表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/54

#14 終幕

 この辺りにいるはずだが、やはり強襲艦隊というものは見つけづらい。

 特にこの宙域は、主星である中性子星が吹き出すデブリが多く存在し、それが強襲艦と区別しづらくて余計に探索に難航する。ある程度、整った動きをするデブリがあれば、それがまさしく強襲艦隊だと分かるのだが、この数のデブリの中からそれを見分けるのは至難の業だ。

「困りましたね、これでは人型重機隊すらも見分けられないですよ」

 ぼやくヒンメル中佐だが、ぼやいたところで敵の位置が分かるというものでもない。

「なあ、中佐よ」

「なんでしょう、アルトマイヤー提督」

「強襲艦隊だが、この艦隊を狙ってくると思うか?」

 僕のこの問いかけに、なぜかムッとした表情で僕を睨む中佐。そしてこう返す。

「狙うに決まってるでしょう」

「えっ? なぜだ、たかが一千隻の小規模な艦隊だぞ」

「ご自身でも理解しているでしょう。この第二艦隊は、そこらの一千隻の艦隊とは違いますよ。前回は浮遊砲台群を殲滅し、しかも先ほどは敵の左翼側を混乱させて大損害を与え、今こうして敵艦隊を後退に追い込むきっかけを作ったところです。これで狙われないなどと思っているなら、ヴァルター中尉以上の能天気ぶりだと言わざるを得ませんね」

 ズキズキと心に刺さる言われ方をされてしまった。カタリーナ以上じゃないか、この鋭さは。しかもあのヴァルター中尉と比較されるとは、僕はよほど鈍いのだろうか?

「となれば、そろそろ強襲艦隊から発進した人型重機隊が向かってくるころじゃないか。この辺りの宙域にいて、しかもあちらはこちらを把握しているはずだし」

「そうですね。なればこそ、全力で捜索を……」

 ヒンメル中佐がさらに警戒を強めようと言い出したその時に、すでに事態が動いていることを知る。

「レーダーに感! 機影多数、人型重機と思われる物体を探知! 距離百キロ、数およそ八千!」

 なんてことだ、もうすぐそこまで来ていた。しまった、油断したな。しかも八千機だって? あちらの持てるすべての兵力じゃないか。

「全機投入とは、やつらめ、こっちを壊滅に追い込むつもりなのか?」

「それはそうでしょうね。ここであったが百年目、今こそその恨みを晴らさんと息巻いているはずですよ」

 なぜだか分からないが、ヒンメル中佐が妙な口上を述べ始めたような気がするぞ。こういうキャラだったか? いや、そんなことはどうでもいい。こうなったら、あれを使うしかない。

「中佐、眩光弾を使う、発射準備!」

「閣下、眩光弾といっても、もう重機隊が百キロ以内にまで接近してますよ!」

「いや、重機相手に使うのではない、重機隊後方二百キロの地点めがけて直ちに撃て」

「はっ! 眩光弾、発射用意!」

 ここで僕は、強襲艦隊に襲われた際の切り札を使うことにする。まさに先ほども使用した、あの光の壁だ。

 だが、誤算だったのは、本来は襲い掛かる人型重機隊からこちらを不可視化するための手段として考えていたのだが、すでに至近距離まで接近している。その手はもう、使えない。

 しかしだ、あちらが接近していたとしても意味はある。だから僕は眩光弾を使うと決めた。

「眩光弾、発射、撃てーっ!」

 号令と同時に、再びレールガン発射口から放たれる二発の実体弾。それはちょうどこちらに向かってくる敵のロボット型兵器と同じ方角に吸い込まれていく。

 これはヴァルター中尉から言われたことだが、あの眩光弾という兵器はかなり高いものらしい。一発が確か、二十万ユニバーサルドル(≒およそ二千万円ほど)だというから、それを今回だけですでに四千発も使っている。ちょっと待て、ということはいくら使ったんだ……?

 などと金勘定を気にしている真っ最中に、その高価な実体弾が一斉に炸裂する。

 距離が近いこともあり、すぐに炸裂した。あまりに近すぎて、その光の壁がこちらを覆い尽くさんとばかりに広がってくる。

 だが、これで一つ、目的が達成される。

 それは敵の強襲艦隊と、あの人型重機隊とを分断するというものだ。


◇◇◇


 まったく予想だにしてなかった事態が発生する。目の前が突然、光に覆われた。

「か、回避運動! シールド展開!」

「いえ、スクリャロフ少将、これはビーム兵器ではありません! 例の光の玉を作り出す実体弾です!」

 なんだと? こんなところで、どうしてあんなものを使うんだ。 第一、もうすでに重機隊が取りついている頃だぞ。使うにしても、遅すぎたのではないか?

 だがこの直後、あの光の玉を放った意図が判明する。

「じゅ、重機隊との連絡途絶! データリンク、および無線など、各種連絡手段が遮断されました!」

「なんだと!?」

 そうか、そういえばあれは電波かく乱兵器でもあった。つまり我々強襲艦隊と人型重機隊とは、分断されてしまったことになる。これでは味方も敵の位置も把握できず、我々は孤立してしまうこととなる。

「まずいな……どうにかして重機隊を呼び戻さねば、孤立してしまうぞ」

「ですが閣下、あらゆる電波、および発光信号など、すべての通信手段が使い物になりません」

「この光は、だいたいどれくらいで消えるんだ!?」

「少なくとも、数分は持続します。ですが、これだけ至近ですから、その影響がなくなるまでは相当な時間かかるものかと」

「くそっ、してやられたか。なんとしてでも、この光の向こう側に通信する手段はないのか!?」

 参謀役の副指揮官であるフェドトフ中佐に尋ねたところで、まったくアイデアがない。この強襲艦隊は敵に察知されないよう、電波管制を行うことはしょっちゅうである。その際の通信手段として、発光信号がある。

 といっても、いわゆるモールス符号は使わない。単純な命令のみ定義している。トン・トン・トンの三連投で「撤退せよ」、ツー・ツーの二連投で「攻撃せよ」の二種類のみだ。これなら遠くから見ても間違いようがない。

 だが、これではその光すら届かない。どうすればいい?

 そう、あきらめかけたその時だ。

 文字通り一筋の、いや、幾筋かの希望の光が見えた。

「スクリャロフ少将、何か見えます!」

 その声に私は、窓の外を眺める。巨大な眩い光の玉の表面から、何やら時折、青白い光が飛び出してくる。

「なんだ、あの光の筋は」

「あれはおそらく、対空機銃のものですね」

「ああ、そうか。我が重機隊と交戦中だから、対空機銃のビーム光がここまで……」

 それを見た私は、ピンと頭の中で響く音がして、一つのひらめきを感じた。

 そうだ、これを使えばいいんじゃないか。


◇◇◇


「敵人型重機隊、来ます! 上方向、速力二百!」

 分断には成功したものの、人型重機は到達してしまった。こうなったら、逃げるしかない。

「全艦、全速前進! 対空機銃を放ちつつ前進せよ!」

 分断されたら、士気が落ちて混乱し、場合によっては撤退するのではと思っていた。だが、まったくそんな様子が見られない。

「〇三〇五号艦、被弾!」

「被弾した艦はシールドを展開! 残った艦の対空機銃にて対処せよ!」

 すでに何隻かが被弾している。しかし、この重い駆逐艦はなかなか動き出そうとしない。残念ながら、さっき限界突破(アンリミッター)を使ってしまったため、今は通常出力で加速せねばならない。そうこうしているうちに、僕のいる〇〇〇一号艦にも敵の重機がとりついてきた。

「対空機銃、弾幕薄いぞ、何やってるんの!」

 興奮気味に叫ぶのは、ヒンメル中佐だ。それにしても今回、中佐はいつも以上に冷静さがないというか、熱いというか、ちょっと雰囲気が違うな。何かあったのか?

 なんて感心している場合じゃない。目の前には赤褐色に塗られた人型重機が現れる。

 そいつはこの艦橋に銃を向け、撃ち始める。シールドでその弾を弾くものの、執拗に攻撃が続く。何とか防いで入るが、どうにかならないのか?

 が、そんなときに、この艦橋に叫び声が響く。

『レモンサワーより艦橋! 一瞬、ハッチを開けろ!』

 レモンサワーとは、ヨーナスの乗る人型重機のコールサインだ。僕は返答する。

「今フル加速中だ! 今発進したら、孤立する羽目になる! 人型重機は全機、待機だ!」

『そんなこと言ってる場合か! 艦橋の真ん前に敵がとりついてるんだろう!』

「それはそうだが……」

『こっちはワイヤー付きだ! とにかく開けろ!』

 ああ、そうか。あのワイヤーをつけたまま出撃するつもりか。確かにあれさえあれば、仮に艦から引きはがされても、そのまま引きずって後で回収することができる。

「ハッチ開け! レモンサワー、発進を許可する!」

 僕は叫ぶ。それを受けて、格納庫のハッチが開かれる。

 艦橋の目の前の甲板に、ハッチの扉がある。それが一つ、勢いよく開いたかと思うと、中から一機の灰色の機体が飛び出してきた。

 それに気づいた目前の褐色の重機は振り返り、銃で撃つ。だがそれをシールドではじき返しながら急速接近するレモンサワー。そして、あっという間に懐に飛び込む。胴体が分断される、褐色の重機。直後、大爆発を起こす。

 後には、レーザーソードを持った灰色の重機が甲板の上に立っている。

『排除完了!』

「よし、フル加速だ、全速離脱!」

 この艦はゴォーッと音をたて、ビリビリと床を震わせながら加速する。ハッチは開いたまま、甲板の上に重機を一機乗せた状態でフル加速をかける。必死にしがみつくレモンサワーだが、それにつけられたワイヤーを巻き上げて固定を試みる。

 そんな具合にようやく宙域を脱出した我が艦だが、あの光の玉から、おかしな光が見える。

「なんだ、あれは?」

 それは、対空機銃のビーム光だった。が、三回づつ連射しては途切れ、また三連射がくる。これを断続的に繰り返しているようだ。あれは一体、どういう意味があるのだ?

 しかし、それを見た敵の人型重機隊は、光の玉の中に次々に飛び込んでいく。どうやらあの三連ビームは敵の強襲艦が放っているものだろう。まさかとは思うが、あれは撤退の合図なのか?

 だが、それを見た僕は思う。

「全艦、この光の壁を回り込め!」

「提督、そんなことをしたら、せっかく離れていった人型重機隊に再び出くわす羽目になりかねません」

「いや、あの三連射のビームを出している元をたどれば、強襲艦隊を捕捉できる。あの艦隊を撃滅するチャンスだぞ」

「えっ? あ、はい、了解しました、全艦、面舵一杯! 艦首回頭百八十度!」

 まるでフランクフルトソーセージのように長く連なった光の球を、我が艦隊は大きく迂回する。すると微かに、青白い光を出ている物体が見えてきた。が、残念ながらレーダーが使えない。近くで光り続けている眩光弾の出すノイズが、レーダーを使用不能にしている。

「あの光に接近する! 全艦突入し、強襲艦の発見に全力を注げ!」

「はっ! 全艦突撃、強襲艦隊の発見に、全力を注げ!」

 ヒンメル中佐の復唱が、レーザー通信によって全艦に伝えられ、艦隊はその微かな青白い光の筋を発するところに向かって突入を開始する。やがて、我々はようやくあの強襲艦隊を捉える。

「光学観測! 強襲艦およそ四百隻を視認、距離七十キロ!」

 かなりの至近距離だ。僕は号令する。

「全艦、砲撃開始!」


◇◇◇


「敵艦隊のものらしき高エネルギー反応! 主砲装填、撃ってきます!」

 いきなり七十キロ先に敵の艦隊のものと思われるエネルギー反応が探知される。装填しているということは、こっちを捉えたということになる。こんな至近距離で砲撃戦など、聞いたことがないぞ。しかもこっちは、艦砲を持たない強襲艦だ。

「全艦、シールド展開! 衝撃に備えっ!」

 駆逐艦相手に強襲艦など、なすすべがない。ただひたすらシールドを張って、その砲撃に耐えるのみだ。

 接近戦が得意なはずの強襲艦隊だというのに、突然、劣勢に立たされてしまった。できる限り接近して殲滅してやろうと企んだら、逆にこちらが殲滅の憂き目に遭う羽目になるとは。こんな奇抜な戦いに巻き込まれるなど、聞いたことがない。

 敵の砲撃が始まった。意外なことに、あまり砲が当たらない。これだけの至近距離だというのに、まるで狙いが定まらないのだ。いや冷静に考えてみれば、駆逐艦が主砲で狙い撃つには、我々は近すぎるのだ。

 通常、駆逐艦は射程ギリギリの三十万キロ先の艦艇を撃つ。それはつまり、光の速度でおよそ一秒かかる先にいる船を狙い撃つということだ。

 すなわち、光学観測で相手を見て照準を定めるが、見ている相手は一秒前の姿ということになる。さらに撃ったビームが届くのは一秒後。つまり砲撃手は、二秒後の艦の位置を推定して撃つことになる。

 ところがだ、今回は七十キロという至近距離。相手が近すぎて、かえってその補正が邪魔になる。砲撃手もいつもの感覚で、回避運動する相手の二秒後を予想しながら撃ってるから、見事に外れてしまう。

 だから、運良く敵の砲火が当たらない。だが、相手もすぐそれに気づいて補正してくるだろう。いつまでも逃げ切れるものではない。

「一七七番艦、シールドに被弾!」

 そうこうしているうちに、被弾する艦も現れた。徐々に砲撃の精度が上がってくる。そうなると、こちらはかなり不利だ。シールドが展開する限りは何とかもってくれるが、シールドにもいずれ限度が来る。そのときは、我が艦隊の終わりだ。

「全力で離脱する、全艦に伝達!」

「ですが閣下、今ここを離脱したら、味方の重機隊はどうするのですか!」

 そうだった。我々は重機隊を回収していない。このまま逃走すれば、味方を置き去りにしてしまうことになる。だが、ここで待っていても結局は、全滅を待つこととなる。ならば一度離れ、敵艦隊をうまく巻いてから味方を回収した方が良いか?

「やはりここは一度、敵艦隊を振り切って……」

 私がそう指示を出そうとしたその時だ。オペレーターから、歓喜の声が上がる。

「み、味方の重機隊、多数! 敵艦隊に向かっていきます!」

 なんと、あの光の球の中から、八千近い味方の人型重機隊が次々と飛び出してきた。彼らは一路、敵の艦隊にへと向かう。

 徐々にではあるが、光の球も萎み始めた。それと同時にこちらのレーダーも徐々に回復しつつある。それは敵も同じだが、こちらにとってはむしろ、デメリットよりもメリットのほうが大きい。

「重機隊に連絡、敵艦隊を急襲せよ!」

 データリンクにより、あの一千隻の艦隊の位置を味方の機体に送信する。八千の味方が、まるで大発生したイナゴのように敵艦隊に群がっていく。あの一千隻の艦隊は、接近する人型重機隊を察知して砲撃を止める。どうやら離脱を試みるようだ。

 すんでのところで、我々の形勢は逆転した。


◇◇◇


「重機隊、多数接近!」

 くそっ、あと少しであの艦隊を壊滅できたというのに、このタイミングで厄介なやつらが現れた。

 敵の人型重機隊がこっちに追いついてきてしまった。あの光の壁の中を、よくまあ迷うことなく通過できたものだ。やはりあの強襲艦隊の重機パイロットは皆、優秀な人材ばかりのようだ。

「転舵、反転! 対空機銃で応戦しつつ、現宙域を全速離脱する!」

 再び、第二艦隊は劣勢に追い込まれる。ともかく今は離脱だ。逃げるしかない。

『レモンサワーより司令部! こっちの重機隊を発進させろ!』

「アホか! 数も練度も足りないこっちの重機隊が、やりあえるわけがないだろう! 発進は許可できない!」

 つい軍大学時代の口調が出てしまった。いかんいかん。というのも、軍大学時代の悪友で、さっき敵を撃って興奮気味のヨーナス……いや、エーベルス大尉が、発進させろとうるさいからだ。だが、そんなことは現時点では許可できない。どう考えても分が悪すぎる。ここは離脱したほうがいい。

 間一髪のところで、全艦は離脱に成功。人型重機に取りつかれる前に離れることができた。

「ヒンメル中佐、ここは大きく迂回して、もう一度あの強襲艦隊を捉える」

「無理です。強襲艦は通常のレーダーでは捉えにくいです。下手に接近すれば、敵の重機隊にまた取りつかれますよ」

「いや、今度はアウトレンジでの砲撃だ。大体の位置を把握しているんだ、それを頼りに指向性レーダーで探知すれば強襲艦を捉えられる」

「了解しました。では迂回しつつ、指向性レーダーにて探知を行います」

 僕はまだ、諦めなかった。あの強襲艦隊を撃滅できる千載一遇のチャンスだというのに、ここで叩いておかないと、後日の災いの元となる。なんとしてももう一度捉えて、今度こそ砲撃でけりをつけてやる。

 と思った矢先に、思わぬ指令が飛んできた。

「アルトマイヤー提督! ディーステル大将閣下より入電、直ちに艦隊へ合流し、追撃戦に参加せよ、以上です」

 な、なんだって、追撃戦だと? 今まさにこっちは追撃戦をしているところなんだが……と、僕はモニターを見て、ハッとする。

 敵の艦隊は、大きく後退を始めていた。それを追うように味方の三個艦隊が前進を始めている。

 今回の戦いは、この連盟支配宙域から敵艦隊を追い出し、連合の支配宙域に変えること。まさに今、敵味方の主力同士の勝敗が、決まろうとしている。

 となれば、強襲艦隊よりも艦隊主力に合流しての追撃戦の方が優先度は高い。敵を徹底的に追い込むためには、たとえ一千隻でも欲しいところ。僕は決断する。

「……やむを得ない。艦隊主力に合流する。転進しつつ全艦、全速前進。中央の地球(アース)一〇七艦隊側面に合流する」

「はっ!」

 ヒンメル中佐が、僕のこの決定を全艦に伝える。そして我が艦隊は一斉に転舵し、主戦場へと進路を向けた。


◇◇◇


「なんだと、敵艦隊が去っていっただと?」

「はい、転舵反転、そのままこの宙域を離れて行きました」

「なぜだ……と言いたいところだが、理由は明白だな」

「はい、すでに勝敗は決まりつつあります。追撃戦に合流し、その勝敗を確定することを優先したものと思われます」

「つまりだ、我々は、負けてしまったというのか」

 悔しいことだが、ともかく我々もこのままでは取り残されてしまう。うかうかしてはいられない。我々も味方の艦隊に追い付かねば。

「全機、急ぎ撤収する! 直ちに艦隊主力に合流するぞ!」

 今までで、もっとも戦果の上がらない戦いとなった。敵艦隊を百隻以上は航行不能に陥れたものの、それは今回の戦局に大きな影響を与えなかった。むしろ一千隻のあの機動艦隊に戦果を献上したようなものだ。

 最初に我々が敵艦隊左翼ではなく、右翼側を目指していたら、あるいは戦いの流れは大きく変わったかもしれない。この二分の一の確率を外してしまったことが、悔やまれてならないな。

 いや、もしあの艦隊を最初に捉えていたとしても、果たして勝てただろうか? 実際に今回の戦いでも、我が人型重機隊はあの艦隊に肉薄し、襲いかかるところまでは漕ぎ着けた。

 しかしだ、あちらはあの光の球だのを使って我が強襲艦隊と人型重機隊をかく乱し、駆逐艦にあるまじき接近砲撃を仕掛けてきた。分断された味方の重機隊の到着がちょっとでも遅れていれば、間違いなく強襲艦隊は全滅していただろう。

 つまりやつらは、運で勝ったわけではない。勝つべく仕掛けをあらかじめ仕込んでおいて、あらゆる局面に備えてそれを駆使しただけだ。

 まさしく、(はかりごと)多きは勝ち、少なきは敗れる。一見すると博打勝負的なあの一千隻の機動艦隊だが、戦の基本をわきまえた戦いぶりであったことを思い知らされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 一発2000万を四千発。800億…(^_^;) 戦争って、貧乏人には出来ませんね。 まぁ、800億で駆逐艦仕留めれるのなら安いものかな? [気になる点] “弾幕薄いぞ、何やってるんの!”…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ