模擬飛行ってモードがあるんだが、試してみるか?
今のお前さんなら平気かもしれんな。どうする?」|(英語)
ニヤけた表情が教官の顔から消え去り、今は真剣眼差しでジムに質問して
いる。
「どんなモノだ。内容を聞かせてくれ。訳の分からんモノはヤバい。
理解した上でやるかどうか判断する」|(英語)
こちらも真剣な声である。
「ほほぉ、学習したな。良いだろう。教えてやるよ。模擬飛行モードは文字
通りその模擬操縦訓練機に入った状態で飛行を体験するんだよ。
お前は座って観てるだけで良い。
コイツがどんな機動をするかの体験コースだ。どうだやるか?
キツイかもしれんぞ」|(英語)
「そうか解った、やる。観てるだけってのは気に入らんが」|(英語)
即答であった。今はまだ降りるつもりは無さそうだ。
「左右の操縦桿を持っていても、意味は無い。身体の固定にしかならん。
キツイと思ったら[降参]と言えよ。即時に停めてやる。理解したか?」
|(英語)
教官は、左の眉毛を上げて、ジムに確認をとっている。
「解ったよ、教官。[降参]と言えば良いんだろ。やってくれ」|(英語)
ジムは、やる気満々である。雄二と陳は、その二人のやり取りを聞いて
え、大丈夫、さっきあれ程吐いてましたよね? という顔で心配している。
「やるんじゃ無かった、と後悔はするなよ。ただ、楽しいぞ。
前に来た空軍のパイロットだった奴は楽しんでいたな。最初にやって耐えて
喜んでいたのは、後にも先にもソイツだけだ。良いのか、やるぞ?」
|(英語)
「やってくれ」|(英語)
その言葉を聞いた教官は、指をちょいちょいとやって、自動掃除機械を呼び
出した。またゲロを吐きまくるだろうと予想したのであろう。
「覚悟しろよ。最初だから、一番簡単な奴にしてやるよ。米軍のアクロバット
飛行チーム、サンダーバーズとかどうだ?」|(英語)
またニヤけた顔でジムに語りかけた。
「F-16か、まぁそれで良い。出来ればヘリの方が良かったんだがな」|(英語)
まぁ良いか、みたいな軽い感じの答えである。
「よし、じゃあ始めるぞ。モニターの表示を360度全天周表示に切り替える。
どっちを向いても空だからな。気持ちがいいぞ」|(英語)
その言葉の後、ジムの乗る模擬操縦訓練機の内部は、正面のモニター表示が
無くなり360度全周が飛行場にいる風景に代わった。自分の座る椅子と身体
以外は、全部外の景色である。
前に立っていた教官、雄二、陳の姿はもう無い。色々と有った計器も無くなり
[人工水平儀]だけが残っている。
外は、離陸前の駐機状態の滑走路上である。
「今から離陸滑走だ。重力加速度も再現するからな。6Gくらいは耐えろよ」
|(英語)
模擬操縦訓練機の中の景色は、滑走路の真ん中にいる状態である。
ただ、ジェット機の発する耳を劈く高音のエンジン音やアフターバーナーの轟音
もしない、とても静かなのである。
突如、シートに押し付けられる加速感を覚えたと思った途端、前の景色が
変化する。滑走路がどんどんと後ろに流れていく。
発進後3秒足らずで時速200kmを超える速度に達すると、音もなく地面から
浮き上がる。ジムはその重力加速度に耐えながら、前方を観る。
速い。こんなに速い乗り物は初めてだ。
離陸後、ほぼ45度に近い迎え角で一気に上昇する。恐らくアフターバーナー
点火での加速であろう。そのままインメルマンターンで離陸した滑走路の反対方向
に機種が向く。背面飛行の状態である。
そこからゆっくりとハーフロールで水平飛行に戻ったかと思ったのもつかの間、
その後直ぐに4ポイントロールのマニューバに移行する。右に90度ロールして
暫く飛行、それを4回繰り返して水平飛行に。
そこから、また45度上昇して途中でハーフロールで背面状態になり、その後
ハールループに入りスプリットSの機動になる。
かなりのGが身体に掛かるが、ジムはそのグルグルと変わる地平線に見入っている。
「す、凄い・・・」|(英語)
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




