#39 無謀
要塞砲はすでにその姿を晒しており、まさに我々の艦隊主力に向けて攻撃態勢にある。あれを撃たせるわけにはいかない。何としてもその前に叩く。
前回の反省を受けて、あれが本物かどうかを判別する術を編み出した。前回、本物の要塞砲が姿を現した時、その砲身の表面の模様や大きさなどを取得しておいた。その時のデータと照合することで、あれが本物かどうかが分かる。
「照合結果はどうか!?」
そしてまさに今、要塞砲の照合をやっているところだ。その結果はすぐに判明する。
「九十七パーセント、外観特徴が一致! 本物と判断されます!」
観測員のこの報告を受けて、私は決断する。
「例によって、二段階に分けて射出する。核融合弾、要塞砲に向けて攻撃開始!」
「はっ! 核融合弾、攻撃開始! 目標、敵要塞砲!」
すでに最大戦速に達していた。敵要塞まで一千二百キロ。これが最後の攻撃のチャンスだ。もう後にも先にも、このタイミングしかない。
が、このタイミングで、敵の攻撃に苛烈さが増す。すぐ脇には無数のビームの束が過ぎる。そんな中、我々はこの最後のチャンスに賭ける。
猛烈な速度で迫る強襲艦隊から、次々と核融合弾が放たれる。といっても、我が旗艦の実体弾は先ほど放ってしまったから、まだ弾を温存していたそれ以外の四百隻から次々と放出されていく。
二百隻、四千機の重機からまず四千発が放たれる。続いて残りの二百隻から、数秒遅れで四千発が撃ち放たれた。漆黒の闇の中に向かう、希望の八千発。
「よし、全速離脱!」
この攻撃をもって、私は艦隊に離脱を指示する。その間にも、執拗に敵の攻撃は続いている。すぐ脇を、ビュンビュンと青白い無数の閃光が通り過ぎる。
だが、光速の数パーセントまで加速した我が強襲艦隊を狙い撃つなど不可能だ。我々はその攻撃をかわしながら、要塞からの離脱を図る。
◇◇◇
「敵の艦隊は?」
「はっ! 離脱し始めました!」
「そうか」
再び接近する強襲艦隊を迎え撃つ我が第二遠征艦隊。もっとも、高速に移動するあの艦隊を狙い撃つなど、およそ不可能だ。それを承知で僕は、攻撃続行を指示する。
今回の戦いでは、あの艦隊は沈めない。まぐれ当たりでもしない限り、撃沈は無理だと最初から踏んでいる。
あの高速接近の意図は、おおよそ理解している。加速し、高速で核融合弾を撃ち込むつもりだったのだろう。それを果たせたからこそ、離脱し始めたと思われる。
「予定通りですね」
「ああ、予定通りだ」
「ですが、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だろう、多分。実際、やつらの動きはちゃんとトレースしていたんだろう?」
「はい、狙い通りの動きにはなっていたことは確認しましたが……」
「ならばいずれ、やつらも気づくだろう」
やつらが全速で要塞に迫り始めた時、やつらの意図を察した。だからこそ、我々は対策を講じる。
といっても、単純なことだ。ただひたすら、執拗に砲撃を続ける。当たろうが当たるまいがかまわない。命中それ自体はたいして意味がない。問題はやつらに、まぐれ当たりでもするかもしれないと思わせることだ。
バンバンと背中から撃たれながら、まっすぐ進めるやつなどいない。反射的に反応してしまうはずだ。それがごくわずかな量であっても、一千キロも離れた目標に向けて放った弾は、そのわずかなズレでどこに向かうだろうか。
つまり、我々はただ、やつらの艦首をほんの少し明後日の方角に振り向けてやればいいのだ。それは多分、上手くいっていると思う。
◇◇◇
「な……なんだと?」
「はっ、申し上げにくいことですが、全弾、要塞の脇を逸れていきました」
弾着観測員からの報告を受けて、司令部一同は愕然としている。古の急降下爆撃機が目標目掛けてその腹に抱えた爆弾を目標に叩き落すが如く、我々は核融合弾を要塞砲目掛けて放った。が、執拗に我々を狙うあの駆逐艦からのビーム砲が、その狙いをほんの僅か、ずらしてしまった。
わずかと言っても、一千キロも彼方にある目標だ。そのずれ量は、三度から五度だったようだが、それだけずれただけでも、一千キロ先では五十キロ以上の差となって表れる。
直径がわずか百キロの物体に対して、五十キロものずれ。当たるわけがない。ほんの数発だけが要塞砲に直撃するコースをとったようだが、それは分厚いシールドによって阻まれてしまった。
つまりだ、我々は失敗したということになる。
「くそっ!」
報告を受け、私は悪態を吐き、壁を叩く。 バンッという乾いた音が、空しくこの艦橋内に響く。それを無言で聞く乗員たち。
が、ことここに至っては、もはや手段がない。私は決断する。
「全速を維持しつつ、現宙域を離脱。艦隊主力に合流するぞ」
「はっ!」
我々は、やるべきことをやった。要塞攻撃に必要な武装を、すべて使い果たした。これ以上の攻撃は無意味、やったところで犬死だ。だから私は、全速離脱を指示する。
しかしそのころ、艦隊主力は依然として前進を続けていた。我々の攻撃失敗の報は当然、伝えられている。にもかかわらず、我が艦隊主力一万隻は前進を止めない。
「ちょっと待て、ちゃんと司令部に攻撃失敗を伝えたんだろうな!?」
「はっ、もちろん伝えました。我が艦隊の攻撃は全弾外れた、と」
「ならばなぜ、我が軍は前進を止めようとしない!」
「それは……分かりません」
ドルジエフ大佐を責めたところで無意味だ。私も含めて、この強襲艦隊の誰もがあの艦隊行動を理解できるわけもない。ただ、パザロフ大将は今、艦隊を前進させている。その先に要塞砲があることを、重々知りながら。
「重ねて連絡だ、我が艦隊の攻撃は失敗した。要塞砲は健在、直ちに退避されたし、だ」
「はっ!」
これ以上進むと、要塞砲の射程圏内に入ることになる。その結果がどういうものかは、言うまでもないだろう。
我々の攻撃成功を前提にして見切り発車しているのではないか。そう思った私は、ともかくパザロフ大将に状況を知らせることを最優先とした。
だが、私の思いは、ついに届かなかった。
◇◇◇
「敵艦隊、さらに接近! 要塞までの距離、まもなく五十万キロ!」
「要塞砲、発射態勢! まもなく装填開始!」
まったく予想外のことが、目前で起きている。敵艦隊主力の一万隻が、要塞砲を前に前進を止めようとしない。
敵艦隊はすでに、要塞砲射程に入った。距離五十万キロ。すでに味方艦隊、ディーステル大将率いる第一遠征艦隊一万隻とも交戦しつつある。が、やつらは前進を止めない。
どんな策があるにせよ、このままではあの一万隻の内、数百から一千隻が要塞砲によって消滅させられる。そんな多大な犠牲を伴う戦術など、もはや作戦などと呼べない。しかし接近を止めない以上、こちらもあれを使わざるを得ない。
やはり異常だ。今度の戦いは、最初から何かがおかしい。
あの強襲艦隊の行動も、いつもと比べて精細さを欠いている。おまけにあの艦隊主力の行動もどこか投げやりだ。しかも、要塞戦ならば数個艦隊による攻略戦が常道だというのに、現れたのは一個艦隊のみ。何もかも、異常過ぎる。
まさかとは思うが、敵は無策なのか?
ならばなぜ、こんな無謀な戦術に打って出るのか。
「要塞砲、装填完了! 軸線上の味方艦に退避命令!」
その無謀な敵に向けて、最初の一発目が放たれる。前回の戦いでは、要塞砲装填中に回避運動に入ったため、大した戦果は挙げられていない。が、今度は前進を止めない。もはや大戦果、いや敵の大打撃は避けられない。
「要塞砲、発射!」
そしてそれを決定づける一撃が、ついに放たれた。艦橋窓の外を、眩いばかりの一筋の青い閃光がよぎる。
「あれは、あの要塞の持つ大砲の光なのですか?」
ちょうどカタリーナがこの艦橋に戻ってきた。あの魔王も一緒だ。魔王の真っ黒な肌が、その青い光を反射して紫色に染まっている。その紫色の顔に、笑みが浮かぶ。
「ほほーう、今度はたいそう、人が死んだようじゃな」
そういえばカタリーナも魔王も、あの要塞砲発射を見るのは初めてというわけではない。が、カタリーナはあの時、僕にしがみついていてそれどころではなかったし、第一あの時は、ほぼ威嚇射撃だった。
が、今度は艦隊のど真ん中に発射された。三秒ほどのビーム持続時間があるから、艦隊陣形の上をその閃光でなぞればさらに犠牲が増える。そのおぞましい光景に、この悪魔は微笑する。
そして、信じがたいほどの戦果が報告される。
「弾着観測! 敵七百隻以上を撃沈!」
攻撃に備えて多少は散開しているとはいえ、あれだけの極太なビーム砲撃を食らえば当然の結果だ。七万人の命が、一瞬にして消えたことになる。とても笑える光景ではない。
さすがにこれほどの犠牲を出したのだから、後退し始めるだろう。この先へ進もうにも、味方の艦隊に阻まれて進めない。となれば、後ろに退くしかない
にもかかわらず、あの艦隊は予想外の行動に出る。
前進を、やめようとしない。
「なんだって!? それは本当か!」
「はっ! 敵艦隊、さらに前進速度を増して接近中!」
接近すればするほど、要塞砲の命中精度が上がる。つまりそれだけ、犠牲が増えることになる。だから普通は諦めて後退を始める。
本来、要塞砲というものの役割はそういうものだ。近づいたら、ロクなことにならないぞ。つまり抑止力のための兵器、迫りくる艦隊を薙ぎ払い、大量の人命を消し飛ばすために使われるものではない。
にもかかわらず、まるでかんしゃくを起こした子供のように、あの艦隊はその行動を変えようとしない。となればこちらも「しつけ」を止めるわけにはいかない。そうこうしているうちに、第二撃目の装填が完了する。
「第二発目、発射!」
再びこの漆黒の闇と魔王の顔を照らす青い閃光が、窓の外に現れる。その先にはいくつもの爆発光が伴う。それ一つ一つが百人単位の命の光であることから、おぞましいほどの蛮行が繰り広げられていることを認識せずにはいられない。
「弾着観測! 一千隻以上撃沈確実!」
今度は、我が第二遠征艦隊を超える数の艦艇が消滅したとの報告が入る。人数にして……いや、考えるのは良そう。恐ろしくなる。
脇を見れば、あっけにとられるカタリーナと、ますます上機嫌な魔王がいる。あれを見て笑っていられる神経にも驚かされるが、それ以上に僕の関心は今、窓の外にある。
そしてようやく、事態は変化する。
「敵艦隊、後退を始めます!」
やっとモニター上の陣形図に、敵艦隊の後退を示す兆候が表れ始めた。敵艦隊を現す塊が、徐々に要塞とは逆方向へと動き始めている。
もっともその姿は、後退というよりは逃亡と言った方がいい。いくつもの塊に分かれ、散り散りになりながら要塞から離れようとしている。そんな統率のない動きがみられる。二割近い損失を受けて艦隊の統制が取れなくなり、各自の判断で逃亡し始めたようだ。
「ディーステル大将より、全艦に向けて命令が発信されてます」
そんな無残な陣形図を眺めていると、通信士が僕にこう伝えてくる。
「命令とはなんだ?」
「はっ! 『全艦に通達する、追撃戦は無用、現宙域にとどまり、統制を失った敵による散発的な攻撃に備えて防備を固めよ』、以上です」
「了解した。我が艦隊全艦に向けて、大将閣下の命令を重ねて伝達せよ」
「はっ、了解しました」
僕はそう通信士に伝える。
ディーステル大将も、これ以上の追撃は無用と判断したのだろう。統制を失った敵に備えよとあるが、あれはおそらく口実だ。あの強襲艦隊以外に、こちらに向かってこられるほどの組織的な集団は今、敵にはいない。放っておいても、勝手に帰っていくだろう。
さすがのディーステル大将も良心が痛んだとみえる。僕も同様だ。僕が要塞砲発射を命じたわけではないが、同じ側の指揮官として、この惨劇を目の前にして言葉がない。
だが、まだ戦いは終わっていない。たった一つ、統制を失っていない集団がすぐ近くにいる。あれの動き次第では、我が艦隊はもう一戦、仕掛ける必要がある。
◇◇◇
「データリンク消滅、味方艦隊、敗走していきます!」
二発の要塞砲発射を目の当たりにする。最初の攻撃ではおよそ七百隻が、そして二発目ではそれを遥かに上回る数の艦艇が撃沈されたことは間違いない。
この攻撃と多数の艦艇消滅に伴ってデータリンクが寸断されたため、艦隊指揮系統は崩壊し、各艦は各々の判断で退却を始めている。その惨状が、こちらのモニター上にも現れている。
「敵艦隊の追撃は?」
「はっ、それがどうやら追撃はない模様。防御態勢をとりつつも、その場にとどまっているようです」
「そうか、我々にとってはありがたいことだが……」
自分で言ってて虚しくなってきた。つまりあれは、敵に同情されたということではないのか。敵ですら追撃を躊躇うほどの大量殺戮を前に、これ以上は追わないとの無言のメッセージを送られて、私はそれに感謝している。これほど虚しいことはないな。
かろうじて我が艦隊五百隻だけが、組織的に戦闘可能な状態にある。たった二発で何万人もの味方の人命を奪われた。このまま無傷で帰還などしては示しがつかない。一矢報いてやらねば、気が済まない。
「提督、このままでは我が艦隊五百隻は敵中に孤立してしまいます。攻撃か、撤退か、いずれかを決断願います」
参謀のドルジエフ大佐が、私に決断を促す。大佐と陣形図モニターを交互に眺めつつ、私はついに心を決める。
「撤退だ」
この私の言葉に一瞬、戸惑いの表情を見せる大佐。だが、すぐに気を取り直して答える。
「はっ! このまま大きく迂回し、味方の主力と合流いたしますか?」
「それは任せる。ともかく、すでに勝敗は決した。今、我々だけで戦ったところで、あの要塞に傷一つ負わせられない。これ以上の戦闘は無意味だ、直ちに撤退する」
私は大佐に、決定の理由と共に伝える。これで納得するとは思えないが、我々はまだ一隻も失ってはいない以上、無駄死にはしたくない。これが私の最善と考える判断だ。
生きていてこそ、弔い合戦はできる。だがそれは、今ではない。一時の感情を抑えて、我々ができる最善の選択肢を選ぶことこそが指揮官としての役目だ。
そういう意味では、パザロフ大将がとった選択は、果たして最善であったと言えるのだろうか? これについては本人のみぞ知るというところだが、少なくとも大将閣下ご自身、あれが最善などとは思われていないと私は信じたい。
◇◇◇
「強襲艦隊、撤退していきます」
ヒンメル中佐からの報告は、この戦闘が事実上終わったことを宣言している。それを受けて僕は、こう答える。
「了解した。では、戦闘終結を宣言する。戦闘態勢から準備態勢に移行」
「はっ!」
「加えて、全艦に伝達。手の空いた者は、この戦闘で散った多くの人命を悼み、黙とうせよ、と」
僕がこういう指示を出すのはおそらく初めてだろう。今回ばかりは、心が痛む。敵が止まらなかったとはいえ、あまりにやり過ぎた。
「ディーステル大将より入電。『第二遠征艦隊も敵残存艦艇の発見、救出に参加せよ』、以上です」
「了解した。ではこれより、敵残存艦艇救出に向かう」
通信士からの連絡を受けて、僕らも動き出す。横ではカタリーナが手を組み、何やら祈りをささげている。帝国流の、敵兵への追悼を行っているようだ。
一方であの悪魔はと言えば、ふわふわと宙に浮いたままニヤけながら艦橋の中をうろうろとしている。こいつはさっきの発言と言い、人の死を何とも思わないどころか喜んではいないか?
「おい、魔王」
「おう、何じゃ」
「さっきから、どうして笑っていられるんだ?」
不機嫌な僕を、まるで嘲笑うかのようにますます笑みを深めるこの悪魔は、ふわふわと僕のところにやってきて、こう答える。
「人の死とはすなわち、解放じゃ。あらゆる苦難、痛み、嘆きからの解放、これを喜ばずにいられようか?」
この言葉を聞いて、僕は思わず反論に力が入る。
「そんなことはないだろう。生きるということは苦しみばかりではない。生きていればこその楽しみや幸せがあり、それを共有できる仲間とも出会える。生を奪われることが解放などとは思えないな」
「ほう、人間とはそのように考えるのじゃな」
などという魔王だが、お前だって一時は人間だったのだろう。だいたい死は解放などと説くこいつ自身が、人の数倍の寿命を生きながら、その生をフードコートで謳歌しているじゃないか。
「ならばそなたに問うが、何ゆえそなたら人どもは、ああまでして殺し合うというのか? 妾がこの世に生を受けて以来、人間どもは殺しあいばかりしておるではないか。それは、そなたらが望んでおるからに他ならないのではないか?」
「そんなわけがない。我々と向こう側の折り合いが付かず、その手段として戦争をしているだけだ。望んでやっているわけではない」
「そうなのか? そのわりにはそなた、戦いの時は生き生きしておるぞ」
ますます笑みを浮かべ、僕をいじるこのクソ悪魔に僕は苛立ちを覚えるばかりだ。
「そうではありませんわ、猊下」
と、そこにカタリーナが口を挟む。
「違うとは、何がじゃ」
「人は死によって、解放されるわけではありませんわ。さらなる高みの境涯を得るのでございます」
「なんじゃ、それならば解放とさほど変わらぬではないか」
「いえ、違います。高みに上がるためには、その前にこの世を精一杯生きねばなりません。少しでも気を抜いた生き様を晒すようでは、その者は地獄へと落とされてしまいます」
「なるほど、そのような考えもあるんか……」
なんの議論をしているのか分からなくなってきた。僕はただ、人の死を悼まないこの魔王に苛立ち反論したまでだが、段々と死生観の方向にシフトしている。
「で、こやつが懸命さを出せるのが、すなわち戦いというわけじゃな」
なおも魔王が僕にこう言い出す。僕は反論する。
「勘違いしないでほしいな。僕の戦いとは、その後に戦わずして済むようにするためだ。あれで相手が戦う意思を失い、そのまま戦いを諦めてくれるよう仕向けている。そのための策であって、別にそれ自体を楽しんでいるつもりはないぞ」
「ふうん、そうなのか? あまりそうは思えぬがな」
こいつ、やっぱり根は悪魔だな。どうしても人を魔に仕立てて、その心に付け入りたいらしい。
「ならば、戦いなどせず話し合えばよいではないか。そんな簡単なこと、なぜやろうとせぬのじゃ?」
「軍人である僕が向こうの星に乗り込めば、あっという間に殺される。ここ三百年近くの歴史で、この宇宙には大きな見えない壁が出来上がってしまった。そう簡単なことではない」
「ふむ、なんとも支離滅裂な話じゃな。殺し合いをしたいのか、したくないのか、どっちなんじゃ」
などと文句を垂れる魔王。だが何事にも正と負の一面があるわけで、これはこの宇宙における負の面だ。正の面から得られる利益をフードコートで受けているこいつには、言われたくはない。
ともかく、奇妙で不快な戦いは終わった。こんな戦いは、もう二度としたくない。




