第23話 合流
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容とは関係ないと思います。
二人が笑顔で握手を交わしていると、徐ろに自動捕獲機が声をかける。
「もう一人の原住民の真上に居ます。そろそろ捕獲を実行します」
実は、この自動捕獲機の台詞は、同時に日本語と英語の両方で二人に
話している。
ジムは英語を、雄二は日本語の言葉を聞いて反応しているのである。
慌てて、二人は握っていた相方の手を放し窓の方に向きを変え、
それを見ようと立ち位置を変える。
自分たちが知らないうちに自動捕獲機が静止していたことに気が
ついて、少し驚いた顔をしてまた見つめ合う。
「あの、ここって中国ですかね?」|(日本語)
「そうなのか、どの辺りだ? 台湾か、香港か?」|(英語)
いつの間にか二人はベッドに並んで腰を掛け、幼児が電車の車窓に
釘付けになるように、窓になっている壁の景色の映像表示に見入る。
殆ど夜の時間帯である、地上で星のように無数に輝く街の灯りを頼りに、
いやここは上海だ、香港だろう、マカオだって、などと雄二とジムは
それぞれの言語で言い合っている。
「望遠拡大と赤外線映像も出来ますが、どうしますか?」
二人の言い合いを見かねたのか、自動捕獲機が声をかけた。
「おう、最後の犠牲者がどんな奴か見たい、頼む」|(英語)
「そうですね、どんな人なんでしょうね?」|(日本語)
「はい、いいですよ。どうぞ」
高層建築物が建ち並ぶ、夜の街並みの映像が表示される。
赤外線の影響で少し緑色の映像では、道路に並ぶ沢山の自動車を表示
しているだけで、人間の姿は見当たらない。
それに、時折歩道を歩いている人間も、殆どこちらに気が付いていない
様子である。
どうやら自動捕獲機は、表面の色を替えて夜空に紛れるよう擬態してる
のであろう。
「どこですかね? それらしき人は居ませんけど」|(日本語)
「今、夜だろう? こんなにくっきりとカラーで見えるのか?
暗視ゴーグルやヘリのFLIR (Forward Looking Infra-Red:
赤外線型前方監視装置) よりも高性能だな。凄いな。
ん、これ、タクシーの屋根か? このクルマを追跡してるのか?
それに、やはりここは香港か?」|(英語)
「俺、中国語は読めないんで自信は無いですけど、多分、香港ですね。
中国のクルマは右側通行ですけど、香港は昔イギリス領だったから
反対の左側通行なんですよ」|(日本語)
「そうなのか、お前さん詳しいな」|(英語)
「もう一人の原住民の真上に居ます。そろそろ捕獲を実行します」
窓の画像は拡大されているので二人は解っていないが、自動捕獲機は
弾道軌道から降下し、今は高度1万メートル程の上空にいる。
先程ジムが指摘したタクシーを追跡しながら、同じ速度で飛行している。
やがて自動捕獲機は音もなく、更に高度を下げていく。
「すみません、もう一人の原住民の方が番の人に会いに行くのに
乗せて欲しいとの事なので、急遽捕獲を実行します。暫くお待ち下さい」
「え、どういうことですか? そんな事もしてくれるんですか?」|(日本語)
「なんか、俺の時よりも待遇が良くないか? 何だかなぁ・・・
いや、別に構わないけどよ」|(英語)
タクシーから慌てて降り、走り出す陳 学義が窓に表示されている。
周りをキョロキョロと見回し、何かを探すように走り回っている。
「あ、タクシーから男の人が降りましたね。どうやら、誰かに見られないように、
隠れる場所を探してるんでしょう。多分あの人かも」|(日本語)
「らしいな。それにしても自動捕獲機さんよ、アイツをこの部屋に入れるのか?
流石に、ここに三人は狭いぞ。ホンダは良いだろうが、俺はキツイぞ」|(英語)
「別の部屋に捕獲します。暫くお待ち下さい」
既に高度は100メートル程である。俄に自動捕獲機は表面の色を替えた。
陳は周りに人目がないことを確認して立ち止まり、上にいる自動捕獲機を
見上げている。
どうやら、その場所で乗せて貰うことにしたらしい。狭い路地のような場所だ。
少し間をおいて、更に高度を下げた後、音もなく白い牽引光線が放射され、
彼の身体が空中に浮かぶ。
「なるほど、俺もあんな風に吸い込まれたのか、奇妙な光景だな」|(英語)
「そうですよね、ジムさんが吸われる時にも、俺見てましたよ」|(日本語)
「別の場所に移動します。暫くお待ち下さい」
どうやら、陳の番の住んでいる家に行くようだ。自動捕獲機は、
再び音もなく高度300メートルにまで上昇し、水平移動に移行した。
速度はさほど速くはない。恐らく自動車と同じ程である。
あるアパートの上空にて静止する。ここが彼の番の住んでいる所らしい。
ここで陳を降ろすのだろう。
今度は、周りの建物に触れそうな程にまで高度を下げた。
アパートの入り口に近い人目のない場所に再度、牽引光線が放射される。
陳の身体がその白い光の中に現れ、静かに地上に降りていった。
「自動捕獲機さんよ、タクシーに商売替えした方が向いてんじゃねぇか?」|(英語)
「ははは、こんなタクシーが有ったら儲かるでしょうね」|(日本語)
スマホを取り出した陳は、何やら喋った後、急いでアパートの中に向かって
走り出した。
「あの人が建物の中に入って結構な時間が経ってますよね?
誰かに事情を説明しているんでしょうか?」|(日本語)
「多分、そうなんだろうな。お前さんの時も、誰かに話したんだろう?」|(英語)
「そうですね。父ちゃん、母ちゃん、それに・・・」|(日本語)
「それに? もしかして彼女か?」|(英語)
「まぁ、そうですね婚約者・・・と言っても良いですかね」|(日本語)
「そうか、それは辛いな・・・」|(英語)
「はい・・・で、ジムさんは? 誰に話をしたんですか?」|(日本語)
「俺は、ジェミーだ。女房だ」|(英語)
「え! ジムさんって結婚してるんですか? それは辛いですよね・・・」|(日本語)
「あぁ、お互いにな・・・」|(英語)
先程までの談笑から、しんみりした雰囲気に代わり、二人とも黙り込む。
どちらも、残してきた家族に思いを馳せているのであろう。
その間に自動捕獲機が、陳が居るであろうアパートの部屋の窓の前に静かに
移動していた。
恐らく、その中に居る人間に、自らの姿を見えるようにする為であろう。
その動きに気が付いたのか、ジムが声をかける。
「おい、自動捕獲機さんよ、アイツこの部屋に居るのか?
中の様子を見れるか?」|(英語)
「はい、いいですよ。どうぞ」
先程走っていた男と若い女性が、何やら喋っている姿が窓に映し出された。
「おい、アイツ窓を開けたぞ! もしかして?」|(英語)
「あ、危ない! え? 笑いながら飛び降りた!」|(日本語)
物凄い爽やかな笑顔をした陳が窓を開け、その窓枠に足を掛けて、そして全く
躊躇することもなく飛び降りた。
地上6階のアパートの部屋の窓から飛び出した陳の身体は、地面に向かって
落下した。が、その刹那に真っ白な牽引光線が放たれたため落ちる速度が遅く
なり、逆に緩やかに上昇し始めた。
「おぉ、凄いぞ、アイツ笑いながら! 度胸があるのか、イカれたのか・・・」|(英語)
「そうですねぇ。とても嬉しいことが有ったんじゃないですかね」|(日本語)
「最後の原住民の確保を完了しました」
心配そうにアパートの窓から上半身を乗り出してこちらを見上げている若い
女性の姿が、窓に成っている壁に大きく映し出されている。
どうやら、三人目の犠牲者の望みを自動捕獲機が聞いて、それに答えて拡大
表示しているのであろう。
その顔は、笑っているようでもあり哀しそうな表情でもある。
暫くの間、その女性の姿が表示されていたが、垂直上昇から通常移動に移行して
その維持も不可能に成ったのか、地球の映像に切り替わった。
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




