第32話 基地
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
自動捕獲機は、そのトンネル状の穴の中に静かにゆっくりと
入っていく。
自動捕獲機の筐体が全て穴の中に入った瞬間、再びその入り口の
直径が小さくなっていく。
入り口が完全に密閉されると、先程までの漆黒の深淵が真っ白に
なり明るい光に包まれる。
「入り口が閉じたら、トンネル内が明るくなりましたね」|(日本語)
「あぁ、外から観られたくないんだろ」|(英語)
「ここの中も、真っ白なん、です、ね。この部屋と、同じで壁
そのものが光って、ますよ」|(広東語)
入り口が閉まるまで真っ暗だったため気が付かなかったが、
自動捕獲機が通過する度に、同じ様な扉がまた開いてはその中に入る。
そして通過後には閉まっていく。
エアーロックでも兼ねているのか、何枚かの扉を通過していった。
閉まる時には通過した外側の通路の明かりは落ちて、漆黒の闇に戻る。
「結構な数の扉があるんですね。かなり頑丈にしてます」|(日本語)
「核ミサイルの攻撃でも想定してるんじゃ?」|(英語)
「えぇ、それに空気漏れや、外の放射線の影響を、受けない為、かな?
それと、月面、ですからクレーターに成る、ほどの、隕石の落下、
から保護してるの、かも」|(広東語)
「なるほどな」|(英語)
「何層にも渡る防護壁という訳ですかね」|(日本語)
「こんなモノ、一体いつ頃に造られたんだ? 俺たちが乗っている
コイツですら製造から一万五千年も経ってるんだろう?
その基地ともなると・・・」|(英語)
「想像も、つかない、ですね」|(広東語)
「はい、着きました。ここで降りて下さい。私の指令はここまでです。
ご搭乗ありがとうございました。お荷物をお忘れにならないように
ご注意下さい」
場の雰囲気を読んでいるのかどうかいまいち掴み所がないが、自動
捕獲機が、また三人に声をかける。
飛行機が到着して機内アナウンスでも聞いている気分になるように
台詞が決まっているのか、自動捕獲機のセンスの無いジョークなのか
判断に苦しむが、全員の緊張が少しだけほぐれた。
周りは何も無い通路と同じ直径の円筒形の様な場所に浮かんで
いる様だ。いつの間にか天井が閉じてしまっている。
「あ、カバンを持っていかないと!」|(日本語)
雄二は慌ててキャリーケースを取りに行く。コーヒーを飲んだ後の
カップをどうしようかと悩んでいると、
「トイレの中の流し台に置いて下さい。殺菌・消毒・洗浄を実行します」
そう言われたので、それぞれのトイレの流し台の中に一つずつ入れた。
静かにそのシンクも蛇口も収納され、どこから出てきたのかさえ判らない
くらいに表面が平滑になった。
雄二が出ると、トイレの入り口も全て同時に閉じられていく。
「座席のリクライニングやテーブルを元に戻すか?」|(英語)
「お気遣いなく。乗務員が後で確認・清掃しますので」
「本当かよ、CAなんて見なかったぞ?」
|(英語)
「今度は金髪碧眼の美人CAを用意しておきます。
またのご利用をお待ちしております。
ご搭乗ありがとうございました」
「そうかよ。俺は黒人美人が好みだ、覚えとけ!
ついでにLGBTもな」|(英語)
ジムはニコリと微笑み、ウインクしながら答える。
これも自動捕獲機のくだらない冗談なのであろう。
どこで覚えたんだろう? 飛行機に乗ったことなんて無いだろうにな、
と雄二は疑問を抱いたが、衛星放送の電波を傍受してドラマか映画でも
勝手に視聴して学習してるのかもしれないな、と納得した。
「またのご利用ね・・・」|(日本語)
「このまま乗って、家に帰りたいです、けど、ね」|(広東語)
「だな・・・」|(英語)
真っ白な光が三人を包み込み、その姿は消えた。
三人は気がつけば、自動捕獲機の真下に立っていた。
床から3メートルの高さで静止して浮かんでいる。
改めて自分たちの目で見ると大きい。こんなモノに乗ってきたのか、
しかもコレと喋っていた、更に大昔から現在までずっと現役で稼働
している機械なのか・・・と感慨に耽る。
暫く、三人は呆けて並んで突っ立っていたが、壁の方に扉が開いた
のを感じ取った。またしても何も無い場所が扉になったのである。
そこから、クルマが出てきた。
真っ白で四人乗りで屋根がない、第二次大戦中のウイリスジープを
少し前後に長くした様な形の四輪の乗り物である。
それと異なるのは、前後が同じ形である事だろう。
前と後ろに直角に起った窓ガラスが有る。ここでは雨が降らないので
必要がないのか、ワイパーは付いていない。
「昔のジープみたいな車だな」|(英語)
「タイヤで走ってますね」|(日本語)
「誰かが、運転して、ます、よ」|(広東語)
前の席の左側に男らしきモノが乗って、ステアリングホイールを
掴んで運転しているように見える。
こんな宇宙人の高度な技術の施設なんだから、自分で運転なんてする
必要もないのでは? 地球でも自動運転の技術が構築されつつある
と言うのに、と三人は訝しんでいた。
「よう、新入りさん」|(英語)
三人の前にその白いクルマを停めると、運転していた男が軽いノリで
そう声をかけてきた。白人のおっさんが座っているのである。
「おっさんですね」|(日本語)
「あぁ、そうだな」|(英語)
「宇宙人、じゃない、んだ」|(広東語)
三人とも声をかけられて落胆しているのか、ホッと胸を撫で下ろして
いるのか。複雑な心境である。
「おっさんで悪かったな。荷物を持って、コイツに乗れ」|(英語)
南部訛の英語で喋りかけてくるその男は、カーキ色の軍服の様な服装に
編み上げの茶色の革靴を履き、薄茶色のテンガロンハットも被っている。
「は、はい・・・」|(日本語)
「了解だ」|(英語)
「わかりま、した」|(広東語)
三人は直ぐにクルマに乗ろうとしたが、雄二のキャリーケースを
載せる場所がないのに気が付いた。
雄二がおどおどした態度で、その運転してきた男に質問する。
「すいません、この荷物を何処に載せればいいですか?」|(日本語)
「あ? 俺はポーターじゃねーぞ、その辺に載せろ。後ろがあるだろ?
そこに置いておけ。落ちねーよ」|(英語)
セダンタイプであればトランクにあたる部分のボディを右手の親指で
自分の後ろを指さして、面倒くさそうにその男は答えた。
ボンネットと同じ形で地面と並行であるそのトランク部分に、雄二は
キャリーケースをヨッコラショっと、担いで載せようとしたがバランスを
崩した。見かねたジムが持ち上げて代わりに載せてやる。
「ありがとうございます」|(日本語)
「ここで良いのか? 車に傷が付くような気もするが、それに
荷物が落ちないか?」|(英語)
それを見たテンガロンハットの男は、また声をかける。
「載せたか、じゃお前らも乗れ、ベルトなんてしなくて良いぞ、
ここじゃパトカーなんて走ってないからな」|(日本語)
ニヤリと笑いながら、また親指を立てて後部座席の方を示す。
ジムが怪しげに、大丈夫かコイツ、という表情で助手席に座り、
雄二と陳は恐る恐る後ろの席に座った。
全員が座ったのをチラリと確認すると[トランク][座席]
の表示の二つのボタンを押す。するとそれらが点灯する。
「そもそもベルトがねーしなぁ! ははは!
おい、でっかいの笑えよ、無愛想だな」|(英語)
帽子の男はジムを見て「ノリが悪いなコイツ」みたいな顔をして
笑っている。
「ほんじゃ行くぞ。おい自動捕獲機、後で話がある、待っとけ」
|(英語)
「わかりました」
男は、右腕で助手席との間にあるシフトレバーを「N」から
「D」に入れ、その近くにある「P」のボタンを押して、光っている
状態から消えたのを確認した。
その後ステアリングホイール (丸形では無く上下が真っ直ぐな
楕円状)を右に90度回した。
すると、クルマは無限軌道の戦車の様に右回りに超信地旋回を始める。
前輪は右に切れ、後輪は逆に切れている。
四輪操舵駆動なので、前後の駆動輪の向きが90度回転した。
4WD (四輪駆動)ではなく4WDS (四輪操舵・四輪駆動)なのだ。
三人は前に進むものだと思っていた所、意外な動きに仰天してる。
「え? 何、回転するの!」|(日本語)
「なんだ! なんだ?」|(英語)
「うわ! なに、これ?」|(広東語)
テンガロンハットの男はその反応を見て、またニヤリと笑う。
「何だお前ら、クルマに乗ったことねーのか? 田舎者だな」
|(英語)
そして、その白い車は360度回転して、もと来た方向に向き
を変えた。
ニヤついた男はステアリングハンドルを真っ直ぐにして、今度は
シフトレバーの左側のレバーを握り軽く前に倒した。するとクルマは
静かにゆっくりと前に進んでいく。
「今回は三人か、まあ良い」|(英語)
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




