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第26話 目覚め

作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。

多分、内容とは関係ないと思います。


三人が深い眠りに落ちて直ぐに、自動捕獲機はその速度を下げていた。


自動捕獲機は、地球の重力圏を離脱し月の引力圏に近づいていた。

人間の製造した普通のロケットや探査機であれば、月の引力に引かれ

軌道に載せる所謂「スイングバイ」を利用するが、自動捕獲機はそれを

使わない。使う必要が無いからだ。

彼(あるいは彼女?)の場合、引力制御にて駆動・移動飛行するから

である。

重力制御では無い。


宇宙にある四つの力の一つ、物体間に働く万有引力。

その増減、向き、遮断を自在に操作出来る推進機関を内蔵し動いている。

地球からの引力を完全に遮断し、自身に掛かる月からの引力のみを増幅

させることで、それに向かって引かれて進む。

重力を利用したスイングバイでは、途中で機体の速度の変更はほぼ不可能

であるが、自動捕獲機の推進機関では、好きなように速度の増減が出来る。


今は三人の拉致被害者の睡眠時間を確保するため、地球と月のほぼ真ん中

あたりで静止状態を保っている。二つの星の重力が均衡するラグランジュ

ポイントで停まっているのでは無い。

両方の星の引力を断つ事で、どちらにも引かれないので静止している。


最後に眠りに落ちたチェンの睡眠時間が六時間になった頃、自動捕獲機は

三人の身体に入れられている機械に指令を出し、睡眠状態からの覚醒を促す。


その司令を受けて、ほぼ同時に三人が目を覚ます。それと同時に、それぞれの

部屋の内部が昼間のように明るさを取り戻した。

部屋の仕切りであった全ての壁も、いつものように音もなく開き出した。



「あ、あれ? 俺いつの間に寝たの? 確か二人にトイレの説明を

 しようとしたら逃げられちゃって、仕方がないからと横になった、

 だけなのに」|(広東語)


寝床から起き上がって、雄二は二人に朝 (なのかどうかは不明であるが)

の挨拶をする。


「おはようございます、陳さん、ジムさん。

 何だか、物凄く良く眠れたんですけど、どうでした?」|(日本語)


「おはよう、ございます。俺も知らない間にグッスリ寝ちゃって、ました」

 |(広東語)


「おう、おはよう。確かに俺も熟睡できた。すげぇ、スッキリしたぞ。

 これ時差ボケも解消できたのか? それに何だか体の調子も良い」

 |(英語)


肩関節がほぐれているのを確認する為か、いつもの寝起きの運動なのか

肘を曲げた左右の腕を交互にグルグルと回し首も左右前後に動かしながら、

ジムが二人の居る所に近寄ってきた。


「睡眠時に、体内の機械にて成長ホルモンの分泌を強制的に促進し、

 通常の原住民よりも迅速且つ強力に疲労の解消、それと体内の細胞

 から遺伝情報を読み取り、それを元に万能細胞を生成して損傷部の

 修復・修正・強化を実行しました。

 ついでに、体内時計の時間の調整・修正を実行しました」


「え、えぇぇ! なんですと? 一体全体、何したんですか?

 いや、物凄い事をサラッと言いませんでしたか、今!」|(日本語)


「で、ですよね、ですよね! 身体に入れられたこのチップ、スゲェっす!

 原理と構造と製造方法を是非とも、ご教授お願い、します!」|(広東語)


寝起きに不意に意表を突かれた雄二と陳は、驚愕の表情であったが、


「現在の原住民の技術では無理、と思考します」


「ですよね・・・」|(日本語)

「ですよね・・・」|(広東語)


二人とも、少し落ち込んだ感じで顔を見合わす。一人だけ不服そうな顔をした

ジムはベッドに腰を掛け独りごちる。


「折角、気持ちよく目覚めたのによ、煩いぞお前ら。

 あぁ寝起きのコーヒーが飲みたい・・・」|(英語)


「申し訳有りません、私の中にはそれはありません。飲料水は備蓄して

 いますが、それで構いませんか?」


「水かよ・・・ 無いなら仕方がねーな、それで我慢するか。

 で、どこから出してくれるんだ?」|(英語)


「トイレの中にありますが、それで構いませんか?」


「誰が便所の水なんて飲むんだ、要らねーよ! ぶっ飛ばすぞ!」|(英語)


「さ、流石に、それはねぇ・・・ 抵抗がありますよねぇ?」|(日本語)


どうやら、ジムと自動捕獲機のやり取りを聞いていたらしい雄二が、

落ち着きを取り戻したのか、彼に同意する。


「いや、でも国際宇宙ステーションじゃ、水の再利用をやってるとか

 何とか、聞いたような、ないような」|(広東語)


陳も雄二と同様に落ち着いたのか、会話に参加してきた。


「それって、シャワーやトイレの水なんかを循環・濾過させて、再利用

 しているんじゃ?」|(日本語)


「そうなの、かな? でも、アメリカの月面探索のアポロ宇宙船だと、

 ロケットエンジンの燃料の液体水素と酸素を使って燃料電池で発電

 した後に排出された水を飲料用にしてた、ような記憶があり、ますよ」

 |(広東語)


「もう良い、我慢する。月に着いたらマトモな物があるんだろう?」|(英語)


「わたしは摂取の必要が無いので、あちらの事情には詳しくないのですが、

 原住民用の食料の用意・備蓄はある、と思考します」


「何でも良いが、便所の水は勘弁だ」|(英語)


そう言って、ジムは不貞腐れて、また自分が寝ていたベッドに行き横に

なってしまう。


「そうですか。トイレの中に蛇口が有りまして、そこから飲料水を排出

 する構造になっているのですが」


「でも、それは誰かの、俺も寝る前に小便したし、それを流した後の

 水だろ? そんなもん要らねーよ」|(英語)


横になって自分の太い腕を枕にして、窓に成る壁の方を向いたまま答える。

その態度は、まるで自分の言い分を聞いてもらえない、駄々をこねる子供

の様である。


「それとは異なります。地球に滞在している間、大気中に有る水を摂取し

 それを殺菌・消毒・洗浄して原住民の飲用に利用するために備蓄して

 います。

 トイレの水はそれとは異なる循環系になっており、同じく大気中に有る

 水を摂取しそれを殺菌・消毒・洗浄して原住民の排泄物の洗浄に利用する

 ために備蓄しています。利用後は殺菌・消毒・洗浄・分解して地球に滞在

 している間、大気中に排出します」


ジムは自動捕獲機のその言葉を聞いてベッドから上半身を起し、そして

飛び起きる。


「そうなのか? それを先に言えよ! お前さん、やっぱりどっか

 抜けてるぞ! ホンダ、チェン、お前らも一緒に飲め!」|(英語)


「いや、まぁ頂きますか、ねぇホンダさん」|(広東語)


「えぇ俺も? でもカップとかの容れ物が無いですよ?

 あ、そうだ、俺旅行カバンを持ってきてたんだ、忘れてた」|(日本語)


「あぁ、あの隅っこに置いてあるキャリーケースだな。

 あれホンダのだったのか。

 ずっと気になってたんだ。何を持ってきたんだ?」|(英語)


雄二が、一番端 (雄二が最初に入ってきた部屋)のベッドの

頭側に置いていた旅行カバンを持ってくる。

二人が興味深げに覗き込む。


「あ、あの、お二人の荷物は? 何処にも無さそうですけど。

 何も持ってこなかったんですか?」|(日本語)


「俺、何も持ってこなかった、ですよ。家に帰る時間なんて、

 無かった、ですから」|(広東語)


「俺も持ってこなかったぞ。そこまで気が回らなかったな。

 色々あってな・・・」|(英語)


「えぇ! 折角、捕獲機さんが荷物を持ってきて良いって言って

 くれたじゃないですか、勿体ないなぁ。

 と言っても、俺の荷物も母ちゃんが急いで用意してくれたんで、

 中に何が入っているのかは知らないんですけどね」|(日本語)


「へぇ、いいお袋さんじゃねーか。俺もジェミーにかまけて無いで

 ちゃんと準備するんだったな」|(英語)


「ジェミーさん? 奥さんと何してたんですか?」|(日本語)


「そりゃ、お前、最後なんだから色々と、なぁ? ほら」|(英語)


「ジムさんの奥さん? 結婚してる、のですか? それじゃあ、

 あの、いやらしい意味の、別れる前の最後のアレ、ですね?」

 |(広東語)


陳が、左手の親指と人差指を輪っか状にして、そこに右手の人差し指を

差し込むジェスチャーをする。


「チェン! お前、ぶっ飛ばすぞ!」|(英語)


黒い顔が少し赤みを帯びているように見える。


「まぁまぁ二人とも、カバンの中身を見てみましょうか」|(日本語)


今にも陳に掴みかかりそうなジムを収めるように、雄二が真ん中の

ベッドの上にカバンを置いて、ファスナーを動かしてその蓋をひらく。


中身は、電子レンジで温めると食べられるパック式の白米三個、カップ

のインスタント拉麺が四個、袋詰された切り餅が1袋、瓶に入ったイン

スタントコーヒーが一本、500mlペットボトルの飲料水が二本、鯖の

缶詰が四個、乾パンが一袋。割り箸が数本。

恐らく、これらは防災用にと買い置きしていた物であろう。

新品の歯ブラシ四本と歯磨き粉が一本、これは出立の時、雄二が洗面所

で探していた物だ。それにウエットティッシュの箱が一つ。

水が無くても髪の毛が洗えるシャンプーが一本、タオルが数枚も入って

いた。それと、陽子と雄二が並んで写っている写真が収められた写真立て

があった。これは雄二の部屋に飾っていた物である。


それらを見た雄二は、少し涙目になりかけていた。


「母ちゃん、あの短い時間に・・・どうやって?

 それにしても着替えは? 下着、パンツくらい入れてくれても・・・

 まぁ時間が無かったし贅沢を言っちゃ悪いですよね」|(日本語)


ジムがカバンの中身を指さして雄二に質問してくる。アメリカでは見かけ

ないので珍しいのであろう。切り餅やパック御飯は、初めて見たらしい。


「良く解らんが、これは食べ物なのか? もしかしてこの瓶に入って

 いるのはコーヒーか? こいつは有り難い!」|(英語)


「そうです、これをカップに入れてお湯を注いでかき混ぜるとコーヒー

 になります。

 流石に、ちゃんと豆を挽いて淹れた奴に比べると味は落ちますけど」

 |(日本語)


「贅沢は言わん、これ飲ませてくれないか? 頼む!」|(英語)


ジムはコーヒーの瓶を両手で胸の前に抱えて、雄二に拝んでいる。


「はい良いですよ、みんなで飲みましょう!

 残念ながら砂糖やミルクは無いですけど。

 それと、飲むためのカップが無いんですよねぇ」|(日本語)


「飲料水を飲むのに必要なら、お出しします」


「有るのかよ! だから先に言えって・・・」|(英語)


「でも、お湯が、無いですよ。コンロなんて無いから水を温められない、

 ですね」|(広東語)


「お、ん? うん、そうだな水じゃなぁ・・・」|(英語)


「必要でしたら、加熱した水をお出しします」


「だから先に言えって・・・」|(英語)


怒鳴ってはいるが、顔は微笑んでいた。


三箇所のトイレの中に小さな扉がまた音もなく開き、そこから真っ白な

蛇口とその下に小さな真っ白な流し台が現れた。

その中には、やはり真っ白なマグカップも一つ置かれている。

三人は、それにインスタントコーヒーの粉を入れ、お湯を注ごうと

する前に、ある重大な事に気が付いた。


「スプーンが無いですね」|(日本語)


「ない、よね・・・」|(広東語)


「おい、二人ともカバンの中を、もっとよく探せよ! ホンダの

 お袋さんが気を利かせて入れてるかもしれないじゃないか」|(英語)


「えーっと、割り箸はあるんですけどねぇ、スプーンは・・・」|(日本語)


「飲めないのか・・・目の前にあるんだぞ、糞ったれ!」|(英語)


今回はジムが泣きそうな顔になっている。かなり悔しいのであろう。

確かにこれでは蛇の生殺しである。

それを見かねたのか、陳が助け船を出す。


「その瓶の蓋に適当にコーヒーの粉を出して、そこからカップに

 適当な量だけ入れてからお湯を注いで、それで、その割り箸で

 掻き回せば出来る、のでは?」|(広東語)


「チェンお前天才か? やるじゃねーか!」|(英語)


「いや、それくらい普通は、思い付きます、よね・・・」|(広東語)


「まぁね・・・」|(日本語)



三人は、何とかかんとかモーニング(朝なのか?)コーヒーを淹れて飲み、

談笑をし始めた。

窓の外の景色は、ほぼ星しか見えないため動きが解りにくいので、彼らは

気が付いていない。

先程から自動捕獲機が、再び月の引力を使いそちらに向かってゆっくりと

動き出していることに。


この物語は創作です。

作者の空想・妄想の塊です。

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