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05 母さん、それを先に言ってよ!

 あれから俺たちは帰り支度をして下校した。しかし、帰るのは家ではない。

 ここには寮があり、皆そこに帰っていくのだ。俺も例外ではない。

「確か母さんが、メールで荷物は全部送ったって書いてたような……」

 俺はブツブツ言いながら寮の中を歩いていた。すると、部屋が見えてきた。

「ここが俺の部屋か」

 部屋は一番端にあった。やはり人間だからかな。そう考えながら中に入った。

「あぁ、おかえり。待ってたぞ」

 中には座敷童がお菓子を食べていた。俺は思わずずっこけた。なんであんたがここにいるんだよ!

「あの、ここ俺の部屋ですよね? まさか同室なんですか?」

「いいや。僕は違う部屋だよ」

「なら、なんでここにいるんですか」

「君を待ってたんだよ」

 座敷童はお菓子を食べ終わると、俺と向かい合うように座った。

「君にお礼を言わないと、と思ってね。ありがとう。まさか部員があんなに増えるなんて思ってなかったよ」

「まぁ、全員くせが強そうですけどね」

「それでもいいさ。しかし、残りあと1人なんだが、誰かいい奴はいないかな?」

「って言っても、俺も入学したばかりで知らない妖怪ばかりですよ」

「そうだねー……」

 俺たちが悩んでいると、ドアが開いた。しかも勢いよく。

「おーい、たくや! 遊びに来てやったぞ!」

 入ってきたのは天邪鬼だった。まずい、この2人は相性が悪かった。

「なんだ天邪鬼。今は僕がたくやと話してるんだよ?」

「もう話は終わっただろ。外に聞こえてたぜ」

 そんな大声で話した覚えはないが。あ、もしかしてまた能力を使ったなこいつ。

 そんなことを考えている俺をよそに、2人はまた睨みあっていた。やめてくれ、人の部屋で。

「それで天邪鬼は何しに来たんだ?」

 このままじゃラチガあかないと思った俺は、天邪鬼に話しかけた。

「あぁ、俺の部屋にゲームがあったから、また一緒に遊ぼうと思ってな」

「なら能力を使うのは無しだぞ?」

「わかってるって。今度は正々堂々とやろうじゃねぇか」

 それから俺と天邪鬼はゲームで遊んだ。中身はパズルゲームである。座敷童はというと、またお菓子を食べていた。どうやら抹茶のお菓子を気に入ったようだ。

「はぁー、遊んだ。そろそろ風呂にでも入ろうかな」

「なら3人で行こうぜ。ここの風呂はでかいって聞いたことあるぞ」

「マジで。なら早く行こう。ほら、座敷童さんもお菓子食べてないで行きましょう!」

「ちょ、ちょっと待っておくれよー!」

 風呂に着くと、先客がいた。同じクラスの赤鬼である。さすがに風呂にまでは金棒を持ちこんでないので安心した。でも、関わりたくないので離れて入ることにした。

「しかし、本当に広いな。泳げるんじゃねぇ?」

「だめだぞ。風呂では泳ぐの禁止だ」

「わかってるよ、たくや。冗談じゃねぇか。そんな睨むなよ」

 俺はただ見ただけなのだが、そんなに目つきが悪かったのか。

「それより風呂、少し熱くないか?」

「そうか? 僕は普通だぞ。あっちの赤鬼がいるところの方がもっと熱いはずだが」

 マジか。俺はのぼせそうになり、先に上がることにした。体を洗って外に出ると、まぁ気持ちいい。これで牛乳があれば最高なんだが。

 俺は着替えて部屋に戻った。明日からは授業がある。妖怪だらけの学校だが頑張らないと。ふと母さんの顔が浮かんだ。そして、近くにあったスマホを手に取る。

「もしもし、母さん」

「なーに、こんな朝早く」

 そうだ、夜に学校があるから昼夜逆転していることを忘れていた。今は朝の6時である。

「ごめん、まだ寝てたよね?」

「いいや、起きたばかりだよ。でも、電話かけてくるなんて珍しいじゃない」

「色々話したいことがあってね。今日は、ていうか昨日か。部活に入って友達もできたんだよ」

「まぁ! よかったじゃない。なら母さんも安心だわ。じゃぁ、妖怪の皆さんによろしくね」

 ん? 今母さん何かおかしなことを言ってなかったか。

「母さん、もしかして俺の行く学校が妖怪だらけって知ってたの?」

「あら、言わなかったっけ。そうよ、そこの校長とちょっとした知り合いでね。あなたを入学させたいって言ったらどうぞって」

「もしかしたら俺食べられてたかもしれないんだよ!」

「大丈夫よ。そこの妖怪たちはそんなことしないから」

 何を根拠にそう言ってるんだろ。

「じゃぁ母さん、そろそろ仕事に行くわね。頑張るのよ、たくや」

 それだけ言って母さんは電話を切った。まさか校長と知り合いだったとは。母さんって何者?

「まぁいいか。今日は疲れたし、夜のために少しでも寝ておくか」

 それから、あっという間に夜が来た。ぐっすり寝てしまった。部屋の片付けも出来てないのに。

 俺がボーッとしていると、ドアがノックされた。

「おはよう、たく坊。早く登校しないと遅れるぞ!」

 来たのは猫又だった。俺はバタバタと着替え始めた。

「ちょ、ちょっと待って! すぐ準備するから!」

 それから俺は慌てて準備を整えてドアを開けた。

「お、お待たせしました……」

「もー、ずいぶん待ったぞ? まぁいいか。ほら、早く食堂に行くぞ」

 俺は猫又に連れられて食堂に行った。そこは妖怪たちであふれていた。


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