第29話 人類の遺産
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
「あれって何ですか? 何だか四角い板みたいな物が斜めに置いて
ますよね」|(日本語)
「どれだ、ん? あれか?」|(英語)
雄二が気になっていた物は、斜めに立て掛けられ表面に丸い模樣が
沢山ある、約50cm四方の正方形状の板みたいな物体である。
雄二は最初は太陽電池かと考えたが、あの時代には無かったのでは
と思い出した。先程、陳も言っていたが、アポロ宇宙船の電源は、
液体水素と液体酸素を利用した燃料電池だったのだ。
それにあのサイズだと、仮に太陽電池だとしても小さすぎて着陸船の
必要とする電力には全く足りない筈である。日本の民生用の家の屋根
に設置されている太陽電池発電パネルなんて、数メートルのサイズ
だからだ。
それを聞いていた陳が、雄二が指差す方を見て答える。
「あ、あれですか、あれは多分、レーザー光線を反射、させるための
板です、ね」|(広東語)
「レーザー? 地球から光線を発射するんですか?」|(日本語)
雄二が疑問に感じ、陳に質問する。意味が分からない様子の顔で
キョトンとした表情になっている。
「そう、です。
地球の天文台、から、レーザー光線を、あの板、みたいな奴に、
当てるん、です。その反射してきた、レーザーの、行って帰って
くる時間を、測定して、地球と月の間の、正確な距離を測るん、
ですよ。今でも、観測してる、かも? あれを地球からレーザー
光線でピンポイントで、狙うのが凄く難しい、みたい、です」
|(広東語)
「何? マイケル、それ本当なのか?」|(英語)
アメリカ人でも知らない事を、香港人が熟知しているのも皮肉な話
である。随分と驚いたのか、陳に対する名前の呼び方まで変わった
ことすら自覚もしていない。
「本当、ですよ。陰謀論って、あるじゃない、ですか。あれの反論に、
使われて、ますよ。」|(広東語)
「あぁ、実はアポロは本当は月に行っていない!って言い張る連中の
事ですよね」|(日本語)
「あぁ知ってるぞ、そう云う妙な理論を主張する奴らが居るの。そんな
糞ったれな阿呆どもに、今のここの風景を拝ませてやりたいよな?」
|(英語)
「ですよねぇ。すぐ眼の前に有りますもんね」|(日本語)
「外に、出て、触りたいです、よね」|(広東語)
「申し訳有りませんが、船外活動用作業服が無いので我慢して下さい」
有れば外に出ても良いよ、みたいな感じで自動捕獲機が話に割り込ん
できた。もし積んでいたら、折角捕獲した人間がそれを着て逃げるから
載せていないのかな? と雄二は疑問を持った。
「行ってみたいですよねぇ」|(日本語)
「いや、駄目だ。人類の歴史的な貴重な遺産だぞ。足跡が増えるのも
不味いんだぞ!」|(英語)
「そ、そうですよね、やっちゃいけないですよねぇ」|(日本語)
「残念です、けど、これは、このまま置いて、おくのが良いん、
でしょうね」|(広東語)
三人は一様に黙り込みコクコクと頷いている。
そう、これは貴重な人類の歴史の資料である。無闇にどうこうするべき
代物ではないのである。暫く経ってジムが二人に声をかける。
「結構堪能したな。みんな、そろそろ良いか?」|(英語)
「はい、そうですね。他のアポロも見てみたいですが、同じ様な物で
しょうし、この感動はもう味わえないでしょうから」|(日本語)
「そう、です、ね、着陸船が、放棄されて墜落した、跡も、見たい、
ですが・・・」|(広東語)
「何? マイケル、そんな物もあるのか? 俺知らんぞ!」|(英語)
「あの、司令船とドッキング、した後の、LEMは放棄、されて、それは、
月の重力に引かれて、何処かに墜落、してた筈なん、です。
多分、ボロボロになって、いる、と思います、けど」|(広東語)
「そうなのか、マイケルお前詳しいな。あれだギークだな?」|(英語)
「ジムさん、「ギーク」ってなんですかね?」|(日本語)
「ん、日本語に翻訳されていないのか、何と説明するべきかな。
技術系に詳しいオタクかマニアって感じかな?
昔は蔑称ぽかったが、今はそう悪い意味でも無い。
スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクみたいな奴だと思え。
ついでに似た言葉でナードは、日本のアニメ・オタクに近いか。
そっちは駄目だ、キモい奴と白い目で見られる」|(英語)
「へぇ、スラングってやつですかね、色々と勉強になるなぁ。
陳さんも凄く博識ですし、伊達に元敏腕IT技術屋さんをやってた
訳じゃなかった、という事ですね」|(日本語)
「褒めても、何も、でませ、んよ? 禄に、荷物も、持ってきて、
ませんし・・・ それに日本のロボット・アニメも好き、です、よ」
|(広東語)
ジムは対抗心が湧いたのか自分にもそれなりに知識があるのを披露
したいのか、知って欲しいのか、話題を少し変えてきた。
「そう言えば、バズ・オルドリン飛行士がミッションの途中でUFOを見た
と証言してたのを思い出したぞ。テレビの番組だったかインタビューを
受けて答えているのを、観た記憶がある」|(英語)
「そうそうアポロに限らず宇宙飛行士には、不思議な飛行物体を目撃して
いる人って多いみたいですね。何か忘れましたけど、俺もテレビの番組
で観た記憶があります。スペースシャトルの乗組員でも観た人が居るとか」
|(日本語)
「はい、そうですね。その原住民が観たのは私でしょう」
「なんですと?」|(日本語)
「おいおい!」|(英語)
「えぇぇぇぇっ!」|(広東語)
三人は、ほぼ同時に驚愕の表情で大声を出した。
「ここの原住民もやっと星の外に出る事が出来るようになったのか、
と興味があったので、追跡して観察をしてました。
指令が無い時は暇ですので、私の好奇心での行動です。
最近は、通信衛星や放送衛星の電波を受信し内容を解析して、
原住民の知的水準や娯楽などを確認・観察して待機しています」
「お前だったのかよ・・・」|(英語)
「よくもこんな原始的な機械に乗ってくるな、と関心しました。
命知らず、度胸がある、と原住民の言葉では表現するのですかね?
表面の色を替えるのをやめて、それで原住民に少し姿を見せて反応を
楽しもうか、と思考しました」
「いや、その言い方は間違いじゃ、ない、です。けど、あの証言は、
本物だった、んだ」|(広東語)
「反応を見て楽しむ、ってお化け屋敷の幽霊役の人みたいな心境なん
ですかね・・・」|(日本語)
「もしかして、13号の事故はお前の仕業か? 自分の正体がバレそう
だからって、攻撃でもしたのか?」|(英語)
ジムは少し興奮気味である。先程と同じく少しヤバい雰囲気を感じて、
また雄二は彼を止めようとしたのだが、意外な答えが出てきた。
「違います。あれは原住民の機械の故障が原因です。私は観てただけです。
私は自動捕獲機でありまして、地表に居る現住民を確保するのを生業と
してる物であります。攻撃の為の武装は装備されていません」
「そうなのか、まぁ三人は無事に帰ってきたし、そうか、事故か・・・」
|(英語)
興奮気味だったジムは、少し安堵というか不満気味な表情になる。
自国の自慢にケチを付けられたのが、気に食わなかったのかもしれない。
「月の裏側にお連れする予定に成っております。
最後に外を観ますか?」
雄二は、その言葉に既視感を覚えた。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




