第41話 説明
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
三人は、渡されたノートみたいな物の使い方を教わった。
これが今日の座学の最初の授業である。
ペンの先で紙に書く様に自由に書ける。反対側を消しゴムとして
使うらしい。擦ると自分が書いた文字が消える。
それとは別に一冊の教科書を渡された、これもまた電子ペーパーで
あるのだが、普通の本の形と変わらない。
「これ、普通の、本じゃ駄目なん、です、か? 電子ペーパーにして
いる、意味が無いと思い、ます」|(広東語)
陳が尤もな質問を教官に聞いている。それに対して教官が答える。
「普通の紙だと経年劣化でボロボロになるな。それは俺が来る前から
使ってるんだぞ。多分、100年以上前からあるんじゃねーか。
もしかすると、もっと前からあるのかもしれんが、俺は知らん。
ついでに、そいつはここの図書館と繋がっているので読みたい
本を選んで読める。だがお前たちに理解が出来るかどうかは知らん。
内容が高度過ぎて、俺には解らん」|(英語)
「えぇぇ・・・ これページが捲れますけど、内容が変わるって事
ですか?」|(日本語)
雄二が、教科書のページをペラペラと捲りながら質問している。
「まぁそうだな。いちいち図書館に行って本を探すのは面倒だろ?
大量の本は置き場所にも困る。それと色んな言語にも対応している。
合理的だろ?
お前のそれ、多分日本語で書いているんだろ? 俺は読めんが。
隣のデカい兄ちゃんのを見ろ、英語だろ? そっちのは中国語か、
それも俺には読めんが」|(英語)
雄二の本は日本語で縦書きであるが、ジムの持っているのは英語で
横書きである。陳に渡された本は広東語で書いている。
但し、内容は全く同じだ。試しに交換してみると、中身の言語が自動
で切り替わった。読む人間の身体の中の機械に反応して、本が言語を
切り替えているのかもしれない。
「タブレットみたいな、画面でも良いの、では?」|(広東語)
またしても、陳が尤もな質問を教官に聞いている。
「タブレットって何だ? 錠剤のことか? そんな物を何に使う?」
|(英語)
教官が、何だそれ?みたいな顔をして陳に言っている。
「いや、何でも、無い、です・・・」|(広東語)
サンダー教官は50年以上この月に居るのである。地球の最近の電子
機器の状況など恐らく知らないのであろう。それ以上に進んでいる機械が
大昔から既にあるので、知る必要が無いのかもしれない。
もしかすると、ここの物を真似て地球で造った輩が居るのかもしれないが。
「この座学では、お前らが搭乗する乗り物に関する基礎、理論、応用等を
教える。しっかりと覚えろよ。理解したか?」|(英語)
ここでジムが輝いた目をして、両手を挙げて振り回して教官に質問をしていく。
「教官、乗り物って何だ? 教官が乗っているのと同じクルマなのか?
それとも、ヘリコプターか飛行機か、空飛ぶ円盤か宇宙船か何かなのか?
教えてくれ、早く乗りたい!」|(英語)
ジムが、今直ぐソイツに乗せろ!と言わんばかりに乗り出してグイグイ
と質問している。
「その内に見せてやる。まぁ待てよ。楽しみは後にとっておけ。
ソイツに乗せるために、お前らは拐われたと思えば良い、多分な」
|(英語)
「えぇ! そうだったんですか? 俺たちパイロット候補生なんですか?」
|(日本語)
「実は、俺、乗り物は、苦手で、特に飛行機や船は・・・
ゲームのFPSでも、直ぐに酔うから、出来、ないし」|(広東語)
陳は乗り気ではない様子である。乗り物酔いや3D酔いが酷い体質のかも
しれない。
「パイロットだと! やったぞ、ホンダ! こんな所で夢が叶うとは!」
|(英語)
ジムはガッツポーズで既に涙目である。隣に座る雄二の背中をバシバシ
と叩いてゲホゲホ言わせているが、お構いなしだ。ヘリコプターに乗る
その為だけに陸軍に入隊までした酔狂な人間である、本望なのであろう。
「喜んでいる所に言いにくいんだが、パイロットでは無いな。
お前らは歩兵だな。どちらかと言えば機械化歩兵か?
俺も元は陸軍の教官だ。空軍じゃねーよ」|(英語)
その教官の言葉に、三人は言葉を失う。
「歩兵? 宇宙人の歩兵? 意味が解らん。海兵隊じゃねーのか?
それに陸軍でもヘリや飛行機は有るぞ?」|(英語)
宇宙”船”に乗る兵隊なら”海兵隊”だろう、と考えるジムの言い分も
理解できる。
「まぁ、そう考えるよな。だが宇宙に”海”は有るのか? ”船”には乗る
だろうが”海”はない、”陸”はあるから歩兵なんだろう。
俺は行った事が無いから知らん」|(英語)
「歩兵って、俺たちは、戦争をやらされるために捕獲されたって事ですか?
俺たちが知らない宇宙のどこかでは、戦争が起こっているんですか?」
|(日本語)
雄二の顔が蒼白になっている。平和ボケしている日本人がいきなり歩兵に
成れと言われたら、無理もない話である。ただ、地球では現在でも戦争状態
の地域はあるのだが・・・
「兵隊か軍隊なのか?と聞かれると微妙なんだがな。俺はこの月の専任で
行ったことが無いから詳しくは知らんのだが、害獣駆除だと思えば良い
んじゃねーか?」|(英語)
「害獣駆除って・・・ 意味が、解らない、です、よ」|(広東語)
陳の顔色も悪い。無理矢理連れてこられて戦争や害獣駆除などをやれ!
と突然言われて良い顔をする人間は少ないだろう。但し、ジムだけが異常に
喜んでいる。
どんな乗り物に乗れるんだ、早く見せろ!とキラキラと輝いたお目々である。
「人間同士の争いの事を”戦争”と呼ぶんだろ。じゃあ人間が熊と戦うのは
戦争か? 違うだろ。増えすぎた生き物を退治するのは”害獣駆除”
と言う方が正しいだろう。そういうことだ、理解したか?」|(英語)
その教官の説明に、三人は首を傾げる。宇宙には増えすぎて困った厄介な
生き物がウジャウジャ居るってことなのか? それを退治するって?
「ゴキブリやネズミ駆除の業者じゃないですか、それって・・・」|(日本語)
戦争では無いと言われて、雄二は少し安心したのか、教官に質問してみた。
「まぁ、そんな感じで捉えていれば良いんじゃねーか。さっきも言ったが、
俺は教官の仕事しかしないので”外”は知らん。新人を使い物になるように
鍛えるのが与えられた役割なんでな。すまんな」|(英語)
陳が核心を突く質問を、教官に投げかける。
「教官、”外”って何処なん、ですか? ここじゃ無い、です、よね、月には、
生き物なんて、居ません」|(広東語)
「お前は頭が良いな。前にも言ったが、そういう奴は嫌いじゃない。
”外”は外宇宙だな。ここ月には大気すら無いから生き物なんて居ない。
あくまでも新兵の訓練所なんだよ。他にも存在理由があるが、それは
また別の話だ。聞かない方が良い」|(英語)
「ブートキャンプって事か?」|(英語)
キラキラのお目々のジムが少し冷静さを取り戻したのか、また教官に質問
をする。
今日の座学の後半は、教官に対する質問攻めで終始しそうである。
サンダー教官も、それを別に咎めもしない。先ずはある程度の疑問には答えて
やる、という態度に見える。
「お前は陸軍に入隊してるんだったな? もうブートキャンプは終わったのか」
|(英語)
「ああ、担当教官にお前には不要だな、と褒められた。入隊前にボディビルダー
をやってたので、体作りは出来てたからな。ブートキャンプは楽勝だった」
|(英語)
ジムが、どや顔で自慢気に喋っている。サンダー教官は、確かにこのムキムキ
な身体なら要らんだろうな、と納得していた。
「あの、すいません、ブートキャンプって何ですか?」|(日本語)
雄二が何それ?って顔でジムに聞いている。
「入隊したての新兵を鍛える、最初にやる訓練プログラムだな。
駄目な奴は、そこで辞める」|(英語)
ジムが雄二に教えてやる。
「あ、思い出しましたよ。昔、何とかって外人のおっさんがブートキャンプ
と言って体操して痩せようってDVDが、日本で流行ってたんです。
俺が子供の頃かな?
母ちゃんが、それを買ってテレビの前で踊ってましたよ」
それを聞いたジムが、更に雄二に教えてやる。
「踊りじゃねーけどな。軍人に成るために基礎的な身体の強化をやる訓練なん
だよ。体力的にかなりキツイぞ。さっきも言ったが、それについて行けずに
辞める奴も多い」|(英語)
「えぇぇ・・・俺、運動は苦手なん、です、けど。出来るかなぁ、不安、です」
|(広東語)
陳の顔色が再び悪くなる。頭脳労働専門だったのであろう、雄二より背は
高いがヒョロヒョロな体型なので、自信がないのかもしれない。
「俺はそんな奴も大勢鍛えてきた、心配するな。吐きながらでも走らせてやる。
昼飯が終われば、そのブートキャンプをやるぞ。デカい兄ちゃんも鍛えてる
からって油断するなよ、後で泣くぞ?」|(英語)
教官は、ニヤリと笑いながら嫌なことを言う。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




