06 チラシをはったら、鬼が来ました
食堂では妖怪たちで賑わっていた。
「わー、妖怪たちでいっぱいだな」
「あたしたちの席はあっちだよ」
猫又が指さした方向には、天邪鬼や座敷童もいた。天邪鬼は手を振っている。
「おーい、たくや。こっちこっち!」
あんまり大声で呼ばないでほしい。皆見てるじゃないか。
俺が少し戸惑っていると、猫又が手を引っ張っていった。
「あまり大声で呼ぶんじゃないよ。たく坊が嫌がってるじゃないか」
「あれ、そうなの? それは悪かったな」
そう言った天邪鬼はにやにやしていたので、多分反省していないな。
それから俺たちは席についてご飯を食べ始めた。メニューは皆一緒であった。俺たちが来た時にはもう全員分並べてあった。
「しかし、今日から授業が始まるけど、一体何を学ぶんだろ……」
「それは人間界や妖怪のあり方とかじゃないのかい?」
俺の疑問に猫又が答えた。それに座敷童も加わる。
「猫又の言う通りだよ。ここは人間と妖怪が友好的な関係を築けるように設立したらしいから」
「へぇー。じゃぁゆくゆくは昼の人間たちと会ったりするんですか?」
「それは解らないな。そこは先生たちの判断じゃないかい?」
「そうですよねー……」
俺は昼にやっている学校を考えながら食事を終えた。
それから学校に着き、教室に入り授業を受けた。確かに猫又の言う通り、最初は人間界の授業と同じだった。後半は、妖怪たちの話だった。人間の俺には理解出来ないところが多かった。
なんとか授業が終わり、放課後になった。俺は、疲れた頭を起こしながら教室を出た。途中で天邪鬼に会い一緒に部室に向かった。
「こんにちはー。座敷童さん来ましたよー」
「おぉ、待ってたよ」
しかし、この人いつも先に部室に来ているな。俺もそこそこ早く来た気がするんだけど。
「たくやよ、何かよからぬことを考えているんではないか?」
「そ、そんなことないですよ!」
焦る俺を見て、座敷童は天邪鬼を見た。しかし、天邪鬼は両手を半分くらい上げて分からないというポーズをした。
まぁ、いいか。それより6人目をどうするか考えよう
「また呼びこみしますか?」
「いや、それはあまり意味がないと思う」
「じゃぁ、チラシを作ったらどうだ?」
猫又の言葉に全員が納得した。
「なら、たくや。お前にチラシを描いてもらおうか」
「え、俺ですか?」
言われて俺は焦った。何故かって? 俺は美術の成績が悪いからだよ。しかし、言われたからには描くしかない。
俺があやかしクラブをイメージして描いてみたところ、全員が固まった。
「このミミズがはったような線はなんだ?」
「なんかだいぶ前の歴史にこんな感じの絵があったような……」
「たく坊、予想はしていたが……これはあまりに酷いぞ?」
それを言う皆の方が酷いと思うんだが。
「やっぱりここは女子に描いてもらいましょうよ」
「そうだな。猫又、頼めるか?」
「いいぞ。あたしに任せておきなさい!」
他のメンバーは俺の画力を見た後なので、少し心配そうだったが猫又は違った。
「よし、出来たぞ」
「これはまたファンタジー満載な……」
「少し可愛すぎじゃないか?」
「私はさっきのよりは、こっちがいいわ……」
上から座敷童、天邪鬼、お雪さんの順で意見を言った。俺もこっちの方がマシな気がした。
「じゃぁこれを掲示板にはってきますね」
「いってらっしゃーい」
俺は部室を出て学校の掲示板の前に来た。そして、持っていたチラシをはりつけた。ここは連絡事項があれば、誰でもはっていいのだ。ってここに小さく書いてるんだけどね。
チラシをはり終わった俺は、もう一度チラシを見た。
「やっぱりちょっと可愛すぎかもな。それに人間のところ協調しすぎやしないか?」
まぁ、これでメンバーが集まればいいか。俺はそう考えながら部室に戻った。
「なんだ、これは?」
俺が帰った後、金棒を持った赤鬼がチラシを見た。
「あやかしクラブ? ほぅ、人間もいるのか」
そう言って赤鬼はにやりと笑った。
「ただいま戻りましたー」
「あぁ、おかえりたく坊。遅かったじゃないかい。待ちくたびれて皆で遊んでいたよ」
「まぁ、ここは皆で楽しく遊んで過ごすクラブだから問題ないよ」
俺も混ぜてもらおうと中に入ったら、外からドタドタト足音が聞こえてきた。そしてドアをガシッと掴む手が見えた。
「あやかしクラブというのはここだな!」
「そうだが、お主は?」
「ワシの名は赤鬼! ここに人間がいるな」
「は、はい! 俺ですけど」
俺は圧に負けて手を上げた。よく見れば同じクラスの奴だった。
「お前か! さぁ、今すぐワシと戦え!」
そう言うと持っていた金棒を振り回してきた。ちょっとそんなに振り回したら……
俺が焦っていると、案の定ドアが破壊された。それに怒った座敷童が天井を指さした。
「ここで暴れるでなーい!」
すると、大きなタライが現れた。
「あ!」
「え?」
それは勢いよく赤鬼の頭に落ちてきた。そのまま赤鬼は気を失った。
「少しやりすぎじゃないですか?」
俺は苦笑いを浮かべながら、この後どうしようか考えた。