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第45話 超聴覚

作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。

多分、内容とは関係ないと思います。


「おい、お前ら出来るように成ったか? 昨日に宿題だって

 言ってた赤外線視、どうだ?」|(英語)


 サンダー教官は、座学の一番最初に三人に聞いてきた。

で、その三人はと言うと・・・ジムは自信満々の顔、陳は

そこそこ出来るかなって顔、雄二は完全に頭を垂れている。


「おいおい、お前さん出来てないのかよ・・・

 あれからハムスター訓練の時もやってたか? そろそろゲロを

 吐かなくなって、褒めてやろうかと思ってたのに」|(英語)


 教官は、やれやれという表情で雄二を見ている。


「教官、どうしても赤外線だけ出来ないんですよ。紫外線と

 X線のやり方は何とか会得したと思うんです。二人にも教えたら

 出来るようになったけど・・・俺だけ何故か赤外線だけは

 見えないんですよ、向いてないんですかねぇ・・・」

 |(日本語)


 雄二は、一人だけ項垂れて悄気げた様子である。


「おかしいなぁ、それが出来たら普通は出来る筈なんだがな。

 まぁ、その内自然と出来るようになるだろう。

 今日はだな・・・そうだな。耳にするか、どうだ?」|(英語)


 教官は雄二の言うことを聞いて、また首を傾げている。


「耳って何だよ。今度は超音波が聞こえるように成るのか?

 それとも、世界中の人間の声が聞こえるように成るのか?」


 ジムが怪訝そうな顔で教官に聞いてみる。


「何だ、お前は勘がいいな。そうだな、可聴周波数を広げるのと、

 あと、お前らイルカを言っているか?」|(英語)


 三人に向かって、また何時ものようにニヤリと笑う。


「イルカというと、海にいる哺乳類、です、よね。

 水族館とかで芸を、する、とか?

 俺は実物を見たこと、ない、ですけど」|(広東語)


 陳が教官に答える。一体、この人は何を言いたいんだろう?

という表情をしている。


「そうそう、俺も直に観たことは無いんだが、アイツらは海中で

 超音波で会話するのか? あと、蝙蝠を知っているか?」

 |(英語)


 教官は右手で魚のような口を作りパクパクとしたジェスチャーを

やっている。


「あの、確か夕方になると何処かから出てきて、空を飛んでいる

 小さい哺乳類ですかね?」|(日本語)


 雄二は日本で実物を見たことが有るのだろうか、意外と知って

いるみたいだ。


「日本にも居るのか? 俺はそれも知らんのだが、アイツらは超音波を

 出して真っ暗な洞窟の中で壁にぶつからずに飛ぶらしいな」

 |(英語)


 ほほぉ、不器用だけどそこそこ物知りなんだな、という表情をしている。


「だから何の話なんだよ、今日は世界の動物の講義なのか? これも宇宙

 に行くには必要な事なのか? いまいち話の趣旨が解らん」|(英語)


 ジムが苛ついてきている。どうもアメリカ人は回りくどい言い方は

好きではないらしい。個人的な性格なのかもしれないが・・・


「勘が良いと褒めてやったのに、解らないのかよ。お前さん鈍いな。

 超音波を出して、中が何かが解る様に成れば便利だろ?って話だ」

 |(英語)


 またいつものニヤケ顔である。


「は? 何だそりゃ? そんな事が出来るのか、おいマイケルそうなのか。

 ホンダお前は蝙蝠を見たことあるのか?」


 ジムがキョロキョロと首を振り周りに聞いている。因みに、座学の時間は

いつも陳、ジム、雄二の順番に座っている。理由は特には無いのだが、一番

最初にそう座ってから、何となく決まった席順だ。


「蝙蝠は日本にも居ますよ。小さい鳥、そうですねスズメくらいの大きさ

 ですかねぇ。母ちゃんだったか、父ちゃんか、どっちか忘れちゃったけど、

 子供の頃に鳥が飛んでるねって言ったら、あれは鳥じゃない蝙蝠だよ

 と教わったんです。鳥は鳥目で夕方や夜には空を飛ばないけど、蝙蝠は

 その時間から飛び回って、虫を獲って食べるんですよ」|(日本語)


 ジムに聞かれた雄二が答えている。


「お前、意外と博識だな。そうなのか。俺アメリカに居た時に見たこと

 なんて無いぞ。俺の家の近所にも居たのかな?」|(英語)


 ジムは、隣に座る雄二の方に向き直し、興味深げに話を聞いている。


「蝙蝠は世界中に居ると思いますよ。吸血鬼の手下でしたっけ?

 アメリカの映画とかでも良く出てきますよね? バットマンにも

 出てくるじゃないですか」|(日本語)


「中国だと、蝙蝠を食べる、地域もあり、ますよ。

 俺は食べたことは、ない、ですけどね。少し前に、世界中で流行った

 新型コロナウイルスも、中国の蝙蝠を、食べる習慣から、広まった

 って説も、あり、ます」|(広東語)


 陳も蝙蝠の件に興味が出てきたのか、話に入ってきている。


「なるほどな。俺は見たこと無いだけで、俺の故郷のどこかにも棲息して

 るんだろうな。

  にしてもマイケル、それ初耳だぞ、中国人って本当に何でも食べるんだな。

 コロナはなぁ。アメリカでも死者がたくさん出たってニュースを見たな。

 というか教官、蝙蝠がどうしたんだよ。誤魔化される所だったぞ!」

 |(英語)


 ジムは、そう言えばそうだった! みたいな顔で教壇に起つサンダー教官に

文句を言い出す。雑談に話が逸れすぎである。


「いや、コイツの話が面白かったのでな。そうか、日本にはそんなに身近に

 蝙蝠が居るんだな。知らなかったぞ。

  それにしても中国人ってあなんな物を食うのか。ゲテモノ食いだな。

 まぁ久しぶりに地球の話を聞けて興味深かったんだよ、そんなに急かすな。

  で、本題だが、ジャクソンよ、お前は陸軍だったそうだが、潜水艦の

 ソナーを知っているか?」|(英語)


 それを聞いて鈍いジムもハッとした顔になった。そう云う事かよ・・・

という呆れているが納得した様子である。


「潜水艦やイルカそれとクジラは水中で音波を出すな。蝙蝠は地上と言うか

 アイツらは空中か、音波を出して周りを確認するよな?

 で、お前らもその能力を使えるぞって話だよ。理解したか?」|(英語)


 教官は、自分のおでこの前で手のひらをパッと広げて音波が出るジェス

チャーをやる、その後に両手を耳に持っていって聞き耳を立てる動作をやった。


「本当ですか、嘘臭い話、ですよ。そもそも、人間は、どこから超音波を、

 出すので、しょうか。そんな器官は無い、です、よね?」|(広東語)


 陳がその教官の話を聞いて、胡散臭そうな顔して質問している。


「お前さん、矢張り他のボンクラ二人に比べて頭が切れるな。

 そうだな、普通の人間にはそんな芸当は逆立ちしても無理だ。

  だが身体中に機械を入れられたお前らは別だ。出来るんだよ。

 ほら、やってみろよ」|(英語)


 自分の前頭部を人差し指でツンツンと指し示しながら、教官はそう三人に

告げた。


「やってみろと言われても、どうやるんですか? そもそも超音波なんて

 聞こえないから、出てるのかどうかが解らないじゃないですか」

 |(日本語)


 雄二も当たり前のことを言い出した。


「そうだな、お前らコレを見たことがあるか?」|(英語)


 そう言うと、教官は服の右の胸ポケットから銀色の小さい筒のような

物体を取り出した。キーホルダーみたいな短いキーチェーンが付いている。

それを自分の口の前に持っていくと・・・


「あ、それ犬笛だろ、俺知ってるぞ。昔、映画かドラマか忘れたが、

 同じ様な物を見たような覚えがあるぞ」|(英語)


 その様子を見たジムが、その銀色の筒状の物を指差しながら答えた。


「それって、犬笛なん、ですね、初めて、見た」|(広東語)

「俺も初めて実物を見ましたよ」|(日本語)


「そう当たりだ。今からこれを吹いてみるぞ」|(英語)


 そう言うと、教官は犬笛を口に加えてフーっと吹いてみせた。

しかしながら、何も音は聞こえない。


「何も、聞こえない、です、よね? ホンダさん、ジムさん、何か、

 聞こえ、ましたか?」|(広東語)


 陳が、横に座る二人に聞いている。


「いや別に何も・・・」|(日本語)

「何も聞こえないよな」|(英語)


 二人とも首を振って否定している。普通の人間には犬笛の出す音は

周波数が高すぎて聞こえない。当たり前な反応、回答である。


「じゃあ、今からお前らの身体の中の機械の機能の制限を解除してやる。

 それでだ、もう一度コイツを吹くと… 」|(英語)


 そう言うと、教官はまた先程と同じ様に犬笛を口に加えてフーっと

吹いてみせた。


「ギャー! 煩い、何コレ。え、これが犬笛の音ですか?」|(日本語)

「凄い、響くん、ですね。吃驚しま、した」|(広東語)

「いきなりデカい音で吹くなよ、小便をチビるかと思ったぞ・・・」

 |(英語)


 三人は物凄く驚いたようだ、いきなり普通のホイッスルを耳元で吹かれた

ような風に聞こえたのであろう。

ジムなどは耳を両方の手の平で塞いで、眼を丸くして驚いている。


「どうだ、聞こえたろ? こんな音がするんだよ。

 でだ、お前らのデコや身体中の機械からは超音波が出る筈なんだが、

 やってみろ。

 その反響音で色々と解る様になっているんだがな。どうだ?」|(英語)


 そう言うと、教官は教室を出て行ってしまった。暫く待つと、何やら白い箱を

両手で抱えて戻ってきた。


「この箱の中身を当ててみせろ。但しX線は使うなよ、チート(ズル)はするな。

 超音波を出して中身を透視してみろ。最近の地球の病院では、エコー検査って

 のをやるらしいな。その要領だよ」|(英語)


 教官は少し重たそうにその持ってきた白い箱を教壇の上に置きながら、

三人にそう告げる。


「エコー検査は知ってますよ。俺には3歳上の兄貴が居るんですか、その奥さん

 まぁ義理の姉ですが、妊娠した時にやったんです。そのエコー検査で撮影した

 お腹の赤ちゃんのポラロイド写真みたいなのを両親に持って来てたのを、一緒

 に見た事があります。三年くらい前かな?」|(日本語)


 教官の説明を聞いて、雄二がまた物知り顔で説明しだした。


「へぇ、そんな物が有るのか。話には聞いたことは有るけど、実際にやった

 ことは無いな」|(英語)


 隣のジムが関心している。陳も同じ様に雄二の話を聞き興味深げに頷いている。


「地球じゃ、そんな風に利用してるのか。だからお前らは、これからそれを

 自分らの身体でやるんだよ。つべこべ言わずに試してみろって。

  ついでに言うと、この箱は内側を鉛で覆っているからX線の透視は通じない。

 チート(ズル)無用だ」|(英語)


 それを聞いた三人は、黙って箱を見て集中しだした。


「両手を出して念じてみろ、それがやり易い方法なんだがな。どうだ?

 箱の中身が、超音波で聞こえて見えたか?」|(英語)


 サンダー教官は、そう言うと実際に自分の両手を前に出してやり方を三人に

教授してやった。


「はは、聞こえて見える? なんだそりゃ・・・」|(英語)


 教官の奇妙な言葉に思わずジムが吹き出してしまった。何を馬鹿な事を

言ってやがる、と思ったのであろう。

しかし、言われた通りに両手を前に出した、その直後・・・


「あ、これ、え! おいおいおい、マジかよ・・・

 教官、笑ってすまなかった。意味が解ったよ。

 音が観える。本当に観える、何だこれ、スゲーな」|(英語)


 ジムの顔が驚愕の表情に変わる。また先程のように眼を丸くしている。

どうやら教壇の上の箱の中身が、音で観えたようだ。


「おいジャクソン、今は答えを言うなよ、その机の上にあるノートに書け。

 それを二人に見えないように俺に見せろ。理解したか?

 ほら、書いて持って来い」|(英語)


 それを聞いて、ジムは慌てて授業用の電子ペーパーのノートに、見えた

中身を書き出した。

そして立ち上がり、教壇に近づいて他の二人には分からないように、書いた

内容をサンダー教官に見せて、ニヤリと笑った。


「うん、正解だ。お前さん、見かけによらず器用だな。赤外線も直ぐに

 出来るようになったし、ヘリコプターのパイロットを目指していただけ

 あって意外と素質があるんだな。褒めてやる」|(英語)


 教官はジムを指差しながら、結構やるな、という顔をしている。


「よし! よし! やったぞ! 俺が一番だ!」


 それを聞いて、ジムがガッツポーズを取って喜んでいた。

雄二と陳の二人は、まだ箱を見て集中している。


「あ、教官、見えました、やったー! 出来た、出来ましたよ!

 ずっと練習した甲斐がありました・・・凄い嬉しい!」|(日本語)


 雄二が半泣きになりそうな表情で嬉しがっていた。


「お前、答えを言うなよ、そこのノートに書け。チェンには見えない

 ように俺に見せろ。理解したか? ほら持って来い」|(英語)


 教官は、それをこっちに持って来い、と右手の手の平を上にして

ひょいひょいとやった。

 そして、雄二が持ってきたノートに書いた答えを見た教官は・・・


「お前、何を見たんたよ? 違うぞ。何で箱の表面温度を書いてるんだよ。

 もしかして、今頃になって赤外線が見えるように成ったのか?

 何でお前だけズレてるんだろうな。いや、温度は正解なんだけどな・・・

 だが違う、そうじゃない。箱の中身が何かを当てろと言ってるだろう。 

 訳の分からん奴だな」|(英語)


 教官は、またしても呆れ顔になって何だかなぁという表情である。

それを聞いた雄二は、しょぼくれてしまっている。


「だから、ずっと練習した甲斐があった、って言ったじゃないですか・・・

 やっと出来るように成ったのに、酷い・・・」|(日本語)


「あ、ボンヤリと、です、けど、中身に反響した音が見え、ます。

 そうか、こういう事なん、ですね・・・ これは凄い、ですよ。

 ホンダさん、これ凄い、ですって!」|(広東語)


 どうやら陳にも音が観えるように成ったらしい。急いで自分のノートに

箱の中身を書いて、それを教官に見せに行く。


「うん、正解だな。どうだ、ホンダお前は出来るか? コツが有るんだが

 教えてやろうか?」|(英語)


 一人だけ音が視えない雄二に、教官は心配そうに声をかけている。


「うーん・・・ こうかな? どうだ!」|(日本語)


 雄二は、両手を前に出して気合を入れて叫んでいた。


「違う、ホンダ、そうじゃない、そっちは低周波だ、それじゃ中は見えん。

 お前は何で教えていない事が出来て、教えた事が出来ないんだよ。

 本当に訳の分からん奴だな・・・まぁ教え甲斐があると言えば良いのか」

 |(英語)


 雄二が、またしても一人だけ悄気げている。先程は嬉しくて半泣きで

あったが、今は自分の不甲斐なさに情けなくて泣きそうになっている。


「これも宿題だな。出来るまで練習しろ。それと、そっちの二人はもっと

 精度を上げるように練習しておけよ。

 今日の座学はこれくらいにしておくか、お前ら少し早いが昼飯だ。

 その後は、またハムスター訓練だからな」|(英語)


 そう言い残すと、教官は教室から出ていった。

雄二だけ、箱に向かって両手を出して、うーんうーん、と唸っていた。

ジムと陳は、そのうち箱に穴が開くんじゃないか?と心配であった。

 今の教室の中は高周波と低周波が入り混じった、とんでもない音が響き

渡っている。

コイツなら何をするか分かったもんじゃない、とでも思っているようだ。


この物語は創作です。

作者の空想・妄想の塊です。

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