09 生徒会 vs あやかしクラブ
生徒会が去った後、残された俺たちは困っていた。
「策を考えろって言われてもな……」
「俺たちに太刀打ちできるのか? 相手は生徒会だぜ?」
「何を弱気になっておる! 力でねじ伏せてしまえばよかろう!」
それが出来れば苦労はしないんだがな。俺は考える。遊びならともかく、真剣勝負となれば命がけである。
「なんか鬼ごっこの時を思い出したな」
「たく坊、大丈夫! あたしたちならなんとかなるよ!」
猫又は笑顔でそう言ってくれた。天邪鬼は、荒らされた部室の中を何か探っていた。
「あっ! あったあった。これちょっと借りるぜ」
天邪鬼が取り出したのは木刀だった。そんなのあったのか。
「一応戦うんなら、赤鬼みたいに武器を持ってないとな」
「わかった。じゃぁもう策なんてないけど、俺たちならなんとかやれるさ」
問題は俺だけどね。皆みたいに能力がないし、自慢と言えば足が速いことだけだし。俺が俯いていると、お雪さんが近づいてきた。
「私もね、怒ってるの……これじゃ本が読めないもの……」
あぁ、やっぱりあなたはそれですよね。お雪さんのやる気に、俺も心を決めた。
校庭に行くと、生徒会メンバーが待っていた。
「ほぅ、やっと来たか。しっぽを巻いて逃げたかと思ったわ」
タマモはにやりとして、俺たちを見ていた。
「では、これから勝負を行うが、僕が判定人を務めさせてもらうよ」
「えっ! 座敷童さん?!」
まさかの座敷童が抜けてしまった。こらこら、それではこちらの人数が減ってしまうだろ。
「構わんぞ。組み合わせはどうするのだ?」
「それもこちらで決めさせてもらったよ」
すごい、座敷童さん。俺たちが話してる時に何も言わなかったのは、何か考えてたからなんですね!
俺が喜んでいると、組み合わせに絶句した。組み合わせは以下の通りである。
赤鬼 対 ガシャドクロ
お雪 対 輪入道
天邪鬼・猫又 対 天狗
たくや 対 キュウビのタマモ
待て待て。なんで俺が生徒会長となんだ!
「ちょっと待って、座敷童さん! 俺人間ですよ! 敵うわけないでしょ」
「では、勝負始め!」
座敷童は俺の意見を無視して勝負を始めてしまった。
「はっはっは。我が名はガシャドクロ。お主に恐怖を与えてくれよう。行け、ガイコツどもよ!」
すると、たくさんのガイコツが赤鬼に迫ってきた。
「そんなもの、ワシにはきかんぞ!」
しかし、赤鬼は怯むことなく持っていた金棒で蹴散らしていった。
「その威勢がいつまで続くかな?」
ガイコツはどんどん出てきており、だんだん赤鬼を追いつめていった。
「くっ……壊しても壊しても後から湧いて出てくるわい!」
「はっはっは。どうしたどうした。もっと我を楽しませてみよ!」
ガシャドクロは高笑いしながら、大量のガイコツを出してきた。やがて赤鬼はガイコツたちに押さえつけられてしまった。
お雪さんと輪入道は睨み合っていた。
「あなたたちのせいで、本が読めないじゃない……」
「ふんっ! そんなことどうでもいいわい! ワシの炎に焼かれるがいいわ!」
輪入道はそう言うと、お雪さんに向かって突進してきた。かろうじてお雪さんは避けたが、そこには炎の道が出来ていた。
「避けたところで、ワシからは逃げられんぞ!」
輪入道はすぐに引き返し、お雪さんの周りを1周した。
「いけない、囲まれた……」
お雪さんの周りを炎が囲んでいた。
「くっ……熱い……」
「ふはははっ! どうだワシの炎は! 熱くて動けまい」
お雪さんはなんとか熱さに耐えていたが、顔は苦しそうだ。
天邪鬼たちは天狗が放った風に耐えていた。
「これじゃまともに動けない!」
「猫又、俺の後ろに隠れていろ!」
「でも、それだと天邪鬼が!」
「大丈夫! 俺に考えがある!」
猫又が心配そうに天邪鬼を見ると、天邪鬼はにやりと笑った。
「何をごちゃごちゃ言っておる! 私を無視するでないわ!」
すると天狗は、持っていた葉のうちわを思いきりあおいだ。
「わああぁぁ!」
その勢いに2人とも吹き飛ばされた。
「皆……どうしよう、このままじゃ……」
「どうした、人間。怖くなったか?」
「これじゃ一方的ではないですか!」
「力の差というものを解らせないといけないからな」
「そんな……」
俺がちらっと座敷童を見ると、少し微笑んでいたような気がした。この状況で勝ち目なんてあるのか?
「何をよそ見している人間っ!」
そう言うとタマモは狐火を出してきた。手加減無しかい!
俺は慌てて逃げ出した。なんとか避けているけど、ギリギリである。
「ひーっ! まともに食らったら危ないぞ!」
「ほらほら、どうした人間! 逃げているだけでは面白味がないぞ!」
何を言っているのだ、この人は。勝負に面白いもなにもないだろ。
俺が走っている間に、他の皆に動きがあった。
まずは赤鬼たちである。赤鬼は渾身の力を出し、ガイコツたちをはねのけた。
「うぉーっ! しつこいぞ、これでも食らえ!」
赤鬼は持っていた金棒を全力で振りかぶって投げた。それはガシャドクロの頭に見事に命中した。ゴーンと鈍い音が響き渡った。痛そうである。
「ぎゃああぁ!」
大きな悲鳴を上げて、ガシャドクロは前に倒れた。他のガイコツたちも術が解けてバラバラになった。
「ふぅー、これで終わったか。他の者はうまくやっとるだろうか」
一息ついた赤鬼はその場に座りこんだ。