第36話 中に入る
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「そこに座ってる奴の大事な所だけでも服を被してやれよ。
薄情な奴らだな。
デカい兄ちゃんが妙に喜んでいるみたいだが、因みに
言うと、それは下着だからな。
お前はパンツ一丁姿で外を歩くのか? 妙な趣味だな」
|(英語)
その言葉を聞いたジムは少しがっかりした様子である。
何だこれ下着なのか、でも小便をする時はどうするんだ、
糞も出来んぞ、どこから出すんだ? と疑問も持つ。
「ま、その時はやりたいと思えばいいんじゃねーか?
試しにやってみるか。但し、あんまり考えるなよ。
人前でご自慢の息子や尻を丸出しにするのは嫌だろ。
もしかして、それも趣味か?」|(英語)
恐らく、またあのニヤけた顔で語ってやがるんだろう、
と思いジムが少し苛つく。
「んな趣味あるかよ、変態じゃねーよ」|(英語)
どこに向かって話せば良いのか解らないが、ジムは
手を振って否定している。すると雄二が喋りだす。
「はあぁぁ、あれ、ここは? お風呂は入りましたっけ?
あ、ジムさん陳さん、何ですかその格好・・・」|(日本語)
虚ろな目付きだった雄二の表情がまともになり、腕を上げて
欠伸をしている。二人が純白な全身タイツの格好しているので
気になったのであろう。
「おう、ホンダ正気に戻ったか! それ服だから着ろよ」
|(英語)
ジムが子供用の小さな上下のつなぎの様な白い服を、雄二に
渡してやる。それを受け取り、何これ?と言う感じで弄くり回す。
「え、こんな小さい服、無理ですよ。いくら俺が小柄でも着れ
ませんよ。これ伸びるんですか? 変わった素材ですね」
|(日本語)
「いや、それを身体に当てて着たいと念じてみろ。ほらやってみろ」
|(英語)
ジムが自分の額に自らの右手の人差し指をトントンと当てて、雄二に
教えている。
「いやいや、何言ってるんですか、そんなのある訳な・・い・・・
うわ! え、え? 何これ、変身ヒーローみたい!」|(日本語)
「それ下着だそう、です、よ。シャツとパンツが、繋がったみたいな
物らしい、です」|(広東語)
雄二は何とか立ち上がり、両手両足の肘、膝を曲げたり伸ばしたり
屈伸運動して服の伸縮性を試している。
先程までのトロンとした目付きでは無くなり、正常な精神状態に
戻っているようだ。ショック症状から立ち直れていつも通りに
話しているが、先程の事を忘れてしまったのであろうか。
ジムは、服が置いてあった机の上に自分のロケットペンダントと
結婚指輪を見つけ、それらを取り軽くキスをし蓋を開けて中の写真を
確認する。
「ジェミー、良かった。また会えたな」|(英語)
二人には聞こえない程の小さな独り言を呟き、ジムは太い腕と
デカい手の指で器用に首にペンダントのチェーンを巻き付ける。
これまた太い左手の薬指に指輪も嵌める。
他には、陳のスマートフォンと財布、雄二の二つ折りの携帯電話
と財布、腕時計が二つ置いてある。日本のGショックだ。
ジムがそれを見つけ腕に巻く。雄二にもう一つを渡しながら聞く。
「これお前のか? 俺と揃いかよ。良い趣味してるな」|(英語)
それを聞いた雄二は、腕時計を受け取り腕に巻きながら答える。
「はい、これ太陽電池発電で電波時計なんです。丈夫で正確で良い
ですよね。それに安いし、ずっと愛用してます」|(日本語)
「あぁ、俺もお気に入りだ。頑丈なのが良いんだ。他のは大抵
ぶっ壊れる」|(英語)
「でも電波の受信は無理、だから、正確じゃ、なくなり、ます、ね。
そもそも、どこの時間、です、か? 地球の、グリニッジ天文台
の標準時間、それとも月の、です、か?」
陳のその言葉に、雄二とジムの二人は呆然としてしまった。
そう言われて、二人は自分たちの腕時計の表示している日時が
異なることに気が付いた。15時間も違うのである。
雄二のは日本の時間で、ジムのはアメリカ中部時間だったのだ。
捕獲された時のままだ。
こんな所まで電波時計の為の標準電波が届いていると思えないし、
月の裏側なのでそもそも電波が届かないと思われる、仮にそれを
受信しても、ここ月の時間では無い。
付けていても意味が無いのである。
「それ腕に巻いておくのか? ここ月の自転周期 (一日か?)は、
地球で言う所の大体27日だな。その腕時計で測れるか?
付けていても意味がないから、アクセサリーにしかならんぞ?
それと、お前らの体内時計は、ここに来る前に自動捕獲機が
補正して同じにしてあるんだ、時差ボケも無いだろ?」|(英語)
おっさんのニヤけた顔が見えてきそうだが、笑われても仕方がない。
どうしても地球に住んでいる時の常識で考えてしまうのは、人間だと
仕方が無い。
ジムと雄二は顔を見合わせて、腕時計を外してしまった。
「まぁ、人間の体内時計はおよそ24時間だそうだから、それに
合わせてこちらも生活している、だから付けいても構わんぞ?
こっちの時計に合わせろよ」|(英語)
外した腕時計を二人で眺めている。どうしようといった表情だ。
内心は「先に言えよ、おっさん!」みたいな気持ちでもある。
二人は、また腕に巻いた。
「その下着の上に服を着ろよ。それで外に出ても変人扱いは
されなくなる、多分な。
ロッカーを出すから、その中に入っている服と靴を身に
着けろ。やり方は同じだ。それが終われば中に入ってこい」
|(英語)
そのおっさんの声と同時に壁からロッカーが出てきた。これも白い。
アメリカの高校や日本の高校にも置いて有りそうな普通の立方体に
なっており、三台が並んでいる。
三人は、適当にそれを開けてみて中を確認した。上下二段に分かれて
おり、上段にはまた子供用くらいの小さい上下が繋がった服がある。
それと下の段には、靴が置いてある。有るのだが、普通の靴に有る
べきものが存在しない。足を入れる穴が無いのである。
三人は珍しそうに、その靴らしき物を取り出して眺め回している。
「何だこりゃ? これ靴なのか?」|(英語)
「見た目は靴ですよね? 足を入れられませんけど」
|(日本語)
「取り敢えず、履いてみる、とか? 足を載せて考えて、みたら」
|(広東語)
試しに雄二が右足を靴に載せて念じてみる。因みに、左右は
同じ形なので、どちらを履いても問題は無さそうである。
「うわ! そうか、そうなるんですねぇ」|(日本語)
靴がぐにゃりと変形して足に絡まり、靴の形に再構築して履いた
状態になる。足首まで有る編み上げの革靴の様な見た目である。
御丁寧に靴紐まで有る。但し、色は他の服と同様に真っ白だ。
「何で靴紐があるんでしょう? 意味なんて無さそうですけどね」
|(日本語)
「そうだな、単なる飾りか? それにしても、これ軍服だな。
俺も着てるから判る」|(英語)
「確かに、そう見え、ます、ね」|(広東語)
三人はそれぞれ靴や服を着用している。
前のと違う点は、作業着か軍服の様な装飾のない質素な服ということ。
胸の左右、ズボンにあたる左右、尻部分にもポケットがある。
小物は、その中に仕舞えという訳であろう。
陳と雄二は、そのポケットに自分たちの携帯電話と財布を入れた。
画面を確認すると予想通り[圏外]であった。こんな所まで携帯電話
の電波は届くまい。
全員が着終わり用意ができた頃に、またおっさんの声がした。
「お、着終わったな。ようやく中に入れるな。忘れ物は無いな。
入り口を出す、そこからこっちに入れ」|(英語)
テンガロンハットのおっさんが喋り終わると、また扉が現れて
音もなく開いていく。
そこには、その声の主のおっさんが立っていた。
「やっと来たな、ここが月の基地だ。歓迎するぞ。
初めて会うな、俺はサンダーだ。ここで教官をやってる。
サンダー教官もしくは教官と呼べ」|(英語)
「初めてって、最初に会ってますよ、クルマに乗せてくれたでしょ?」
|(日本語)
雄二が不思議に思い、目の前にいるおっさんに聞いてみる。
他の二人も、うんうんと頷いている。
「あぁ、あれな。あれは俺じゃねーぞ。あっちは外だから出ない。
出ると面倒だからな。お前らみたいに風呂入る羽目になる。
あれは操り人形みたいなモノだ」|(英語)
「え? あれ人間じゃなかったの? え?」|(日本語)
「ロボットだったのか!」|(英語)
「機械の人形? あれが? いやいや、嘘でしょ?」|(広東語)
「捕獲した奴らは、大抵は同じ様な事を言うな」|(英語)
テンガロンハットのおっさんが、またニヤリと笑う。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




