13 魔王7
会議を終えた後、ベイルは城の中を見て回ることにした。
出立までまだ時間はある。特に思い入れも無い場所だが、何と無くそうしておきたいと思ったからだ。
この城は大連合国の首長国、その王城である。故に連合国の中でも屈指の大きさだが、ただ大きいだけではなく、大きさに見合った優美さも備えている。
しかし一昨日の魔王軍による猛攻により、今ではその優美さは見る影も無い。なるべく城は傷つけたく無かったのだが、防衛兵器の類はどうしても壊さなければならなかったし、場内の白兵戦となると内装も血で汚れ、壊される。
まぁ、死体が残っていないだけましか。
魔王はそう思いつつ、階段を下りる。
階段を下れば広間に着く。そこではまだ兵士たちが死体の処理や場内の清掃など、片づけをしているはずだ。それが無意味な事と知らずに。
「不思議と、心は痛まない」
グレンは僕を優しいといったが、そんな事は無い、というのは承知している。ただ自分は自分の物が壊されたり奪われたりするのが嫌いなだけだ。
言い換えればまだまだ子供という事なんだろうが、僕は例え大人になっても変わる事は無いだろう。
階段を降り切ると、予想通りまだ大勢の兵士が仕事をしていた。ここにいるだけで100人は居るみたいだ。
「やぁ、調子はどうだい」
作業する兵士たちへ、にこやかに話しかける。
「!へ、陛下!」
兵士たちは突然の事に驚いている。皆手を止め、中には呼吸が止まっているのかと思う顔をしている者もいる。
「こ、これはこれは魔王様、どうかなさいましたでしょうか・・・?」
ここにいる兵士の中でも最年長と思われる髭の長い男が寄ってくる。
「別に、暇になってね。ちょっと城の中や外をを見て回ろうと思ってね」
「そ、そうで御座いますか、な、何か・・・私共に出来ることは御座いますでしょうか?」
「いや、特に無いよ・・・あぁそうだ。この街に詳しい奴がいれば呼んできてよ。城の中だけ見ようと思ったけど、詳しい奴が居るなら外も見て回りたいしね」
特に何も考えず思い付きを口にする。戦争が起きたばかりの街なんてあちこち破壊され見ててつまらないだろうが、興味はあった。
長髭の男は心当たりがあると言い、一人の少年をつれてきた。
人間だった。
「こ、この者は幼き頃、ここで奴隷をしていた為、この街には詳しいで、ご、御座います」
少年の名はイサクと言うらしい。人間だが、奴隷から解放してやったため、忠誠心は十分だと言う。
イサクの身形は、あまり良いとは言えなかったがとりあえず不潔ではなかった。グレンもそうだが兵の中では人間に対してあまり悪感情を抱いていない者が多いようだ。いままで親人派なんてザインくらいなものだと思っていたが、どうやらその考えは捨てたほうが良いらしい。
「では参りましょうか」
妙に物怖じしないイサクと共に、僕は街へ出た。
キャラの把握が出来なくなり始めたこの頃。
とりあえず皆の設定を固めてる最中です。