第37話 クルマの運転
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「捕獲した奴らは、大抵は同じ様な事を言うな」|(英語)
「その台詞、前にも聞いたことが有るような・・・」|(日本語)
自動捕獲機が何度も言ってた台詞に似てるな、あいつはこの人
の口癖を真似してたのかな、と雄二は思った。
「まぁ、先ずはクルマに乗れ、ここは玄関みたいな場所だ。
要領はさっきの外のクルマと同じだ、もう覚えたろ」|(英語)
テンガロンハットのおっさんは、左手の人差し指でこっちに
来るよう呼ぶかのようにチョイチョイとやると、どこからか白い
クルマが走ってきた。
但し、走り方が奇妙だ。全く方向転換しないでクルマの向きは
一定に保ったまま、無人で四人に向かって走って近づいてくる。
「なんだあの走り方・・・」|(英語)
「気持ち悪い走り方しますね・・・」|(日本語)
「自動運転、なん、だ」|(広東語)
おっさんが、またいつものニヤリとした笑いとともに三人に
話しかける。
「何だお前ら、クルマを見たことねーのか? 田舎者だな」|(英語)
その言葉を聞いて雄二が答える。これも同じ台詞だな。
「いや、さっきも乗せてもらいましたよ」|(日本語)
遠くからパッと見た感じでは、最初に乗った真っ白のクルマと
違いが有るようには思えない。
「あれは外を走る奴で、これは中を走る奴だ、違うぞ?
例えるなら、さっきのは靴でこれはスリッパか」|(英語)
「同じにしか見えんぞ」|(英語)
「これ、おっさんの趣味なん、ですか、ね」|(広東語)
「またジープですよね」|(日本語)
これも第二次大戦中のウイリスジープに近い外観である。
前と後ろが同じ形なので、一見するとどちらが前か後ろか判別が
つかない。
凸 の様な胴体に四輪を付けた形状だと想像すると良いかもしれない。
但し、屋根とドアは無い。
運転席、助手席、ベンチシートではなく左右が別れた後ろの二つの
席と、前と後ろのガラスが有るだけ。これにもワイパーが無い。
月では雨が振らないので不要なのであろう。屋内しか走らないから、
屋根もワイパーも不要ということなのかもしれない。
ジープと違うのは、駆動用のタイヤでは無くボーリングやビリヤード
の球のような物が、代わりに四個付いているのである。
「昔、俺が乗ってた奴が好きでな、誂えて似せて造らせたんだ。
良いだろ。でも、やらんぞ。
あと俺を呼ぶ時はおっさんじゃなくて教官だ、忘れるな」|(英語)
サンダー教官は左手を腰にあて、右手の人差し指で三人それぞれに
指図する。
「イエッサー!」|(英語)
ジムは厭味ったらしく、かるく敬礼しながら返事をする。
「お、良い返事だ、取り敢えず早く乗れ。それとお前さんのキャリーケース
は、先に部屋に運ばせておいた、有り難く思えよ」|(英語)
サンダー教官は、雄二に指を指し声をかける。既に自分はそのウイリス
ジープもどきに乗っている。何かボタンを操作すると、その車体の外装が
緑に近いカーキ色に変わる。タイヤの代わりの四個の球は白いままだが。
「え? はい、どうもです。 って色が! なにコレ!」|(日本語)
「自由に、色が替えられるん、です、ね!」|(広東語)
「懐かしい色だ」|(英語)
先程と同じく、後部座席に座ろうとした雄二が仰天する。
雄二の隣に座ろうとした陳と、助手席に乗ろうとしていたジムも同じく
驚いている。
「うん、こっちの色の方が良いな。やはりジープはこれでないとな。
何をポカンとした間抜けな顔してる。
何だお前ら、クルマに乗ったことねーのか? 田舎者だな」|(英語)
「その台詞、前にも聞いたことが有るような・・・」|(日本語)
「早く乗れ、行くぞ」|(英語)
サンダー教官は、皆が乗り込んだのを確認すると[座席]のボタンを
押す。先程と同じ様にシートベルトの代わりの安全装置として、身体が
座席に固定されるのだが、窮屈な訳では無い。
固定されていると言われなければ、何も感じ無い程である。
このジープもどきは、外にあったクルマとは運転操作方法が少し違う。
助手席との間にはシフトレバーは無く、代わりに全て押しボタン式に
なっている。
[P] [N][D]の順番にボタンが並んでいる。何故か[R]は無い。
今は[P]ボタンが押し込まれており、それが点灯して他は消灯状態だ。
教官は[D]のボタンを押し込み、それが点灯したのを確認した。
次にそのシフトボタンの左横にある操縦桿のような小さなレバーを
右手で持ち、それを右に倒すと、ジープもどきのクルマは右真横に
静かに走り出す。
「なんだこれ。ヘリみたいな動きをするな」|(英語)
「真横に走るクルマって気持ち悪い」|(日本語)
「これ、乗り慣れないと、酔い、ます、ね」|(広東語)
予想外のクルマの動きに、三人が驚く。
教官がその操縦桿の様なレバーを真ん中に戻すと、クルマは音もなく
停止する。今度はそのレバーを前に静かに倒すと、ジープもどきの
クルマは”前に”前進しだした。
「どうだ、これが本物のクルマだ、面白いだろ?」|(英語)
次に、教官が上下が平らな楕円形のステアリングホイールを右に
回すと、前進しながらクルマ全体が右回転をする。進行してる方向
は変わらないままである。
”前に”進んではいるのだが、車体全体は右回転をしてるのだ。
超信地旋回をしながら前進していると想像して欲しい。
もしくは、前進しながら砲塔を回している戦車砲の動きに近いのか。
普通の車輪の自動車や無限軌道の乗り物では不可能な機動である。
四個の球状の駆動球であればこそ出来る動きである。
「え、なにコレ、き、気持ち悪い・・・」|(日本語)
「なに、これ、なに・・・」|(広東語)
「面白い! 運転したい! コレ良いぞ、なあホンダ、マイケル!」
|(英語)
ジムだけが、やたらと気分が高揚している。楽しそうな笑顔だ。
まるで初めて遊園地の乗り物に乗った子供のようにはしゃいでいる。
ヘリパイロット志望なだけあって、奇妙な動きの乗り物は平気そうだ。
「教官、お願いします、前を向いて”前に”進んで下さい。斜め後ろ
向きで”前に”走らないで! 気持ち悪・・・い・・・」|(日本語)
「遊園地に、ある、コーヒーカップみたいな動き、です、ね。
これ酔い、ますよ・・・」|(広東語)
「ホンダ、お前何を言ってるのか意味が解らんぞ。はっはっはっ!
教官、他にもこれと同じクルマはあるのか? 気に入った。
何なら、あんたの運転手でも構わん。
俺は自分でコイツを運転したい! 欲しいぞ!」|(英語)
ジムは目を輝かせて、ダッシュボードやそこら中を触っている。
別にそこには、何も操作する物は無いのであるが。
それに比べて、雄二と陳は今にも吐きそうな顔色だと言うのに。
「良いだろ。でも、やらんぞ」|(英語)
教官は、またいつものニヤリとした笑い顔をしている。
ジムの言葉を聞き、調子に乗ってクルマをグルグル回転させている。
トンネル状の道に沿って真っ直ぐ走ってはいるのであるが、車体は
独楽のように左周りにゆっくりと回転している。
「そんなに運転がやりたいのなら、やるか?」|(英語)
ちらりとジムの方を見て、ニヤついた笑顔をやめ真面目な顔で
教官は聞いてくる。
「良いのか? 是非やらせてくれ!」|(英語)
ジムの顔が更に笑顔で溢れんばかりになる。ここでこのクルマを
停めて、今直ぐ運転を代わってくれ、と言わんばかりである。
「でも、コイツじゃ無い。お前らは違うのに乗せる。
その為の訓練をやる。理解できたか?
おい、後ろの二人も聞いてるか?」|(英語)
今、クルマの向きは道路に対して左向きなのであるが、”前に”
向かって”右進”している。
要するに、カニの様に右に真横に走ってる状態である。
そこから走りながら車体の向きを90度右に回転させて進行方向の
”前に”戻す。
普通に”前に”前進するクルマに戻った訳だ。
「気持ち悪い。ちょっとしか乗ってないけど、吐きそう・・・」
|(日本語)
「げ、限界、です・・・うぅぅ」|(広東語)
二人は今直ぐにでも吐きそうな真っ青な顔色をしている、とても
先程の教官の言葉を聞いていたとは思えない。
「だらしない奴らだな、このでかい兄ちゃんを見習えよ。クルマで
そんなに酔ってたら、この先が思いやられるぞ?」|(英語)
「違うのって何だ? ヘリか? それとも飛行機か? もしかして
空飛ぶ円盤か?」|(英語)
その言葉を聞いた興味津々のお目々のジムが、自分の左横の運転席
に座る教官に詰め寄る。
「それは後のお楽しみだ。お前は誕生日プレゼントの箱の中身を聞いて
から貰うのか? それとも、聞かずに貰って開けてから喜ぶのか?」
なるほどそれもそうか、と納得したのかジムは静かになった。
でもジムのキラキラとした目は、プレゼントを貰う時の少年のようだ。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




