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蜜を知った蜂  作者: 愛菜
7/7

新宿を仕立てあげるのは

 大きなデパートでの下着販売は私にとって天職だったと言える。

新宿という街はどうも好きにはなれなかったのに、あの頃自分自身が完全に新宿の人間になっていた。

人は街に染まり、街は人に染まる。


新宿という街、夜の街と言われるその街を仕立て上げたのは新宿に集う若者たちだ。

街が人々を軽視し、人々も街を蔑視している。

街も、それはそれで満更でも無さそうだし、人々は街に軽視されたがっている。


そして私はここにいる。




誰のために、どのように、どのシュチュエーションで、ここで買っていった下着を身に纏うのだろうか。

際どい下着を買っていく、一見してそこらにいる普通の女性が夜になるとどんな変貌を遂げるのだろうか。

レジで美美しい下着をシワはならないように綺麗に袋に包む時、私は色んな想像を膨らませた。


ガーター付きのほとんどお尻が隠れていないようなパンティーを買って帰る会社員。

どう見ても彼氏でも旦那でも無いような歳の離れた男を連れて来店し、ティバックだけを片っ端から買って帰った男女。

綺麗な身体立ちのスラッとしたお姉さんが派手な下着を買って帰る。どうやらダンサーらしかった。

大きすぎるのが悩みなんです〜。という悩みをもらすピチピチの白ニットセーターの30代前半女性。 


色んな人が、色んなシチュエーションで普段見せない自分を曝け出す。


想像したら面白い。


皆それぞれのやり方で体をくねらせ、自慢の身体をお披露目する。

そしてここで買っていった際どく艶めいた下着を、蝶のようにちらつかせ誘惑している彼女達の顔を思い浮かべてみる。



前までは汚らわしいと思っていた事が大人になってからは美しいと思うようになっていく。

前までは美しいと思っていた事が、今では逆にそんなに綺麗なものではなかったんだなと気づく。


大人ってそういう事だ。


新宿も、ある意味綺麗なのかもしれない。



新宿を仕立てあげる彼女達、その彼女たちにそっと華を添えるわたしたち販売員。


私も、いつからかこの汚く綺麗な新宿という街を仕立てあげている側に加担していた。







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