表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

01 俺の行く学校はとんでもないところでした。

 俺は夢を見ていた。まだ小さかった頃の夢である。俺は泣いていた。そこへ同い年くらいの少女がやって来た。

「何を泣いているの?」

「道に迷って帰れないんだ……」

「なら、あたしが案内してあげる。ついてきて」

 少女は俺の手を引いて歩き出した。少女には猫耳が生えており、しっぽも2つに分かれていた。

「君は一体……」

「あたしは猫又。あんた名前は?」

「たくやだよ……」

「なら、たく坊。ここからならわかるだろ?」

「あ! ここ、見たことがある! ありがとう」

 俺が振り返ると、猫又はいなかった。そこで俺の夢は終わった。というか、目覚ましが鳴ったので目が覚めただけなのだが。

 ジリリリと鳴る目覚まし時計を止め、俺は起き上がる。今日から新しい学校の登校日である。

「母さんがすすめてくれた学校ってどんな所なんだろ……」

 少し自己紹介が遅れたが、俺の名前は前橋 たくや。16歳。高校1年生。A型。何の取り柄もない普通の男だ。なんだか、自分で言ってて悲しくなる。

 おれがそんなことを考えていると、スマホが鳴った。相手は母さんである。

「もしもし、母さん?」

「おはよう、たくや。まだ出てないわよね?」

「今から準備して学校に行くところだけど」

「あー! 違う違う。あなたが行くのは夜間の学校の方よ」

「は?」

 母さんが言うには、俺が行く陽園ようえん学校は昼と夜の2つがあるらしい。もう少し早く言ってほしかった。

「ごめんねー。でも行く前でよかったわ。じゃぁ学校頑張ってね。きっとあなたにいい刺激を与えてくれると思うから」

「どういうこと?」

 俺の問いかけは聞かず、母さんは電話を切った。

「少し時間ができちゃったな。何をしよう……」

 俺はリビングのソファーに座り、学校のパンフレットを見た。確かに昼と夜の分が書いてあるけど、夜の分はあまり書かれていないな。

「俺が行く学校って、どんなところなんだろう……」

 俺は少し不安になりながら昼間を過ごした。そして、やっと夜である。

「確か学校に直行のバスがあるらしいけど、どれだ?」

 辺りを見回すと、バスがちらほらあった。俺が戸惑っていると、運転手が寄ってきた。

「もしかして君、陽園学校に行きたいのかい?」

「はい、そうですが……」

 運転手は帽子を目深に被っていたため、顔は見えなかったがなんだか笑っているような気がした。

「それなら私のバスですよ?でも、珍しい方が入学なさったものだ」

「珍しい?」

 俺が首を傾げていると、俺を乗せたバスは発進した。乗っているのは俺だけである。そして、運転手が何かボタンを押すと、名前が変わった。「陽」の部分が「妖」に変わったのだ。

「あれ? 学校名が違いますよ」

「いいえ。合ってますよ」

 運転手はそれから何もしゃべらなかった。そして、目的地について俺が降りると、運転手は傍に寄ってきた。

「あなたがこれから行くところは、この世のものでない者たちの集まるところ、ようこそ妖園ようえん学校へ。あなたを歓迎しますよ」

「はぁ?!」

 俺は目が飛び出るほどに驚いた。

「では、私はこれで失礼します」

 そう言うと、運転手はさっさとバスを発進させて去っていってしまった。残された俺は呆然と立っていた。

「一体ここはどういうところなんだ?」

 俺が青ざめていると、色々な妖怪と呼ばれる者たちが学校に向かっていた。俺は慌てて近くの木に隠れた。

「なんであんな奴らがうようよいるんだよ……」

「君、そこで何をしているの?」

 女の声に俺が振り返ると、そこには猫耳としっぽが2つに分かれた少女が立っていた。

「あれ、君は確かたく坊ではないか! 大きくなったなー」

 そう言われて俺は夢を思い出した。あの時の猫又である。

「しかし、あんたは人間だろ。何故ここにいるの?」

 俺が黙っていると、猫又は首を傾げた。

「実は母さんにすすめられて、ここに来たんだ。でも妖怪がいっぱいいて近づけないんだ……」

「ならあたしが一緒に行ってあげる。ほら、ついてきて」

 それは夢の中で言われた言葉とほとんど同じであった。

 猫又は俺の手を引いて歩き出した。

「しかし、またたく坊に会えるとは思ってなかったよ」

「なら、なんであの時姿を消したんだ?」

「妖怪は基本人間と関わらない方がいいからな。だから仕方がなかったんだよ」

 猫又は少しすまなそうにこちらを見た。そんな目で見られたら何も言えないじゃないか。そんなことをしていると、1つの部屋に着いた。

「ほら、ついたぞ。ここがあたしたちのクラスだ」

 中に入ってみると、そこにはたくさんの妖怪がいた。俺が震えていると、猫又がそっと耳元で囁いた。

「大丈夫。皆取って食ったりはしないだろうから」

 なんでそんな曖昧なんだ。全然落ち着けないんだが。

 俺が迷っていると、猫又はスタスタと席に着いた。皆の席にはネームプレートが置いてあった。本を読んでいる雪女や、外を見ている天邪鬼、それにふざけあっている小鬼たち。たくさんの妖怪がいるな。しかも、金棒を持っている鬼までいるじゃないか。

「俺、やっていけるのかな……」

 俺はビクビクしながら席に座った。よかった、猫又の前の席である。

「これからよろしくね?」

「あ、あぁ……」

 俺は元気なく答えると、猫又は首を傾げた。すると、教室のドアが開き先生が入ってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ