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第44話 視覚

作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。

多分、内容とは関係ないと思います。


 ある日、このままでは埒が明かないと思い立ち、午前の座学の時間に

雄二がサンダー教官に聞いてみた。


「教官、お願いがあります。時間が解りません。教えてください!」

 |(日本語)


 それを聞いた教官が、何だ、そんな事を今頃になって聞くのかよ?

という顔をして・・・


「そこの壁に時計が有るだろ? それを見れば良いんじゃねーのか。

 言わなかったか? ここだけじゃ無くてあちこちの部屋に有るだろ。

 前にも言ったが、ここは月の自転時間じゃなくて地球と同じで24時間

 を一日にしてるって」|(英語)


 と言われた。何処に時計なんかあるんだよ?と思いながら、ジムと陳が

キョロキョロと教室の中を見回したが、何処にも無い。


「今、何時だ? お前ら二人は腕時計を嵌めてるだろう。それをここに

 ある時計と時間を合わせれば良いんじゃないか。お前ら間抜けだな」

 |(英語)


 ジムと雄二を指差して、ニヤリとした、いつもの人をおちょくった笑顔で

答えるだけだ。


「いや、だから、時計、なんてありま、せんよ。どこにあるん、ですか?」

 |(広東語)


 陳も、この人は何を言ってるんだ?という顔で教官に質問している。

見回してみたが教室の何処にも無い。それどころか、この基地に連れて

こられてからは、一度も時計を見ていない。


「そこにあるだろう。俺の後ろのホワイトボードの上に、ほらよく観ろ」

 |(英語)


 自分の後ろにあるホワイトボードの上、丁度その真ん中辺りを指差して

示したが、そこには何も無い真っ白い壁だ。


「いえ、そこには・・・あ、有る。え! ありましたっけ? え?」

 |(日本語)


 丸いアナログ式の壁掛け時計が、そこに見えた。但し、時間を見ようと

思わないで普通に見ると何も無い。雄二がふと二度見した時には何も無い

のである。


「え? 無い・・・何で? さっきは有ったけど、え? 意味が解らない」

 |(日本語)


「だから、ずっとそこに有るんだよ。観たい時だけ表示される。

 それ以外は見えないんだよ。俺が見えないようにしたければそれも

 可能だ。便利だろ」|(英語)


「もしかして、俺たちが来た時から、ずっとそこに有ったのか?」

 |(英語)


 どうやらジムにも、その丸い壁掛け三針のアナログ時計が見えたらしい。

一から十二まで、アラビア数字の表示である。小学校の教室に掛けてある

様な古めかしい時計だ。それを指差して教官に文句を言ったのだ。


「あぁ、あったぞ、外してないと言うか常に表示していないだけだな。

 お前らが聞いてこないから、別に要らんのかと思ってな」|(英語)


「先に言えよ・・・勿体ぶりやがって・・・」|(英語)


 ジムがまたブツブツと独り言を呟いている。


「文句を言うなよ。そうだ、良いことを教えてやる。

 今日は、それを座学の講義内容にするか」|(英語)


 そう言い残すと、教官は教室から出て行ってしまった。

ジムは壁の丸い時計を”見ようとして”見ながら、自分の腕時計の時間

を調整している。アナログ式のGショックである。

しかし、時間の合わせるやり方を忘れているのか、少し苛ついている。

それを見かけた陳が、代わりにやりますよ、と受け取った。

雄二も、自分のGショック (初代の形を模したデジタル式のソーラー

発電の電波時計)を差し出して、これもやって下さいと頭を下げた。


 暫くして、教官は両手に二つの透明のコップを持って教室に戻って

きて、そしてそれらを教卓の上に置いた。

隣の食堂から持ってきたのか、どちらにも水が入っているみたいだ。


「おい、デカい兄ちゃん、どっちが熱いか当ててみろ」|(英語)


 ジムを指差して、いつもの人をおちょくったニヤリとした笑顔で

教官はそう言った。


「は? 何を言ってる。そんなモノ、触らないで見ただけで解るかよ。

 お湯だったら湯気が出て解るだろうが、それどっちもそんなに熱く

 ないだろう? どっちかが常温の水で、もう片方はぬるま湯なのか?」

 |(英語)


 陳が時間を修正してくれた腕時計を左腕に嵌めながら、少し苛ついた

感じで答える。

阿呆じゃねーのか、このおっさん、とで思っているのであろう。


「よく見てみろ。今、お前の身体の中の機械の機能を一部解除して

 やったから。

 ほら、どっちが熱い?」|(英語)


 ん? 見れば良いのか?と、じーっと、コップを見つめるジム。

え!? 何だコレ? という目を丸くした驚きの顔に変わる。


「俺から見て右のほうが微妙に熱いよな? 何だこれ、色が見えるぞ。

 右のコップの方が赤く見える、左は少し青いな。

 教官、これ一体全体何なんだ、気持ちが悪いぞ」|(英語)


 ジムが、自分から見て右側、つまり教官の左手側に置いてあるコップを

指差して、そう答えた。


「ほう、当たりだな。お前は素質があるな。大体の奴は最初にやると

 混乱するんだがな」|(英語)


 いつものニヤケ顔である。だが、コイツ中々やるな、という目でもある。


「いや、何で解るようになったかを解るように言ってくれ。何だこれ。

 わっ! ホンダ、お前の顔、気持ち悪いぞ・・・」


 ジムは、隣に座る雄二の顔を見て、ぞっとした表情になっている。

普通に見る顔に、他の色も足された映像として見てるのである。

温かい箇所は少し赤みを帯びて見えている、体温の低い場所は青色

っぽく見えているのであろう。


「あ、これってよく観るとFLIRの映像じゃねーのか、いやこれって、

 サーモグラフィの画像に近いのか。おいおいおい、マジかよ・・・」

 |(英語)


 ジムの顔が驚愕の表情に代わった。信じられない物を観た、という

表情の顔だ。


「ジムさん、どうしたんですか? 何で当たったんですか?

 そのFLIRって何ですか?」|(日本語)


 そのやり取りを横で見ていた雄二が、不思議そうにジムに聞いてみる。


「Forward Looking Infra-Red 赤外線式前方監視装置の事だな。

 アパッチやコブラ等の戦闘ヘリに装備されているんだよ。知らないか?

 真っ暗闇でも昼間みたいに見えるんだぞ。ちょっと待ってくれ、俺は

 今自分の裸眼で、遠赤外線映像を観ているって事なのか?」|(英語)


 必死で自分の両手で目を擦って喋っているジムの説明を聞いた教官が、

意外だな、という表情をしている。


「流石に軍に入隊してただけあって詳しいな。その通りだ。便利だろ?」

 |(英語)


「嘘だろ、おいおいおい、これ・・・うぇぇぇ。

 教官頼む、戻してくれ」|(英語)


 教官はいつものニヤケ顔である、が真剣な眼差しになっている。


「自分でやれよ。出来るだろ?」|(英語)


「いや、いや、無理だって。気持ち悪いって、これ・・・」|(英語)


 ジムは、先日の”回し車”の時とは異なる吐き気を催してる様子だ。


「ジムさん、そんなに凄いん、です、か? 俺も、やってみたい、です」

 |(広東語)


「ほほぅ、お前もやってみたいか、ほらどうだ?」|(英語)


 教官が陳の方を向いて何やら操作したみたいであるが、何かを手に

持っている訳では無い。頭の中で何かをしたのであろう。

 教官は、今度は教壇の下から白い箱を取り出した。そして、前に

置いたコップを何度も入れ替えてどちらがどっちか解らない状態に

してから、箱をその上に被した。この状態ではコップは見えない。


「で、右と左、どっちが熱いか解るか? 当ててみろよ」|(英語)


 真剣な眼差しで、陳に聞いてくる。


「あ、う、嘘、えぇぇ! 本当だ。これ凄い、です、よ!

 俺から見て、右、ですよ、ね? 教官」|(広東語)


「当たりだな。どうだ、面白いだろう。これでお前ら真っ暗闇でも

 昼間みたいに見えるし、隣の奴がこいた屁も見えるぞ」|(英語)


「それは、別に、見たくない、です、けど・・・」|(広東語)


 喜んで興奮していた陳が、少し落ち着いた様子だ。

ジムも、元の眼に戻ったのかこちらも落ち着いてきた。


「教官、俺は見えないんですけど・・・ 何故ですか?」|(日本語)


 雄二が、俺だけ出来ないの酷くないですか、依怙贔屓してません?

みたいな勢いで教官に食いついて質問している。


「ん? 見えないか? もっと凝視してみろよ。裸眼で立体視する要領

 なんだけど、知らんか」|(英語)


「教官、こ、これ・・・骨が、俺の手の腕の骨が・・・嘘ぉ!」

 |(日本語)


 自分の右腕を見ながら、雄二が驚いている。


「あぁ、お前、それは違う。それはX線だ。違う、そうじゃない。

 お前さん、不器用だなぁ。何をやらしても、どこかを間違う・・・」

 |(英語)


 教官はいつものニヤケ顔であるが、駄目だコイツ… みたいな呆れ顔

になった。


「え? そんな機能までも有るんですか? 無茶苦茶じゃないですか!

 俺たち、もしかして改造人間なんですか? 寝てる間に手術を?」

 |(日本語)


 隣のジムがまた驚いている。おいおい、マジかよ?となった顔である。


「だから集中の仕方を間違えてるんだ。もっとじっくりと見ろよ。

 ついでに、改造人間ってサイボークとか機械の身体か何かの事か。

 違うぞ。

  自動捕獲機が身体に入れた機械、あれは目玉にも入ってるんだ。

 ソイツで視覚を補強・強化してるだけだ。人間の可視できる波長を

 広げてるんだよ。理解したか?」|(英語)


「あれ? これ何? え、これ、気持ち悪い変な色が・・・」

 |(日本語)


「だから、それも違うって、お前は・・・

 それは、UltraViolet(紫外線)だ。そっちじゃねーよ。

 本当に不器用だな」|(英語)


「ちょっと、待って、下さい、教官! 俺たち、そんなモノも、見える

 ように、なるん、ですか? 嘘でしょ?」|(広東語)


 陳がまた異常に高揚している。アチコチを見回しながら、嘘でしょ!

嘘でしょ!と連呼して五月蝿い。


「何でお前は赤外線が見えないかな・・・ それが一番簡単なんだぞ。

 X線を見る方が難しいのに、何でそっちから見えるんだよ。

 そもそもX線の放射の仕方も教えてねーだろ。器用なのか不器用なのか

 訳の分からん奴だな」|(英語)


 教官は首を傾げている。


「そんな事を言われても・・・見えないんですって! やり方を教えて

 下さいよ、ねぇ、ジムさんは出来たんでしょ?」|(英語)


 今度は隣のジムの太い腕にしがみつき、泣きついている。


「いや、出来るって・・・ 何でお前には手の平の骨が見えるんだよ。

 そっちの方が俺は出来ないぞ?」|(英語)


 ジムは自分の腕から雄二を剥がそうとしているが、必死にしがみ

ついてきて、なかなか離れない。


「二人だけ見えてズルいですよ、俺も赤外線映像を見たいんですって!

 前にインターネットで見たんです、赤外線カメラだと女の人のパンツが

 ズボンの上からでも見えるって!」|(日本語)


 雄二はジムの太い腕を更にグイグイと引っ張っている。どうやら

下品で不埒な理由で見たがっているみたいだ。


「ホンダさん、その、赤外線を見たい、動機が不純、ですよ。

 スケベ根性を、無くせば、見えるかもしれま、せんよ。

 それに、ここに女の人は、居ない、ですよ。俺たちの、下着姿を

 見ても嬉しく、ない、でしょ?」|(広東語)


「いや、俺は出来ればX線も見たいんだけど、逆にそのやり方を教え

 てくれよ。スーパーマンみたいで格好良いじゃねーか」|(英語)


「うわっ! ジムさんと陳さんの顔の骸骨が・・・脳味噌も見えてる、

 目玉が! うぅぅ、気持ち悪い・・・」|(英語)


 ジムに泣きついている雄二が、二人の顔を見て吃驚した拍子に腕を

放した。どうやらジムと陳の顔にレントゲン撮影した様な画像を観て

しまったのであろう。レントゲン撮影した映像ではなく、普通に目で

見た顔にその内部も見える画像も重なっているのである。

気持ちが悪いに決まっている。


「お前、人の顔を見て気持ち悪いって失礼な奴だな。だから、その

 X線のやり方を俺にも教えろって! 一体どうやるんだよ?」

 |(英語)


 先程、自分も雄二の顔を見て気持ち悪いと言った事を、忘れている

のであろうか。


「お前ら、煩いな・・・ エロ本を取り合うガキかよ。

 まぁ頑張って練習してろよ。そのうち出来るようになるだろ。

 それ今日の宿題にするからな。暇な時にでもやっておけよ」

 |(英語)


 教官は雄二とジムのやり取りを見てウンザリしたのか、もう昼飯に

するぞ、と面倒臭そうに言い残して教室を出て行ってしまった。


この物語は創作です。

作者の空想・妄想の塊です。

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