第25話 睡眠
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
陳の翻訳についての退屈な講義にウンザリし始めている二人に対し、
自動捕獲機が声をかける。
「月に行きます。そこに依頼主が待ってますので。お連れします」
|(英語)|(日本語)|(広東語)
「おぉ、もう行くのか? 最後に地球を見せてくれ、頼む頼む!」|(英語)
「ですよね、見ましょう、見ましょう、ね、陳さんも、さぁ!」|(日本語)
「あ、あぁ、そうです、よね、これで最後かも、しれないし・・・」|(広東語)
二人に促されて、陳も窓の景色に見入る。
少しずつ、地球の大きさが小さくなっているのが判る。
先程来た静止衛星軌道の時よりも、小さく見えている。
「なぁ、自動捕獲機さんよ、俺夜中に連れてこられたんで眠いんだが、
ベッドで寝かせてもらっても良いか?」|(英語)
「ジムさん、捕獲されたの何時くらいだったんですか?」|(日本語)
「そうだな、深夜の3時かもっと遅かったかな、流石に眠い・・・」|(英語)
「そうか時差が有りますもんね。あのベッドで寝させて、もらえば?」|(広東語)
「はい、いきなりお連れするのも申し訳ないので、少し睡眠を取りますか?
月に到着するのを、遅らせても構いません。
遠慮なさらず、宜しければ三人ともどうぞ。到着次第、起します」
「俺、あんまり眠くない、ですけど、何というか興奮しちゃってる、のかな?
それに香港だと、まだ時間も早かった、からね・・・」|(広東語)
「機械を入れました。あなたの身体では、これから行く所には適応出来ま
せんので。
大脳、小脳、脳幹、延髄、眼球、耳鼻、舌、四肢、背骨、心肺機能、呼吸機能、
消化吸収機能、骨髄、代謝、免疫、その他諸々の身体機能の補助並びに強化を
行うための物です。
この機械で睡眠の取り方の補助並びに強化ができます。
睡眠状態に直ぐに出来ます。覚醒状態にも直ぐに出来ます」
「え? 何ですと? そ、そんな事も出来ちゃうの? 嘘、でしょ?」|(広東語)
「いえ、嘘は付けませんので。牽引光線で捕獲した際、意識が無くなって
いたと思考しますが、あれは入れた機械で一時的に睡眠状態にさせて
頂いたからです。三人とも睡眠を取るのでしたら、どうぞ」
「え? でも一番最初に光線で捕獲された時は、機械を入れられてなかった
けど意識がなくなってましたよ、どうしてですか?」|(日本語)
「あの時は、睡眠光線も同時に放射してました。この中に収容した後に、
原住民に暴れられないようにする為です」
「そんな事も出来るんだ・・・」|(広東語)
「本当かよ! スゲェな。と言うか、そんな沢山あの糞ったれな機械を
入れたのか? 俺、聞いてないぞ。まあ、今更どうでも良いか・・・
頼むよ、自動捕獲機さんよ、寝かせてくれ。
流石の俺でも、色々あったのでキツイ」|(英語)
「それでは、全ての部屋を繋げた状態にしますので、どうぞ」
今は二つの部屋を区切っていた壁がなくなり先程よりは広くなっているが、
その奥にあるもう一つの部屋の壁も開放するらしい。
また、奥の壁が音もなく開いた。
「これ、また部屋を区切るのも出来ますか? もしかしたら、俺って
鼾が煩いかもしれないので、二人に迷惑を、かけるかも・・・」|(広東語)
「はい。部屋の明るさも変更できますよ」
「凄い、それも出来るんですね。これでトイレと風呂があれば立派なホテル
ですよねぇ。狭いですけど」|(日本語)
「あぁ、だな。狭いな・・・ 自動捕獲機さんよ、実は寝る前に
小便をしたいんだが、お前さんの中に便所はあるのか?」|(英語)
「はい、扉を開きましょうか」
各部屋の寝台の足の方にある壁が扉になり、音もなく開く。
ここも中が全てが真っ白である。洋式の便器が一組あるだけだ。
「へぇ、ここがトイレなんですね。でも開けっ放しで、やるの?」|(広東語)
「閉めたい場合は、考えて頂いたら実行します」
「結構、便利ですね。流す時も考えたら良いのかな?
あと・・・紙は? 無いみたいですけど」|(日本語)
「自動で清掃しますので不要、と思考します」
「は? お前さんがケツを拭いてくれるのか?
それはそれで何か嫌だな」|(英語)
「え、ジムさん自動洗浄便座を、知らないの?」|(広東語)
「なんだそりゃ?」|(英語)
「便器の中のノズルから、温水のシャワーが出て、お尻の穴を
自動で洗ってくれる、のですよ。
慣れたら意外と気持ちが良い、ですよ。
ねぇホンダさん、日本じゃ普通です、よね?」|(広東語)
「そうですね、全部じゃ無いけど結構有りますね」|(日本語)
「そ、そうなのか? 知らなかったぞ。進んでるんだなぁ。
でもシャワーで流してもケツが濡れるだろう?
やっぱり紙で吹かないと駄目じゃないのか、どうするんだ?」|(英語)
「温風が出て乾燥もして、くれるんです。それで乾かす、のかな?
普通は、紙も置いてます、から、拭く人も居るかもしれない、
ですけど・・・」|(広東語)
「一度、試されたら如何でしょう?」
「そんな自由自在に糞は、でねーよ。小便だけ試させてくれ、
漏れそうだ」|(英語)
ジムがトイレに入ると、扉が音もなく閉じる。壁にはつなぎ目が
無くなる。そこがドアだったのかすら解らないくらいに平滑に成る。
暫くすると、再び壁に扉が現れて開き、ジムがトイレから出てきた。
「普通だな。小便だけだと地球の便所と同じだ。
頭で考えると水が流れるのが、違うだけだ」|(英語)
「へぇ、なんだか拍子抜けですねぇ」|(日本語)
「もしかしたら、水洗トイレの構造自体が、宇宙人のテクノロジーを
利用して・・・」|(広東語)
「ホンダ、俺は寝るぞ。またコイツの講釈に付き合うのは御免だ」|(英語)
そう言うと、さっさと一番奥のベッドに移動してしまった。
ジムが床についた後、壁が音もなく現れて自動で閉まっていく。
と同時に、内部の照明が落とされていった。
「じゃ、じゃあ、俺も寝させてもらおうかな・・・」|(日本語)
「あ、はぁ・・・おやすみ、なさい」|(広東語)
雄二はジムとは逆の側のベッドに横になる。すると壁が現れて音もなく閉まる。
陳は、喋り足りないのか不服そうな顔で、残された真ん中のベッドに横たわる。
が、その刹那に深い眠りに陥ってしまった。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




