10 そんな勝ち方もアリですよ
お雪さんはまだ炎に囲まれていた。
「どうじゃ、ワシの炎は! 雪女は火に弱いというからな」
そう言って、輪入道は高笑いをした。
「何を笑っているのかしら……」
お雪さんは静かに輪入道を見つめた。その瞳はとても冷ややかだった。
「私はね、怒っているの……あなたたちのせいで静かな場所を奪われた。だから絶対に許さない……」
「何を言っておる。今のお主に何が出来るのだ」
「雪女が火に弱いって、誰が決めたのかしら……」
その時お雪さんの目がカッと見開き光りだした。すると、辺りを吹雪が舞いだした。そして炎を一瞬で固めてしまう。
「なんてことだ! ワシの炎を固めおった。そんなのアリか?!」
「あなたはうるさいから、少し黙りなさい……」
お雪さんの吹雪が、輪入道を囲んで凍らせてしまった。
「う、動けぬ……」
「これで静かに本が読めるわ……」
そう言ってお雪さんは懐から小さな本を出して読み始めた。
次は、天邪鬼と猫又である。未だに天狗の出している風に苦戦していた。
「ちょっと、これじゃ前に進めないわ!」
「くっ! 俺に任せとけ!」
天邪鬼がそう言うと、木刀を取り出し意識を集中させた。すると、天狗の風がどんどん木刀に集まってきた。
「すごい! どんどん風が天邪鬼に集まってるわ!」
「まだまだこれからだぜ!」
天邪鬼は集めた風を使い、木々の木の葉を自分たちの所に集めだした。
「何? 私の風で木の葉を集めだしただと?」
木の葉はすぐに天邪鬼たちを隠した。
「そんな目くらまし、私にはきかないぞ!」
天狗が思いきりうちわをあおぐと、そこにいたのは天邪鬼だけだった。
「むっ? 1人足りぬ。あの猫又はどこにいった?」
天狗が辺りを見回していると、天邪鬼が叫んだ。
「今だ、猫又! やっちまえ!」
猫又は飛び上がって上にいた。
「もしや、上か!」
「食らえ! ひっかく攻撃! にゃにゃにゃーっ!」
猫又は天狗に飛びつき、顔面をひっかきだした。
「ぎゃあああぁーっ! やめろ、顔は、鼻はやめてくれーっ!」
天狗はそう言うと、尻もちをついた。
「参った、参ったからやめてくれ……」
「猫又、もうそれくらいにしてやれよ」
「ふんっ、これくらいじゃ足りないわよ。でも、たく坊は大丈夫かな……」
猫又が予想した通り、俺はタマモに遊ばれていた。
「ほら、逃げてばかりではわらわに勝てぬぞ!」
そんなこと言われたって、俺には赤鬼や天邪鬼みたいに武器はないし、猫又やお雪さんみたいに術や攻撃が出来る訳でもない。
おれが考えていると、1つ思い出したことがあった。確か生徒会室に行った時、猫又があることをしたな。
「試してみるか……」
「どうした、動きが止まっているぞ?」
タマモはそう言って狐火を放ってきた。俺はそれをギリギリ避けて、全速力で走った。そしてタマモの後ろに回りこんだ。
「後ろにおるのはわかっているぞ!」
タマモが振り返ろうとした時、俺はタマモのしっぽを掴んだ。
「ひゃぅっ!」
そう、タマモはしっぽを掴まれるのが苦手だったのだ。前に猫又が掴んだ時も同じ反応だったのを思い出したのである。
「は、離せ! わらわに触れるでない!」
「あれー? タマモさん、さっきまでの勢いはどうしたんですか?」
俺はしっぽを優しく撫でた。すると、タマモは脱力して座りこんでしまった。
「や、やめてくれー! それは弱いの。触らないでーっ!」
「いいですよ? じゃぁ俺の勝ちでいいですね?」
「わかった! いい、いいからもうやめてーっ!」
タマモは本当に嫌そうだったので、俺は手を離した。タマモの方はぐったりしていた。
「これにて、あやかしクラブの勝ちーっ!」
座敷童の合図に、俺ははっとした。俺、生徒会長にとんでもないことをしたのでは?
俺が少し青ざめていると、皆が集まってきた。
「たく坊、すごいじゃないか! あの生徒会長に勝ったんだな」
「勝ち方はどうかと思うけどな……」
天邪鬼め、また人の心をよんだな。後でちゃんと口止めしておかないと。
俺がそう思っていると、タマモが身を起こした。
「わらわたちは、お主たちを下に見て甘くみておった。それがこの結果だ」
すると、タマモは急に泣き出した。
「ど、どうしたんですか?!」
「お前たちだけ楽しいことやるなんてズルイぞ!」
「は?」
タマモの言葉に皆がぽかんとした。
「わらわだって、その仲間になりたかった!」
「えーっ!」
今度は全員で驚いた。
「でも、そんなことでは周りに示しがつかないから、こんなことになってしまった……」
タマモはしょんぼりして、話し出した。そんなこと思っていたのか、この人。俺はタマモに近づきハンカチを出した。
「もう泣かないで下さい。それなら、また俺たちと遊べばいいじゃないですか。いつでも大歓迎ですよ」
「人間……」
「あと、俺人間ですけど、前橋 たくやっていう名前があるんです」
「なら、たくや。わらわもあやかしクラブに入ってもよいのか?」
「俺は構わないですよ。仲間が増えて俺もうれしいです! 一緒に楽しみましょう」
すると、タマモは笑顔になり俺に抱き着いてきた。
「ありがとう、たくや!」
それを見ていた猫又がタマモを引き離した。ふー、助かった。騒動が一件落着した後、タマモがよく遊びにくるようになった。よく俺にからんでくるもんだから、猫又が間に入ってタマモと言い合いになるのが日常になっている。
俺はそんな2人を遠くで眺めていると、お雪さんが本を閉じた。
「あなたたち、少しは静かになさい……」
「お、雪女。わらわにはむかうか?」
タマモとお雪さんの間に火花が見えてきた。
やれやれ、これからも妖怪たちとの楽しい時間はまだまだ続きそうである。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。




