第35話 着替え
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「おーい、起きろ、風呂の時間は終了だ。バスタブから出ろ。
出て次は服を着ろ。外に用意してある。脱いだ物は密封して
あとで返してやる。
が、それは着るな、汚染された物は洗浄済みだが、中では
着れない。革ベルトじゃない腕時計、アクセサリーなどは許可
してやる。
特にそこのデカいの、お前の大事なロケットもな」
|(英語)
テンガロンハットのおっさんの声が聞こえてきた。
ジムと陳は、何だもう終わりか? みたいな顔をして起き上がる。
雄二は、まだ寝転がったままだ。中々バスタブから顔を見せない
ので、ジムが急いで出て心配そうに真ん中の箱を覗き込んだ。
「いやいやいやいやいや・・・やめて、やめて、やめて、やめて
こわいこわいこわいこわい・・・」|(日本語)
雄二は、蚊の泣くような小さな声で何かを呟いている。
寝転んだ状態で右を向いて自分の膝を抱きかかえるような体制で
小刻みに震えてもいる。
「ホンダ、どうした? 終わったぞ。何だ震えてるのか?
何があった? 大丈夫か?」|(英語)
「ジムさん、どうしま、した、か? ホンダさん? 震えて、
ます、ね」|(広東語)
陳もバスタブから出て、ジムが覗き込んでいる雄二の居る筈の
白い箱の中を見て言った。
二人とも不思議そうな顔をして見合わせる。
その後、俺がこっちを持つからお前はそっちだと、陳に対してジム
が指示をし、何とか二人で雄二をバスタブから起して出してやった。
「いやいやいやいやいや・・・」|(日本語)
「あぁ、ショック症状か、コイツ忠告してやったのに寝ないからだ。
ちょっと待て、症状を抑える処置を施すから。風呂場から出して
その辺に座らせろ」|(英語)
おっさんの声が苛立っている様に感じるが、呆れて物も言えない、
もしくはやれやれ面白い奴だ、とも捉えられる。
風呂場の入り口は既に無くなり壁になっている。その反対側に新た
に出口の扉が出来上がり、また音もなく開き始める。
二人は、雄二を両側から抱えてそこから出た。
床からまた机がせり上がってくる。その上には三人の為の服が置かれ
ている。これもまた全て白い。
二人は、その机に背中をもたれ掛かるように雄二を座らせてやった。
「脳内麻薬物質の分泌による精神安定の処置の実行。これで良いか。
まぁ身体は上手くいってそうだな。
偶に居るんだ、好奇心か知らんが睡眠状態でやらない奴がよ。
お前ら二人は異常は無いか、まぁ無いな」|(英語)
「俺たち、何を、されたんで、しょう、ね?」|(広東語)
「さあな、わからん。消毒でもされたのか?」|(英語)
「うぁぁぁ、終わった? あ、あれ、お風呂、息が吸える?
吐ける? やったぁ!」|(日本語)
目が虚ろな雄二が意味不明な事をブツブツと呟いている。
ヤバい薬をキメている様な精神状態に近いのか。
「ホンダ大丈夫か? おい、おっさん何をした?」|(英語)
ジムが太い腕を伸ばし、雄二の両肩を持って揺すっている。
正気に戻そうと試みてみたが、駄目そうだ。
「喜べよ、お前ら母ちゃんの腹から出て、生まれて初めて完全無菌
状態になれたんだ。滅茶苦茶、綺麗なんだからな。
常在菌、ウイルス、腸内細菌、虫歯菌、水虫、その他諸々を全部
洗い流してやった。感謝しろよ?」|(英語)
「はい? 今、なんと言いま、した、か?」|(広東語)
「何だマイケルどういう意味だ。綺麗になったんだろ?」
|(英語)
テンガロンハットのおっさんの説明が続く。
「口の中から尻の穴、鼻や耳の穴、毛穴、汗腺、身体の穴という
穴を全部洗ってやったんだ。
お前ら初めて綺麗な人間になれたんだ、喜べよ?」|(英語)
「腸内細菌が居ないって、事は・・・どうやって食べた栄養を
消化、したり吸収するん、です、か?
酵素で分解が出来、ないで、しょ?」|(広東語)
「お前さん、なかなか頭が良いな、そういう奴は貴重だ。
最初に捕獲された時に機械を入れられたろ?
それでやるんだよ。自動捕獲機に言われなかったか?
心肺機能、呼吸機能、消化吸収機能、骨髄、代謝、免疫、
その他諸々の身体機能の補助並びに強化を、その機械でやる。
もう他人に頼る必要がない独り立ちだ、理解できたか?」
|(英語)
ジムは何が何だか全く理解が出来ていないのか、呆然としている。
雄二は、まだムニャムニャと訳の解らない事を呟いている。
陳は、おっさんの言葉に愕然とした。いや恐怖のどん底に落とされた。
「機械で全部やる、って? 他人、って?
初めて、綺麗な人間になれた、って?
え、え? 自分以外のDNAを一切排除、したってこと、です、か?」
|(広東語)
「お前インテリだな。教え甲斐がある、そういう奴は嫌いじゃない。
とことん鍛えてやるから覚悟しろよ? ははは」|(英語)
おっさんの笑い声が聞こえる。
その姿は見えないが、またあのニヤリ顔なんであろう。
陳は顔の血の気が引いていた。
そんな凄いことを、お前らちょっと風呂入ってこいよ、みたいな感覚
で寝ている間にやられたのである。
その様子を見てジムも何となく察しがついたのか表情を固くする。
教える、鍛えるって何だ? 俺たちをか? この糞ったれなおっさん、
俺たちに何をやらせようって魂胆なんだ? と色々と疑問が湧いてきた。
「まぁデカい兄ちゃん焦るなよ、先ずはそのラリってる相棒を介抱
してやれ。まぁもう少しで正常に戻るがな。
質問は色々と有るだろうが、それはまた後だ。先に服を着ろよ。
それとも股の間の自慢の息子を見せびらかすのが、趣味なのか?」
|(英語)
そう言われて二人は、自分たちがまだ素っ裸なのを思い出した。
慌てて机の上に置かれている服を手に取る。
「なんだ、これ? どうやって着るんだ」|(英語)
「これ、服なん、ですか、ね?」|(広東語)
二人が疑問に持つのも当然である。その服にはつなぎ目がない
のである。上下の全身タイツのぴちぴちのつなぎの作業着にみえる
のだが、ファスナーやボタンなどが存在しない。首の部分を広げて
着るのかと思い、陳はそこを思いっきり引っ張っているが、びく
ともしない。しかも凄く小さい、子供用ほどの大きさに見える。
「何してる、早く服を着ろよ。風邪はひかないがみっともないぞ。
それとも、着ないのが趣味なのか?
着たいと思って服を身体に付けろ、そうすれば着れる、簡単だろ?」
|(英語)
半笑いの声でおっさんが語りかける。
陳がそれを聞いて試してみた。服を身体の前に付けて、念じてみる。
すると、その白い服が変形して陳の身体に纏わりつく。
誂えたかのように身体にぴったりなサイズになる。
それを見たジムが驚く。
「おいマイケル、お前変身したぞ! 何だそれ、凄いぞ!」
|(英語)
目をキラキラ輝かせたジムが、それを真似て服を着た。
「何だこれ! スーパーヒーローじゃないか!」|(英語)
「真っ白、です、けど、ね・・・」|(広東語)
雄二は、まだ何かを呟いている。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




