第46話 操縦訓練
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「お前ら、最近はハムスター訓練でかなり走れるように
なってきたな。良い感じだ。1時間位じゃ屁でもないか?」
|(英語)
午後のいつもの訓練の最中に、サンダー教官が三人に声を
掛けてきた。数日やり続けてきた甲斐があるのか、誰も吐か
ないし音を上げずに軽くジョギングが出来るほどに成って
きていた。
「おぉ教官、結構余裕だぞ。何だ、まだGを上げるのか?
今はいくつなんだ?」|(英語)
ジムが意外と余裕を持って、巨大人間用”回し車”の中で
ジョギングしながら教官に答えている。
「そうだな。ジャクソン、お前は今は2.5だし、気圧も
0.8だな。そろそろ3.0まで行くか?
こっちの二人も2.0でも大丈夫だし、気圧も0.9だな」
|(英語)
かなりの進歩である。ジムは元々マッチョで見た目の変化は
殆ど感じられないが、雄二と陳の体つきは以前と比べると段違い
になってきている。腕と脚が確実に太く逞しくなっている。
「教官! 俺、最近何となく腹筋が割れてきたような気がするん
ですけど、気の所為ですかね?」|(日本語)
「俺も、前と比べ、ると、身体が、何となく、軽く感じる、
ように、成ってきま、した」|(広東語)
二人とも嬉しそうである。自分の身体の変化を身にしみて実感
すると、訓練にも一層身が入るというのもである。
「そうか、だろ? な、このハムスター鍛錬は効くんだ。
地球じゃこんなに早くは効果は出ないからな。数ヶ月、下手する
と数年掛かる所を、コレだと数週間で出来るんだ。
そろそろ操縦訓練にも耐えられるか。
どうだ、これからやってみるか?
ジャクソン、お前さんが気に入りそうな訓練だぞ」|(英語)
その教官の言葉を聞いて、走りながら目をキラキラと輝かせて
興奮した状態で質問を投げかけてくる。
「前から焦らしていた、その操縦って一体何に乗るんだよ?
いい加減に教えろ」|(英語)
「そうだな、このハムスター訓練の後にでもやるか。
だがコレ以上にキツイぞ。耐えられるか?」|(英語)
サンダー教官は、いつものようにニヤリと笑う。だが肝心の
何に乗るかに対しては答えない。
「まだ、キツイ訓練があるのかよ・・・ ったく、酷ぇもんだ
と言うか、いつになったら何に乗せるのか教えるんだよ・・・」
|(英語)
ジムは、またブツブツと独り言を呟いている。しかし、顔は
嬉しそうだ。ニヤけながら”回し車”の中で走っている。
「よし、お前ら、停まったらソイツから外に出ろ。違う場所に行く。
そこには模擬操縦訓練機があるんだ」|(英語)
ゆっくりと三台の巨大”回し車”を停めて、三人をそこから出して
俺に付いてこいと手を振るジェスチャーをしている。
「他にも、訓練所があるん、ですね。この基地、意外と広い、んだ」
|(広東語)
陳が、他にもここと同じ様な体育館みたいな訓練場が有ると
聞いて感心している。
「あぁ、あそこが一番広い場所だな。こっちだ」|(英語)
[高重力訓練場]を出て、更に奥に向かう。そこも同じ様な体育館
に似た建物である。入り口には[模擬操縦訓練場]と表示してあった。
「フライト、シミュレーター、でも置いてあるん、ですか、ねぇ?」
|(広東語)
その入り口の上にある表示を確認して、陳が疑問を呈する。
「シミュレーターって言うと、パイロットの人が中に乗って操縦訓練
をやる機械でしょ? 何だか楽しみだなぁ」|(日本語)
「俺、前に陸軍の基地でヘリ、アパッチ・ロングボウのは見学で見た
ことはあるぞ。乗ったことは無いけどな」|(英語)
中に入ると、直径約2メートルの三台の白い球体が鎮座していた。
どうやら、これが模擬操縦訓練機のようだ。
「何だこりゃ? この球ころがシミュレーターなのか?」|(英語)
ジムがそれを観て落胆している。普通の航空機のシミュレーター
といえば四角くて下部は油圧シリンダーで支えられて、乗り物の動き
を再現するような仕組みになっているが、この球体は、単に床に置か
れているだけなのである。だか、よく観ると、後ろには支柱のような
物があり、その球体を支える構造になっているみたいである。この
支柱で支えられて動くのであろうか。
「これが模擬操縦訓練機だ。どうだ凄いだろ? これでお前らが乗る
機械の操縦の訓練をやるんだよ」|(英語)
教官が、さぁどうだ、と言わんばかりに腕を球体に向けて広げて
見せた。
「この球で? 何処から乗るんですか? ドアが無いですけど。」
|(日本語)
「まぁ、ドアが、見えないのは、いつもの事、です、けど・・・」
|(広東語)
「今日は取り敢えずは、ヨーイングの訓練だな。一度に全部を
やると頭がこんがらがるし、多分普通の奴は無理だな。
で、誰からやる?」
|(英語)
三人に向かって人差し指を突き出し、どれにしようかな?
みたいな選ぶ仕草をやっている。
「教官、ヨーイングってそもそも何ですかね? 何のことか意味が
解りません」|(日本語)
雄二が手を挙げて質問してきた。解らないのも当然であろう。
陳も、初めて聞く言葉でイマイチ理解していないのか、雄二の言う
質問に対してうんうんと頷いている。
「あぁ、そうか。先に座学で教えるべきだったか。まぁ良い。
ジャクソン、お前はヘリパイロットに成るために軍に志願して
入隊したんだよな。それくらいは知っているだろ。
前に出て、ホンダとチェンに教えてやれ」|(英語)
ジムに指を差し、お前こっちに出て教えてやれ、みたいに言う。
そう言われたジムが、前に居る教官の横に立って説明しだした。
「ヨーイングだけで良いのか? 左右の回転方向の制御だな。
クルマで言えばステアリングで左右の方向の操作をするだろ。
あれだよ。ホンダ、マイケル、解るか?」|(英語)
ジムが簡単に説明をしたが、二人はポカンとした表情である。
「えーっと、ハンドル操作の事ですかね? 右に切れば右に向くと
思えば良いんですかね? 合ってますか?」|(日本語)
「そうだ。だがヘリコプターの場合、ヨーイングは足のペダルで
操作するんだ。クルマとは違う」|(英語)
ジムは、腕でクルマの運転をする、ハンドルを回すジェスチャー
をやっている。その後、足首でペダルを踏む動作をやった。
「は? じゃあ、足で左右の向きを操作するんですか? だったら
アクセルとブレーキの操作はどうやってやるんです?」
|(日本語)
雄二が頭を傾げながら質問している。陳は自動車の運転をしない
のか、さっぱり解らないって顔をしている。
「アクセルはクルマの操作で例えると、運転席と助手席の間にある
サイドブレーキみたいなレバーの操作でやる。
ブレーキなんて物は付いていないぞ」|(英語)
ジムは、右腕でサイドレバーを引き上げる動作をやって説明する。
「サイドブレーキを引いたらアクセルで、ブレーキが無いって・・・
良く解らない乗り物ですね。よくそんな物が空を飛びますね」
|(日本語)
雄二が混乱している様子である、普段馴染みのない乗り物の操作
方法を口頭で説明されても、俄には理解できないのも当然であろう。
「だから、クルマじゃねーっての。飛行機も似たようなもんだぞ。
飛行機の場合は、足のラダーペダルを両方一緒に踏めばブレーキ
だったかな?」|(英語)
「え? ハンドル操作とブレーキを兼ねているんですか?
無茶苦茶じゃないですか・・・ よくそれで空を飛びますね。
頭ゴチャゴチャにならないんですか?」|(日本語)
雄二が余計に混乱している様子だ。陳は、もう諦めたのか聞いて
いるのかどうかも怪しい。
「飛行機はブレーキなんて着陸の時にしか使わないんだよ。飛んだら
ブレーキなんて無い。エアブレーキやスポイラーはあるが、それも
着陸の時だけだ、普通は使わん。
それはフラップと同じ様に、別に操作するレバーがあるんだよ」
|(英語)
ジムが雄二に丁寧に教えてやっている。が、更に混乱している。
スポイラーって何、火事の時に水が出るやつですか?
と隣の陳に聞いている。陳は、それはスプリンクラーじゃないの?
と教えている。
「えー? 教官、この乗り物もそうなんですか? 難しくて運転
なんて出来るかな、あんまり自信がないです・・・
俺、クルマの運転も偶にしかやらないし」|(日本語)
「あぁ、お前さん、流石にヘリパイロットを目指していただけあるな。
そうだな、コイツは三次元的な動きをするから複雑なんだよ。
だから先ずはヨーイングの操作だけの訓練をやる。ジャクソンの
言う通り、足の左右のペダルで左右の回転の制御だ。覚えておけよ。
理解したか?
おい、チェン、お前ちゃんと聞いてるのか?」|(英語)
教官は、陳に指を差して聞いている。
大丈夫かコイツ?って表情である。
「実は、俺、クルマの、運転免許を持ってないん、ですよ。
乗ると、酔う、から。だから、乗り物の、話をされても、イマイチ
よく解りま、せんよ・・・」|(広東語)
陳は、もう、何が何だか・・・みたいになった顔で、頭の上に疑問符
[?]を出している状態でいる。
「大丈夫だ、乗り物酔いの理由は三半規管の乱れと言うか錯覚か?
それも身体に入れた機械で何とかするから、心配するな。
最初は戸惑って酔うかもしれんが、その内に慣れる。
と言うか、慣れるまでやらせるからな。覚悟しろ」|(英語)
その教官の言葉を聞いて、陳が今にも死にそうな顔になっている。
「それじゃあ、ジャクソン、お前さんが最初にやるか?
ヘリパイロット候補生なら説明も要らんな。コイツが回転するから、
足のペダルで方向を安定させろ。それが最初の訓練だ。
ほら入れ」|(英語)
教官がそう言うと、白い球体の前面が開いた。パカッと上に蓋が
開くような感じでドアが開く。中には一人がやっと入れる程の空間
に椅子が一脚ある。
その椅子は自動車用のレーシングシートの様な形になっている。
普通であれば4点式や6点式のシートベルトがある筈だが、この椅子
には何も装備されていない。
恐らく、教官の乗っていたご自慢のウイリスジープもどきと同じで、
身体が座席に固定される仕組みなのであろう。
左右の腕を置く場所には、サイドスティックが有る。これが操縦桿
なのかもしれない。開いた蓋の内側がモニター画面に成っているようだ、
これで外が見えるのであろう。但し、今は表示が消えている。
「これに入るのか? 俺には少し狭い様な気が・・・いけるか?」
|(英語)
自分の180cmを超える巨躯には窮屈そうな見た目の椅子なので、
この狭そうな球体 (およそ直径2メートル)の中に入るのを躊躇して
いる様子だ。
「多分大丈夫だろう、以前にお前くらいのデカい奴が来た時も乗って
いたから心配は無用だ。つべこべ言わずに、早く乗れよ。
お前さん、パイロットに成りたかったんだろう?
あこがれのコックピットだ、喜べよ。
大体、お前さんが乗りたかった戦闘ヘリもこれ位じゃねーのか?
俺は詳しくは知らんが戦闘ヘリのコブラの横幅が、1メートル
(3.3ft)程じゃなかったか?」|(英語)
教官は、及び腰でじれったい奴だと思ったのか、急かすように、
早く入れとジムに向かって手を払っている。
ウジウジしてると、そのデカいケツを蹴っ飛ばすぞ!
みたいな勢いである。
「まぁ確かにコブラは狭そうだし、アパッチも似たような物か?」
|(英語)
ジムはその大きな身体を折りたたむようにして、白い球体の中に入り
込んでいく。よっこらしょっと、みたいな感じで座ったようだ。
「座ったか? それでは椅子の左にある[座席]と表示されているボタン
を押せ。それでシートベルトみたいに身体が椅子に固定される。
俺のクルマと同じ仕組みだ。理解したか?」|(英語)
ジムに対して、これだと指を差して教官がボタンの位置を教えている。
「押したぞ。これで良いのか? ボタンが光ったぞ。お、確かに身体が
シートに固定された。中々良い感じだな。
そうか、これがコックピットか・・・」|(英語)
狭そうなので嫌々というか渋々と乗り込んではいたが、いざ座って
みるとまんざらでもない様子で顔の表情が綻んでいる。
どちらかと言えば凄く嬉しそうである。ジェットコースターに乗って、
動き出すのをワクワクして待っている子供の様な顔と言えば良いのか。
「さて、これからヨーイング訓練をやるんだが、覚悟しろよ。
今まで音を上げなかった奴は、一人も居ないからな。
それでもやるか?」|(英語)
教官は、またニヤリと笑っているが、目は笑っておらずかなり真剣だ。
この訓練は本当にヤバいのかもしれない。
「おぉ、やってくれ。足のペダルでヨー軸の回転の制御だけをやれば
良いんだろ? なら簡単じゃえねーかよ」|(英語)
座っているジムは、自信満々の顔をしている。
教官はと言えば、俺は忠告したぞ、お前がやると言ったんだからな?
と言う感じの顔である。
「さて、やるぞ。コックピットの蓋を閉める。準備しろよ。左右の
ジョイスティックを持っていても良いが、今は動かしても操作は出来
ないぞ。身体の支えくらいにしか使えん。覚えておけよ。
良いんだな、本当にやるぞ? 足のペダルで操作だ、良いか?
やるぞ、覚悟は良いか?」|(英語)
今回は意外としつこいくらいに確認してくるな、そんなにヤバい
訓練なのかよ? とジムは疑問に感じているが、期待の方が上回って
いるのか、それ程は気にしていない様子である。
「お前ら二人にも回転が分かりやすいように、表面の色を変えるか。
右半分が白で左半分を赤にするか。おい、お前たち二人も良く観て
おけよ。後でやるんだからな」|(英語)
またいつもの様にニヤリと笑う。
その後、球体の色が白と赤のツートンカラーに変化する。
暫くすると、球体はゆっくりと右回り、上から見て時計回りに回転を
始めた。
「おいジャクソン、良いか? その回転を足のペダルの操作だけで
停めてみせろ。正面の画面を俺たちの方に向けるんだ。
理解したか?」|(英語)
最初はゆっくりだったのが、どんどんと早い回転数に成っていく。
それを見ていた雄二と陳が驚いている。
「えぇ・・・こんなに早いんですか。中のジムさん大丈夫なのかな?」
|(日本語)
「見ている、こっちが、め、目が、回りそう、です、よね・・・」
|(広東語)
あまりの回転数に、二人は心配になってきているみたいである。
恐らく、1秒間に3回転はしてるのではないだろうか。
「おいジャクソン、左足でペダルを踏まないと回転が停まらないぞ。
ゆっくりと踏んでみろ。おい、聞いてるか? おい!」|(英語)
だが、全く反応が無い。雄二と陳は、え、この回転数は大丈夫なの?
これ結構ヤバいのでは? と心配そうな顔だ。
「あ、駄目だな。こりゃ多分中で失神してるな。だからキツイと言った
んだよ。少し回転数が高すぎたな・・・」|(英語)
教官は、少しやりすぎちまったか?と少しばかり首を傾げつつ後悔
してる表情で、球体の回転を少しずつ遅くした。
「おーい、ジャクソン、生きてるかぁ? 生きてるなら返事しろよ」
|(英語)
教官は呑気な感じで中のジムに聞いている。いや、これ大丈夫な雰囲気
じゃないですよ・・・と雄二と陳の二人は青い顔である。
もしかして、後でこれを俺たちも中に入って同じことをやれって言うの?
と青ざめた顔だ。
「うーん、お、俺、何を・・・」|(英語)
漸く、弱々しいジムの声が聞こえてきた。
「な、楽しいだろう? どうだ初めて乗った感想は?」|(英語)
またいつものニヤけた顔である。意地が悪い。
教官は、球体の回転を完全に停止させて、ドアを開いた。
ジムは[座席]のボタンを押して、椅子の固定を解除して立ち上がり、
球体の中からヨロヨロと出てきた。
その途端に、四つん這いになり床に盛大に吐いた・・・
「うげぇぇぇ・・・おぇぇぇ!」|(英語)
「あ、あーあ・・・」|(日本語)
「ひ、酷い、です・・・」|(広東語)
二人ともそのジムの様子を見て、顔が引き攣っている。
「な、だから言ったろ、ハムスター訓練よりもキツイって。
多分、今ので5Gくらいだな。これでもまだまだ弱いんだぞ。
これ9Gまでやるからな。それに慣れたら12Gあたりにして、
それにローリングとピッチングも組み合わせてだな」|(英語)
ゲロを吐ききったジムが、その教官の言葉を聞いて、蚊の鳴く
ような死にそうな声で・・・
「こ、殺す気か・・・」|(英語)
と呟いて、また気を失った。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




