第10話 一家団欒
作品タイトルは適当です。懐かしい響きの題名にしてみました。
多分、内容と関係ないと思います。
「いらっしゃい、陽子さん。早いわね、クルマで来たの?」
あぁ、もう陽子さんを家に入れちゃいましたよ。
母ちゃん、あの、旅行カバンをね・・・
「夜分にお邪魔します、お義母さん! はい、そこに停めてます」
”おかあさん”? いつもは”おばさん”って呼んでませんでしたか?
陽子さん、ちょっと何かちょっと、あのその・・・
今日は口紅が濃くないですか? 頬紅がピンクなんですけど、
気のせいかな、ちょっと化粧に気合が入ってませんか、陽子さん・・・
電話を切ってから、そんな時間ありましたっけ? 女って怖い。
あぁ、もういいや、タイヤっぽいのが付いた旅行カバンは諦めよう!
リュックサックに詰めよう、でも入るかな?
入るって・・・何を入れたら良いんでしょう。
着替えのパンツと靴下とシャツと、洗面所には新しい歯ブラシが
有ったかな? 髭剃りの泡に・・・えーっと、他には?
「あんた、洗面所に行って何してんのよ? 陽子さん来たんでしょ。
ほら、お迎えして、何か大事な事を言うんでしょ。ほらほら」
母ちゃんのニコニコ笑顔が、辛いです、これから言うことを考えると、
その笑顔が・・・心に刺さるんですけど。
「あ、歯磨き粉だ、そうだあの球も言ってたな。忘れるところだった」
母ちゃんが洗面台の下の物入れに、いつも新しいの買い置きして入れて
たんでした。あれを持っていこう! 新しい歯ブラシと一緒に!
「歯磨き粉? 晩ごはん、もう食べちゃったんですか?」
いや、違うんですよ、陽子さん。晩ごはんはまだ食べてないし、
この歯磨き粉は宇宙(なのかな?)に持っていくために!
「大丈夫よ、まだだから。さぁ、こっちに入って。ほら」
「お邪魔します、お義父さん」
”おとうさん”って、いやまだ違うから、まだ・・・
陽子さん、なんだか今日はおかしい?
「さ、入って、ここ座って、陽子さん、悪いねぇ。コイツが無理矢理に
呼び出すことしちゃって。多分ね・・・」
「お父さん、余計なことは言わないの。そういうのは主役が言うんです!」
誰か、俺の話をきちんと聞いてくださいよ・・・
何で、変な方向に盛り上がってるんですか。違うんですって。
みんな誤解してますよ。
「そうだな、悪いな、歳を取るとせっかちになってな、ははは」
いや、すんごい家族団欒の雰囲気なのに、これから・・・どうしよう。
ごはん・・・食べるか。そう先ずは、落ち着こう!
ハンバーグ弁当を買ってきてたんでした、中身がグチャッと偏ってますけど。
思い返せば、これを買いに行ってとんでもないことに巻き込まれた様な気も
しますが。この弁当の所為で・・・これでかぁ。
俺、なんでこんな物を買いに行こうと考えたんだろう?
「何をお弁当を見つめてるのよ、ほら、何か言う事があるんでしょ?
その為に陽子さんを、わざわざこんな時間にお呼びしたんでしょ。
しっかりしなさい!」
母ちゃん、何を期待してるのか知らないですけどね、俺これから多分・・・
「あの、陽子さん、こ、これ俺が食う予定だったんですけど、まだ全然、
全然手を付けてないですから、こ、ここに座って食べて・・・下さい」
「そうそう、先ずはご飯よね? 家族団欒よねぇ、お父さん」
「そうだな、四人で飯を食べるのも久しぶりだな、母さん」
「はい、失礼します、お義父さん」
陽子さん、畏まってるように見えますけど、座って食べる気満々ですね。
あのね、えーっとね、そのね・・・陽子さん。
それにしても、なんで父ちゃんは”おとうさん”と呼ばれて嬉しそう
なんでしょう。絶対、この人たち勘違いしてますよね。
これ、俺にとっては最後の晩餐になるかもしれないんですけど!
それにしても、最後に食べる飯がひっくり返してグチャッとなった
コンビニ弁当か・・・
この物語は創作です。
作者の空想・妄想の塊です。




